夏の思い出暑い日が続く夏の日。おトキは町で買い物をしていると、ある貼り紙が目に入った。
『花火大会 本日夕刻より』
もうそのような時期かとおトキはじっと貼り紙を見つめる。毎年夏が終わる頃に行われている花火大会。去年は1人で夜空を見上げ、花火の美しさに感動していたなとおトキは思い出し、ふと脳裏に想い人の姿がチラついた。
「…今回は…マサ様と一緒に見たいな…」
いつも忙しそうにしているマサトとは最近会っておらず、おトキは正直寂しく感じていた。だから夏の最後の思い出に一緒に見れたら最高の花火大会になるのに…
「おトキちゃんは、やっぱりマサト様と見るのかい」
じっと見ていたのが気になったのか、町の者が声をかけてきた。おトキは首を縦に振りたかったが、目を閉じ、ゆっくりと首を横に振る。
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