誰もいない事務所で不意打ちのように待ち伏せて、なるほどくんを待つ。帰ってきたなるほどくんは、あたしの姿を見つけるなり、無言であたしを睨みつけた。ごめん。約束を破ったのは、あたしだもんね。でも、やっぱり心配だったんだもん。なるほどくんは窓へ近づくと、壁に張り付いて姿を隠したまま、外の状況を確認した。いつの間にか降り始めていた雨が、窓を濡らしている。外の様子は、よく見えない。なるほどくんは、ぶら下がっていたブラインドの紐を引いて、急いで落とした。たぶん、尾行はいなかったはず。あたしもそれを確認してからこのビルへ入ったんだよ。
なるほどくんが、テーブルにあったペンを手に取り、メモ紙へ何かを書き始めた。
968