美しい獣「河田さんはつまらないって思ったことありますか。」
質問かのように問いかけてくるが、独白の様にも
思える問いを沢北はたまに聞いてくる。
「あるな、負けたくない諦めたくないって思っているのは俺だけなのかって思うと急につまらなくなる。」
何がつまらないか聞いてこなかったが、沢北が聞いてくることなんてバスケットボールに関することしかない。
「俺…山王に入って本当によかったって思うんです。だって河田さんに会えたから。」
いつもの健康優良児のなりを潜めて不敵な笑みでそう言った。どうやら俺は沢北の欲しい答えを言えたようだ。
「ハッ、熱烈な告白だな。」
「えっ勘違いしないでくださいよ?一緒にプレイできる事が嬉しいってことですからね?!
Loveではなくlikeですよ??」
「てれるな、てれるな。」
「やめてー!違うってバカ!大体俺メンクイですから!」
「どういう意味だ!!!!!」
「ホールドやめて!痛い痛いギブギブ」
夏休みが明ける前には沢北は夢を叶えに行く。
自分のものにしたいと思ったことはないが、それでもこの強くて気高い生き物を自分の思うままにできたらと思った事は一度だけではない。
手が届きそうだから諦められなくなる。
いっそ手が届かないずっとずっと遠くまで旅立ってほしい。
おまけ(旅立つ前)
沢「俺のこと諦めるんですか?」
河「は?」
沢「諦めないでくださいよ、河田さん。」
河「はぁ〜〜〜〜〜面食いじゃなかったのか?」
沢「あんたよりかっこいい人なんていないよ。」
河「俺の目の前からいなくなるっていうのにそんな台詞を泣きそうな顔で言うな。」
沢「そういう所も好きでしょ?」
河「…負けたわ、待ってろすぐ追いついてやる。」
そう言ったら沢北はいつもみたいな不遜な笑みではなく小さな子供が喜んだ時のような純粋無垢な顔して笑った。