きつね男、ハッピークリスマス「あ……雪だ」
やけに冷えると思ったら。
うたた寝から覚めたソファの上、逆さまに見上げた大きな窓に、触れては消える淡い白。
ぼやけた目を擦り起き上がる。寝過ぎちまったか、と薄暗さに一瞬焦ったけれど、時計を見るとまだ昼過ぎだ。
(なんか、羽織るもん……)
のろのろとソファを下り、目についたのは脱ぎ捨てられたセーターだった。つい最近ふざけて買った──赤と緑のボーダーにデカいトナカイ模様が入った、いわゆるクソダサセーターだ。
(……わりと気に入ってるっぽいよな)
そろそろ洗ってやらねェと、なんて思いつつ、その抜け殻を拾い上げる。
ふわりと香るあいつの匂い。
「くっせェな」
予想を裏切らないそれにちょっと笑いながら。不思議な誘惑に抗えず、もふっと顔を埋めてしまった。
4260