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    tawaraya915

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    tawaraya915

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    読者様へ日頃の感謝を込めて小話を創ってみました。ご笑納下さい。ご迷惑だったらすみません。いつも応援ありがとうございます!! 心から感謝申し上げます。
    本文いつも通り安定して誤字ってました。こんな短文でやらかした……

    気にするな! 魏無羨が雲深不知処の回廊を渡っていると、どこからか、めそめそとした独り言が聞こえてきた。不審に思って声の方へ近づくと、木陰に少年がひっそりとしゃがみ込んでいる。
    「どうかしたのか?」
     と話しかけると、少年は驚いたように顔を上げ、なんでもないです、と急いで立ち去ろうとした。
    「待て、待て」
     魏無羨は俺様に解決できないものはない、という自信に溢れた笑顔で少年を引きとめ、人目につかない場所まで連れて行き、そこでじっくりと訳を聞いてやることにした。
     少年の悩みは、ごく単純で、修行中にはよくあることだった。自分はこの術では、そこそこやれていると思っていたのに、更に上を行く相手を見つけてしまった。負けを知ったその途端、ライバルに対する嫉妬と失意に挟まれ、全てが崩壊したような気になり、ひどく落ち込んでしまったのだという。かいつまんで言えば、一旦成績が気になり出したら止まらない、ということらしい。
    「魏先輩、私は含光君から見たら何番目なのでしょうか?」
     その切なる目は、とても真面目な答えを求めていた。
     だから魏無羨も、ここはくだらないジョークで応じるのを封じ、とりあえず、魏無羨自身は負け知らずの天才肌ではあったが、少年の心に寄り添い、考えてみる。
     何番目って、どういうことだ?
     藍湛は少年たちに番号を付けているのか?
     そんなはずはないな。あいつは皆を平等に指導しているし、各自の得意、不得意を知って、ちゃんとそれぞれに合った術を指導し、才能を伸ばしてやっているはずだ。
     だとしたら、少年の方の受け取り方の問題だな、と察した。
    「お前さ、自分と誰かを比べることなんかしなくていいんだよ。例えばさ、世の中にはいっぱい酒の銘柄があるだろ? どれも酒だけど、飲む人によって、あれはまずい、これが一番、って好みは千差万別だ。でもさ、酒蔵の主は酒を仕込むときに『この酒は世界で二番目に旨くなります』って仕込むやつがいるか? 誰だって、どこにも負けない酒を作るに決まってるだろ? 最初から妥協するやつなんていない。絶対にうまい酒にしてみせるって、真面目に作って、仕込んで、全身全霊で向き合うはずだ。でもせっかく生み出した傑作でも、酒飲みは、そんなことお構いなしに瓶を開け、喉に流し込む。酒は飲む相手とか場所とか、状況によって味わいが違うんだ。同じ酒でも時と場合によって全然違う」
     少年に話しているうちに、なぜか藍忘機の顔を想い浮かべた。天子笑の味は本当にころころと変わるのだ。一番好きな酒は、最も寛ぐ時間に、一番好きな相手の側で飲まなければ最高ではない……。いやだけど、今はそんなことに浸っている場合ではなかった。
    「とにかくさ、何も考えずに励めばいいんだよ。自分に出来ることを疑わずに精一杯やれ。順番なんて無い。あのな、自分らしさを発掘すると生きやすいんだよ。考えて見ろ、お前ら含光君のガキどもは、いつも含光君の方を向いて直立不動でクソ真面目に立っているだけだろ? つまり皆同列だ。もしお前のいつもの立ち位置が、お前がいなくなったことで空いてしまったら、お前の代わりになる奴はいないんだから、みんなだって、含光君だって困る。だいたい、お前が勝手に作ったライバルの方こそ、実はお前に負けたって焦っているかもしれないぞ。そこはさ、お互いに認め合えば楽になるんだよ」
    (俺と藍湛みたいにな)

    ――少し前――
     藍忘機は、いつの間にか魏無羨がいないことに気づいた。
     もうすぐ夕餉だというのに、彼はまたふらふらとどこかへ行ってしまい、探しに出ると庭の片隅で少年と深刻な顔をして、なにやら話し込んでいた。そのただならぬ気配に胸騒ぎを覚える。彼と少年との距離は近く、最後には頭を撫でてやっていた。
     藍忘機は大いに戸惑う。
     しかし、自分の教え子に対して悋気を起こすわけにはいかず、かといって密接な状況は放ってはおけないが、迷いに迷ったあげく、結局ここは師の立場を貫き、退去した。
     ほどなくして、魏無羨は静室に戻って来た。藍忘機は舐めるように魏無羨を点検して、彼が何を言い出すのかと待っていた。

     魏無羨は雲夢江氏で修行に励んでいた頃から、自己の才能を疑ったことは一度も無いので、そもそも他人と自分を比較するなどという考えを持ち合わせていない。だからこそ少年の悩みが新鮮だったわけで
    (俺のかつての剣術は、お前と天子笑を奪い合うほどに結構いけてたと思うけど、他に俺を超えるやつがいたのかな?)
     と面白そうだから試しに藍忘機に聞いてみた。
    「藍湛、俺はお前にとって何番目?」
     その瞬間、藍忘機はさーっと顔色を変えて冷たさを増した。
    (何番目だと!?)
     ふざけたことを言うな!! と憤慨した藍忘機は、やはり先ほど閉じ込めた悋気を大々的に開放させ、激しく袖を振り下ろすと、目を怒らせて魏無羨に言った。
    「君の他に愛する者はいない!!!」
    (何番目もなにもない! 君だけが好きだ!!!)
     藍忘機は魏無羨を押し倒すと、夢中で唇を奪った。

    終わり

    この逆のパターンはpixivに上げる……かも?

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    tawaraya915

    DONEいつもTwitterで応援してくださってありがとうございます。御無沙汰しておりますが、今月の小話をどうぞご笑納ください。誰がマンスリーで投稿するって言いましたか?ってことですよね。勝手な行動です。文中の紙人形は原作のとは違います。いわゆる日本の折り紙です。中国の折り紙とは異なりますが、ここは自由なフィールドですからどうかお許しください。
    開封されなかったラブレター 一人で留守番中の魏無羨は、静室の片隅で見つけた手紙を前に考えていた。宛名は無く、差出人も示されていない。だが間違いなく藍忘機の筆だ。上質な紙は古びれていても、しっかりしている。が、なぜか折り線がたくさんついている。紙を折った後に残された山折りと谷折りの痕跡がたくさんある。小さくたたんでいたのか? それにしても不規則な折り線だ。藍忘機の私物を勝手に触るのは間違っていると思いつつも、この線が謎解きを要求するので、挑戦に応じてやったまでだ、ということにする。
     手先と計算、図形において卓越している彼は紙についた折り線を頼りに、順々に折りたたんで、あっという間に元の形に戻した。
    (うさぎか)
     うさぎの紙人形は子供の頃に作った記憶があった。だから紙を折って行く途中から楽しくなって完璧に作れたのだ。その出来に満足していると
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    tawaraya915

    DONE読者様へ日頃の感謝を込めて小話を創ってみました。ご笑納下さい。ご迷惑だったらすみません。いつも応援ありがとうございます!! 心から感謝申し上げます。
    本文いつも通り安定して誤字ってました。こんな短文でやらかした……
    気にするな! 魏無羨が雲深不知処の回廊を渡っていると、どこからか、めそめそとした独り言が聞こえてきた。不審に思って声の方へ近づくと、木陰に少年がひっそりとしゃがみ込んでいる。
    「どうかしたのか?」
     と話しかけると、少年は驚いたように顔を上げ、なんでもないです、と急いで立ち去ろうとした。
    「待て、待て」
     魏無羨は俺様に解決できないものはない、という自信に溢れた笑顔で少年を引きとめ、人目につかない場所まで連れて行き、そこでじっくりと訳を聞いてやることにした。
     少年の悩みは、ごく単純で、修行中にはよくあることだった。自分はこの術では、そこそこやれていると思っていたのに、更に上を行く相手を見つけてしまった。負けを知ったその途端、ライバルに対する嫉妬と失意に挟まれ、全てが崩壊したような気になり、ひどく落ち込んでしまったのだという。かいつまんで言えば、一旦成績が気になり出したら止まらない、ということらしい。
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