Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    爾 -𝐜𝐡𝐢𝐜𝐚-

    @chi_ca__t

    原稿進捗、供養ネタ、イベント展示作品など

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 1

    冒頭と真ん中らへん

    #twst_NL
    twst_nl
    #フロ監
    manager

    邂逅 -二話-進捗広いリビングの中心に置かれたソファに身体を沈めていたフロイドは、重たそうにその身を起こしてヒタヒタとフローリングの上を歩く素足特有の音を出しながら全面窓から外を眺めた。重たく押し潰されそうな曇天が続くこの数週間は、まるでフロイドの心の中を表しているかのようだ。

    ここはフロイドが会社近くに借りているマンション、車で約十五分ほどの静かな住宅街に佇む高級マンションの上層階に住むフロイドの部屋の表札には彼のファミリーネームが刻まれている。カウンター付きの広いシステムキッチンがある3LDKに双子のジェイドと暮らしているが、二人では若干広く感じるこの部屋に住むことを決めたのは理由があった。
    社会に出てから陸で暮らす部屋を探している時に出会ったこのマンションは全面窓からは賑やかな街並みの先にフロイドの故郷である母なる海が広がっている。陸に上がってナイトレイブンカレッジに入学してからも、海は当たり前のようにフロイドの身近にあった。彼の本性は海のギャングと言われるウツボの人魚なわけで、やはり陸でどんなに楽しい世界があっても離れ難い存在なのだ。
    人魚である彼らは陸で暮らしていくためには人間化の魔法役を用いるのだが、その効力は継続し続けると効力が徐々に失われていく。ここ数年で魔法薬の向上は目まぐるしく、半年前からフロイドたちは品質や原材料を変えた魔法薬を服用している。身体との相性がいいのか以前より馴染みがよく、持続期間は伸びたが定期的に人魚に戻り海水で服薬からの副作用を中和しなければならない。
    鏡を使って故郷に帰ってもいいのだが、フロイドはお気に入りの足で海へ向かい浜辺や堤防から海へと帰ることを選んだ。それにあの頃「海は世界を繋いでいるかもしれない」と聞いてから、心のどこかで求めていたのかもしれない。無くしてしまった大切なものをもう一度手にしたいと……。



    ┄ ┄ ┄ ┄ ┄ ┄ ┄ ┄ ┄ ┄ ┄ ┄



    薔薇の国で腕利きの人材が揃い、且つ患者に寄り添い親身に対応することで国で一番の評判を持つ〈〉の一室。
    ここで魔法医療士として勤務するかつての学友で元ハーツラビュル寮寮長のリドル・ローズハートは、目の前に現れたフロイドの顔を見るや否や眉間に皺を寄せながらため息を吐いた。事の成り行きはジェイドが事前に連絡していたはずだが、実際に元の世界に帰ったと思われていた彼女を目にして驚きを隠せないらしい。
    ナイトレイブンカレッジを卒業してから二十年の間に彼は多少背が伸び、顔立ちは可愛らしい幼さを若干残しながらしっかり〈雄〉の顔をしている。そんな彼の相変わらず大きな目がこれでもかと言うぐらい見開いて、口をパクパクと声を発さず動かしているのをフロイドはケラケラを笑う。

    「あっははは! 金魚ちゃんじゃなくて鯉ちゃんじゃん!」
    「う、うるさいよフロイド! 仕方がないだろう、まさか本当に……もう一度会えるとは思わなかったんだ」

    俯いたリドルの表情はフロイドからは見えないが、声色からして少し泣きそうになっているんだとフロイドは彼を見下ろしながら思った。
    フロイドは自分より先に彼女と交流を持っていたリドルが羨ましくて堪らない。在学中に立続けに起こったオーバーブロット事件の先駆者はこのリドル本人で、フロイドにとってその当時は『噂の魔力を持たない面白い人間がいる』くらいの認識だった。ちゃんと名乗って彼女に『小エビ』とあだ名をつけた頃には夕焼けの草原王室で第二王子であるレオナ・キングスカラーとも交流があり、オンボロ寮没取の際は彼の部屋に泊まったと後になってから知る。
    (今更なんだけどさ、あん時は小エビちゃんのこと好きじゃなかったし。アズールのやることにケチつけるイソギンチャクと同じだって思ってたし、オンボロ寮ないから仕方ねぇってわかってるけど……ムカつく)
    フロイドが悶々としている間にリドルは暴君と呼ばれていた頃には想像できないほど柔らかく、少し寂しそうに眉を下げ微笑みながらフロイドの横で小さくなっている彼女に挨拶した。

    「初めまして、僕は医師のリドル・ローズハートだよ。君とは昔からの友人だ、何も恐れることはないよ」
    「ぁ、えっと……こんにちは。あの、まだ名前を頂いてないので名乗れず申し訳ありません」
    「え……? あ、あぁ。すまない、別に君を困らせるつもりはなかったんだ。それに君にはちゃんとユウという名前がある」
    「ゆ、う?」

    彼女は申し訳なさそうに表情に影を落としながら頭を下げる。そんな彼女にリドルは横目でフロイドを一瞬睨みつけると、すぐにまた表情を和らげ彼女に優しく名前を告げた。聞いた名前をまるで初めて名付けられたように何度も繰り返し彼女は呟く。
    フロイドは自分の名前を呟く彼女を少し寂しそうに見つめ、そんなフロイドをリドルは神妙な面立ちで見つめると白衣からスマホを取り出し誰かに連絡をした。すると部屋の扉をノックする音が響き、彼が入室の許可を出すと数名の女看護師が入ってくる。

    「ローズハート医師、お呼びでしょうか」
    「あぁ、この子のメディカルチェックを頼むよ。初期項目を進めて、彼女が少しでも不安そうであれば時間をおいて落ち着かせておやり」
    「ねぇ金魚ちゃん、オレさ金魚ちゃんだから連れてきたんだけど? なんで他の奴らに小エビちゃん任せなきゃいけねぇの?」
    「お黙りフロイド。ここでは僕がルール、僕を頼ったからには従ってもらうよ。それに、彼女たちは僕直属のスタッフだから心配いらないさ。さて、ユウ? 少しの間フロイドと話があるから彼女たちと一緒に検査をしてくれないかい?」
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works

    葉づき

    DONE #葉づきエアスケブ小説企画
    ニンコパ会場でのリクエストありがとうございます!
    リクエスト:無自覚両片想い フロ監、ジェイ監

    無自覚の部分が少しうすくなっちゃったかもしれません💦この監督生は多分2人とも好きなんでしょうね……片割れへの態度しか見えていない2人……といった形です!!
    いつだって気分じゃない。いつだって楽しい事だけしていたい。そんなの当たり前。嫌なら締めて言う事聞かせるか、興味すら持たないか、普通ならそれだけなのに。

    だけど、小エビちゃんだけはちょっと違う。
    小エビちゃんは小さくて弱っちくてバカみたいで、なのに時々、すげぇ可愛い。面白い動物を観察するみたいに可愛がってやってるのに。オレがぎゅ〜ってすると顔を背けて「やめて」って言う。こんなに爪を立てないように、締めすぎて骨が折れたり内蔵が出たりしちゃわないようにしてあげてるのに。こんなに優しく絞めてあげる奴なんて小エビちゃん以外に居ないのに。意味わかんねぇ。オレは小エビちゃんと居るとさ、すげぇ楽しいのに、小エビちゃんは違うの?

    楽しいし面白いから一緒に居る。それはジェイドとアズールもおんなじ。一緒だと飽きねぇから3人一緒に居るだけ。つまんなかったり面白くなくなったら、はいそこで終わり。

    なのに。

    「あはっ、小エビちゃんだぁ。なぁに見てん……」

    渡り廊下で遠くを見てる小エビちゃんを見付けて駆け寄って、ガバリと後ろから抱きついて、視線を同じ高さにしたらさ、その視線の先に居たのはよく見知った顔だっ 2274