「虫の音」「休養」 ひんやりと肌に心地良い涼風を感じてベレトは瞼を開いた。横を向いてみれば少し開いた窓から風が吹き込み、カーテンをはためかせている。
そして彼の横たわっているベッドの傍にはリンハルトが椅子に腰掛け、無表情にベレトの様子を見守っている。
目が覚めて最初に考えたのは自分はどうしてこんなところにいるのだろうという疑問である。意識のないうちに先ほどまで身につけていた法衣も脱がされ、今は呼吸が楽になるように胸元をゆるめた寝衣に着替えさせられていた。
「リンハルト……」
「気がついたみたいですね。体の調子はどうですか?」
「少しだるいが動けないほどじゃない」
リンハルトは彼の不養生を非難するかのような眼差しをベレトへ向けてくる。その視線を受け、ようやく自分が来客との謁見中に倒れた事をベレトは思い出す。
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