泣いた雪鬼「あんたと出会わなければよかった…」
そう言ったのは沢北なのにひどく傷ついた様な顔をしていてつくづく勝手な男だと思った。
そんな自由で勝手でいつまでも美しいこの男がたまらなく愛おしく憎らしい。
「河田さん泣いてるの…?」
「…?」
言われて自分が泣いているのを気づいた。
「河田さんが泣いてるの初めて見た…」
「…俺はそうは思わない。どんなにお前が俺の存在を拒否しようが俺は…出会えてよかったと思ってる。出会わなかった人生なんて考えられない。」
我ながら重い男だと思った。
雪のように積もりに積もった想いが溶けて春のような穏やかな愛を抱けたらよかったのにいつまでも溶けずに積もっていく。
いっそのこと積もった雪で行く場を失くして凍らせられたらいいのに。
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