再会 三井寿には忘れられない男がいる。
高校時代に少し付き合っただけの、ほんのお遊びのような恋人だった。けれど、三井の中でその男は、宮城リョータは、いつまでも心の所々を蝕んだまま消えてくれない存在だった。どうしてなのか、三井自身も分からない。
特別顔が好みのタイプだったわけではないし、一段と気が合うわけではなかった。気が合う友人なら、この歳になってもまだ付き合いのある徳男の方がよっぽどだ。
ではなぜこんなにも、三井の心に宮城が巣くっているのか。
付き合ったきっかけといえば些細なことだった。
高校3年の秋、インターハイも終わった頃。
「男と付き合える?」みたいな話から、なぜか三井は「宮城とならいける」と答えてしまって、宮城は、「ふーん」と何食わぬ顔をしながら耳元をほんのり赤く染めていた。なんだか可愛いなと思って、赤い耳に手を伸ばして触れてみたら、宮城は蛇を見た猫のようにギャっと飛び上がって、眉毛を曲げながら三井を睨んだ。
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