リオヌヴィのヌが自殺未遂する話 ぽつり。
ぽつり、ぽつり。
静かに地面に打ち付けられるその音は、酷く冷たく、重たく、それでいて嫌に優しかった。
黒い雲が空を覆い尽くし、陽の光すら届かない。雨足が強くなり、空模様が怪しくも審判を観劇しに来ていた人の姿も今やどこにも見当たらなかった。
ぴかり。遠くで空が裂けた。またたきの後、フォンテーヌ全土に聞こえるほどの轟音が鳴り響いく。ざぁざぁ、体にあたる雨粒が胸を貫き、心を穿つ。こんなにも溢れているのに、自身の頬には雫があたるだけ。
地面に水が跳ねる音が大きくなる。ごろごろ、ばちばち、ざらざらざら。自然の喧騒の中、目を閉じて空を見上げた。晴れる様子はない。この空も、気持ちも。
私は、エピクレシス歌劇場から少し進んで、橋まで歩いた。噴水は止まっており、木々が風に揺れてがさがさと音を鳴らしている。その様子はさながら楽器のようであった。
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