『融解』ーーこの純白の世界がいつまでも続いてほしい……叶わぬ願いだと解っていても願わずにいられない。
自分より少し小さなその手を包み、あたためてやると遠慮がちに此方を向いて、瞳をやわらかく細めてはにかむ。
「ありがとうございます」
蕾が綻ぶようだ、と何度思ったことかわからない。
気が付くと目の前のトキヤを抱き寄せて、自分の胸の中へ招いていた。
一瞬、驚いた表情が見えたが胸の中のトキヤは何も言わず、離れもせず。分け与えられる体温を受け止めてくれた。
「……あたたかいですね。離れたく、なくなるほど」
そう呟いたトキヤの声は震えて、服を濡らしていた。
ほどなくして、ゆっくり、すがるように背に回された両手が抱擁に対する答えだった。
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