*
「…………」
本を読んでいても集中力が続かない。思い当たることはある。そろそろそういった処理をしないといけないタイミングだ。ため息をつきながらパタンと本を閉じた。
アルハイゼンは性に淡白だった。もちろん性欲はあるし自慰行為にだって気持ちよさを感じる。男性器も平均よりずっと立派なものだ。けれど処理の面倒くささが勝ってしまうというか、そんなことに時間を割くよりしたいことは沢山あったのだ。それにアルハイゼンは賢者タイムが長いタイプである。
下着を汚すと後が面倒なので事務的にオナニーをしてるといっても過言ではない。アルハイゼンはいそいそとズボンをおろす。この格好も間抜けだ。一度面倒と思うと思考はどんどんそちらに引っ張られ、射精まで時間がかかってしまうのも煩わしかった。(自分が遅漏気味であるという点を考慮したことはなかった。)
それにアルハイゼンがこのように自慰に対して消極的なこと、それは幼少期にもきっかけがあった。アルハイゼンの精通はあのカーヴェ先輩なのだ。甘酸っぱい2割、苦々しい5割、いまだにオカズにしている10割の思い出だ。(あのアルハイゼンもオナニータイムは頭がバカになってしまうのだ!)
*
「最悪だ、いきなりこんな雨がふるなんて……」
「へくちんっ!」
「あ、アルハイゼン大丈夫か?!」
カーヴェが先輩風、むしろお兄さん風を今よりずっとふかしていたころ、アルハイゼンの背は今よりずっと小さく、まさに文弱の文弱だった。今日は2人で遠出、といっても雑談をしながら散歩をしていたら白熱していて思っていたより遠くへ来てしまっただけだが、その最中にいきなりの豪雨にふられてしまったのだ。2人とも服含むびしょびしょに濡れ、ほっとくと今にも風邪をひきそうだ。
「いそいで大浴場にいこう!」
カーヴェはアルハイゼンの手を取り、公衆浴場まで進む。最近のアルハイゼンは変だ。カーヴェ先輩のことがすごくキラキラして見えるし一緒にいるとドキドキする。特にこんな風に手を繋いだり、頭を撫でられたり、ほっぺにちゅーをされたりするとドキドキしすぎて心臓がいたい。いたい、なのにもっとずっと一緒にいたくなってしまうのも不思議だった。色々な文献を調べたりしたがこの症状がなんなのかはアルハイゼンは分かっていなかった。絶賛研究中である。
「はい、手をあげて」
「自分でできる、……ん」
脱衣場で2人で服を脱ぐ。カーヴェはアルハイゼンのことを子供扱いしているので服を脱がせてくれた。子供扱いをされるのは嬉しくないが、甘えてそのまま手を伸ばした。
「?!」
「ん?どーした?」
「なんでもない……」
「さぁいくよー」とお風呂場までもカーヴェは手を引っ張ってくれる。しかしアルハイゼンにとってそれどころではなかった、目の前に突然現れたカーヴェの裸がキラキラし過ぎていて心臓が過去最高潮にうるさかったのである。「ん?もう逆上せてる?」なんて心配されてしまうくらいだ。
今は白濁としたお湯に少し隠れてしまっていたが(それもなんだかたまらなかった)カーヴェの肌は真っ白で、つるつるすべすべしてそうで、でも柔らかそうで……とにかくさわってみたくてたまらなかった。そしてカーヴェのおっぱい……胸の先も初めてみたけれど今のスメールの技術では表現の出来ないきれいな、くすみのない薄桃色をしていた。そして寒さからかツン!と生意気に尖っていた。……アルハイゼンはそれを舐めてみたい、と思った。そしてあまりそこを見るのは良くない、と思っていたのでちゃんとは見ていないが、少し見えたカーヴェのそこは金色の毛が少し生えていた、のだ。それは真っ白なカーヴェの肌をほんのりと飾って、まるでアクセサリーのようだった。それに、そこに毛が生えているのは大人の証だ。
(大人……)
もうそれでいっぱいいっぱいになってしまってちんちんのことはよく覚えていない。
カーヴェはもこもこの泡をたくさんつくって、アルハイゼンの身体を優しく洗ってくれた。とても気持ちが良かったけれど、目の前にカーヴェのおっぱいがあってそれどころではなかった。
「あ……」
「?」
「あ、いや、なんでもない!」
カーヴェがチラと下を見ると赤くなってそっぽを向いた。アルハイゼンも見ると自分のちんちんがピン!と上を向いていることがわかった。この現象はたまに(特にカーヴェのことを考えていると)なるものだった。大抵はほっといたりオシッコをしたりすると治るものだったので気にしていなかった。
そしてお風呂上がり、カーヴェは相変わらず甘やかしてくれて、ふわふわのタオルでアルハイゼンを包んでくれる。お風呂上がりのカーヴェはいい匂いがした。
雨には濡れてしまったけれど、その日はあったかくとてもよい1日だったと思う。けれど……次の日の朝、アルハイゼンは絶望することになる。いい歳をしておねしょをしてしまったのである。そしてそれだけでショックだったのに、パンツはオシッコではなく白色のネバネバしていたもので汚れてしまっていたのだ。
(なんだこれは、病気か……?!)
あまりにも不安で「カーヴェ……」と朝一番で大好きな先輩のもとへ駆け出した。本当に、甘酸っぱくも苦い思い出である。
次回、優しいお兄さんのえっちなシコシコ性教育回に続く……?!