Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    桜餅ごめ子

    @yaminabegai

    このポイピクを見る者は一切の希望を捨てよ
    (特殊な解釈・設定を含む二次創作が多いのでお気をつけください)

    ◆個人サイト◆
    https://gomemochiru.jimdofree.com/
    ・投稿作品データベース(作品をカテゴリ、シリーズ別に整理)
    ・SNSアカウント一覧
    ・マシュマロのリンク
    などを置いています

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 🍵 💘 💮 💯
    POIPOI 256

    桜餅ごめ子

    ☆quiet follow

    思いつきSS(未完)
    起きたら知らない部屋でうらマホ姿になってた🥚(マホエピ→カビハン→🌟帰還)と🍑の話
    最後まで書くかは未定

    ##全年齢

    可惜夜のシムラクルム 目を覚ますと、ボクはベッドの中にいた。ふかふかで柔らかいお布団、繊細な肌触りのいいシーツ、程よい固さの枕。高級そうな寝具に全身を包まれていて、とても寝心地がいいが――、明らかにボクの寝室のベッドではなかった。まずは自分が今何処にいるのか確認しようと思い、横に寝返りを打つ。すると、頭部の両側面に大きな異物感を覚えた。
    「エ……?」
     耳があるはずの場所に、恐る恐る手を伸ばす。そこには、悪魔の如く捻じ曲がった硬質な角があった。頭頂部に手を移すと、這わせた指に艶々とした金属の感触が伝わ――指? ハッとして手のひらを見やる。そこにあったのは、普段身につけているカスタードクリーム色のミトンをはめた手ではなく、しなやかに伸びる五本の指を持つ純白の手袋に包まれた大きな手だった。手首には、ボクが日頃使っている操舵輪の形をした魔法陣が浮かんでいる。
     居ても立っても居られなくなり、ガバッと身体を起こし、辺りを観察する。そこはボクの寝室ではなく、豪奢なカーテンに閉ざされたキングサイズのベッドだった。当然、見覚えはないし、此処に来た記憶もない。きょろきょろと見渡すと、サイドテーブルに手鏡が置かれているのが視界に入った。ボクはそれを引っ掴むように手に取り、鏡面を見た。
     映っていたのは、マスタークラウンを被って変身した、あの日のボクの姿だった。
    「……マホロア」
     視界の下からボクの名を呼ぶ声がして目を向けると、桃色をした丸い顔――カービィが、ボクのお腹に寄り添っていた。
    「カービィ……?」
     馴染み深いトモダチの顔を見て思わず安心してしまうが、慌てて気を取り直し、状況確認を急ぐ。
    「カービィ、ココがドコなのか、ナンデここにいるのか、知っテル?」
    「……ううん、何も。目が覚めたときにはもうここにいて、その姿のきみが隣で寝てて……」
    「……ソウ」
     カービィも分からないのであれば、二人してここに連れ込まれたたのだろうか。誰が? 何のために? 必死に思案していると、カービィがボクのローブをくいと引っ張った。
    「カービィ? ドウシタノ?」
     ぼくを見上げる彼の瞳は憂いを帯びてゆらゆらと揺れていた。
    「……この前、ぼくと一緒にローアで映画観たの、覚えてる?」
    「エ? ウン」
     つい数日前のことだ。カービィがローアのメインモニターって映画館みたい、このモニターで映画を観たい、と言い出した。凝り性のボクはモニターだけでなく音響設備にも手を加え、二人で本格的な映画鑑賞を楽しんだ。大迫力だね! と楽しげにはしゃぐ彼の笑顔が記憶に新しい。
    「ぼくがポップコーンを食べたいって言ったから、マホロアがいろいろ用意してくれたよね。あれ、美味しかったなあ」
    「ソウダネ。キャラメル、チョコ、イチゴ、バター醤油、カレー……タクサン作ったノニ食べきっちゃうものダカラ、ホントによく食べるナァって思ったヨォ」
     ボクは食いしんぼうのカービィが飽きないよう、複数の味付けを用意した。何日も前からレシピを調べたり、一番美味しい状態の物を提供できるよう、作り始めるタイミングに気を使ったりと、色々こだわったものだからよく覚えている。
    「……うん、うん! そうだね……! ……よかった、いつものマホロアだぁ……っ」
     カービィは先程までの不安げな表情から一転して輝くような笑顔を浮かべると、心から安堵したようにほっと息を吐いた。どうやら、ボクがどういう状態なのか確認するために、そんな質問をしたようだ。ボクの姿がこうなっている以上、疑念を持つのも無理もない。
     だがボクは、あの日のボクではない。ローアと共にポップスターに不時着し、カービィ達に助けられ、彼らを裏切り、異空のどん底、そしてパラレルワールドを超えて、再び彼らのもとに戻ってきた、「現在」のマホロアだ。
    「ねえ、マホロア。……そのクラウン、本物……?」
     カービィがボクの頭上を丸っこい手で指す。今のボクの姿は、マスタークラウンを被って、カービィ達に自らの本当の狙いを暴露した際に変身した姿と同じものだった。あの時は、マスタークラウンから常に大量の魔力が流し込まれるような感覚があった。しかし、今は何のチカラも感じない。ボクが被っているのは、ただの宝飾品としての冠のように思える。
    「違うと思ウ」
    「……やっぱり、そうなんだ」
     カービィは合点がいったように頷いた。
    「マスタークラウンは、すっごくいやな感じがしてたんだよ。でも、その冠からはそういう感じ、全然しないもん」
     第三者であるカービィもそのような気配を感じ取っていたのか。興味深い話ではあるが、それを深堀りするのは後回しにしよう。
    「ソッカ。それならこの冠に危険はナイノカナ。……デモそれだと、ボクがこの格好になってる説明がつかないネェ」
     カービィはボクの疑問に同意するように不思議そうに頭を傾げたが、やがてにぱっと気の抜けるような笑顔を浮かべた。
    「まあ、マホロアがいつものマホロアなら、きっとだいじょーぶだよ!」
     カービィがいつかのあの日のように、自らの胸をぽんっと叩く。その仕草を懐かしく思いつつ、ボクは彼の身体をひょいと持ち上げた。
    「わあっ、ま、マホロア?」
     驚いて足をぱたぱた動かす彼を落とさないようにしながら、ククッと喉奥で軽く笑う。
    「とりあえず、辺りを探索してみようヨォ。状況を把握しなきゃ、何も始まらないシ」
     カービィはなるほどと合点がいったように頷くも、すぐにまたじたばた暴れ出した。
    「それは分かるけど、ぼく自分で歩けるよ!」
     拗ねた子供のように頬を膨らませる彼を見て、ボクは笑みを深めた。
    「イイヨイイヨ、抱っこしてアゲル! だってキミのチッチャイアンヨじゃ、今のボクに追いつけないデショ〜?」
     からかうような声色で笑いかけながら、彼の足をちょこんとつまむ。
    「そりゃそうだけど……むぅぅ、ちっちゃい子扱いしないでよぉ」
     カービィは仕方なしといった様子で抵抗するのをやめた。とはいえ、不服そうに唇を尖らせてはいる。そんな彼の様子は、ひどくかわいらしく、いとおしかった。
    「クククッ! しばらくのガマンダヨ、カービィ!」
     ボクはケラケラと笑いつつカービィの小さな身体を手のひらにしっかり抱き、ベッドから降りた。
     移動速度の問題もある。しかしそれ以上に重要なことがあった。それは、カービィにはできるだけ体力を温存してもらう必要がある、ということだ。この未知の場所には、どんな危険があるか分からない。もしかしたら、カービィと共に戦わなくてはならない場面もあるかもしれない。
     無限の力を戴冠した覇王よりも、異空を超えて帰還した魔術師よりも、今ボクの手のひらに収まっている、この小さな星明かりの方が、ずっと強くて、ずっと頼もしいことを――ボクはよく、知っているから。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    💖💴💖💖💖💖💖💖💖💖💖💖💖💖💖💖🙏🙏🙏🙏🙏✨✨✨✨✨💖❤💖👏💗💖💖
    Let's send reactions!
    Replies from the creator