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    fujitics2ji

    @fujitics2ji

    モブ霊バカ一代

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    fujitics2ji

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    モブ←霊。2236くらい。師匠がアホ。全体ゆるい。
    突き抜けたゆるいギャグセンスが欲しいぜ!と思いながら書きました。
    突き抜け度、まだまだ足りないかも!

    俺の弟子が世界一と思ってたら気づけばプロポーズしていた「その時に花沢君のお酒が来たんですけど、それがまたおかしくて」
    俺はモブに『すべらない話をしろ』なんて無茶ぶりをしておきながら、話の内容よりもモブの横顔に夢中になっていた。

    酒が飲めるくらいに成長したモブは、なんていうか、バカみたいにかっこよくなった。
    こうやって横に並んで歩くとよくわかるが、身長は俺と同じくらいにまで伸びた。
    そのくせ体重は俺より重いというから驚きだ。だがその言葉を裏付けるように、半袖のTシャツから伸びる腕には、しなかやで形のいい筋肉が乗っている。
    小さい頃の丸みを帯びたあどけない顔の輪郭はなくなり、スッと涼やかでシャープな顔立ちは、俺にとってはミケランジェロのダビデ像よりも美しかった。いやもうアフロディーテの域かもしれん。ボッティチェリのヴィーナス誕生、うん、あれだ。今度海に行ってでけえ貝殻に乗せてみよう。

    そう、俺はモブに惚れていた。なんていうか、ダダ惚れだった。あの小さかった弟子は、今やここまで大きくなり、俺の人生を狂わせていった。そして俺は狂っていく自分がいっそ楽しかった。俺の人生くらいこいつに明け渡してやってもいい。もしモブが大怪我をしたら、俺の血を全部モブにやってもいい。それくらい俺の世界の中心はモブだった。今この時、ずっとここにいてもいいと思えるくらいだ。

    しかし、この想いをモブに伝える気はなかった。この気持ちはきっとモブの邪魔になってしまう。それだけは嫌だ。だから俺はこの気持ちに蓋をした。樽の奥底に閉じ込め、蓋をして、漬物石を置いて、時々どかしてかき回してはまた閉じ込める。熟しきったこの気持ちは、時折取り出して芳醇な香りをうっとりと楽しんだ後、誰にも気づかれないようにまた仕舞い込むものだった。ワインしかり、ぬか漬けしかり、フレッシュさだけが価値あるものではないのだ。俺は自分の臆病さを責めるつもりはない。これはモブのためなのだから。


    「師匠、聞いてます?」
    「聞いてる聞いてる、カシスソーダが三杯届いて、そのあとどうしたんだ?」
    思わず口を開けて涎を垂らさんばかりに見入っていたせいか、モブは訝し気な顔でこちらを見た。しかし俺の耳はモブの声を聞き漏らすことなく全て捉えることが出来る。デビルイヤーは地獄耳だが、俺の耳は聖徳太子レベルだ。

    「そう、そうしたら更にカンパリオレンジが四杯来て、あっ」

    その時モブは不意に俺の肩を抱いて引き寄せた。

    な、なんだこの展開は!モブの顔はさっきと打って変わって極めて真剣な顔をしていた。こんな往来で迫るなんてそんな!まさかこの唇を強引に奪われてしまうのか!?俺はここで目を閉じて待っていればいいのか!?いやいや、きちんと節度を持ってここではダメだせめて相談所まで待てと言えばいいのか!?
    正解がわからず俺の思考がグルグルと回っていると、

    「このまま歩き続けて」
    そう言うモブの声が少し固い。なんだ、別にいきなり発情した訳じゃなくて、何らかの危険を察知しただけか。
    となると悪霊の類か?いやモブの力なら一瞬で溶かせるはずだ。
    そうなると人間か。まあこの仕事をしていると知らず知らず恨みを買うこともある。だがそれなら俺が何とかしてやる。なあに、いざとなれば交番に駆け込めばいいだけの話だ。

    俺達は黙って歩き続けた。数十メートルほど過ぎたあたりで「もう大丈夫かな」とモブが言った。
    こんな少しの距離で、危ない連中が諦めるとは思えない。となると、一体何だったんだ?

    「師匠、もう大丈夫ですよ」
    モブがニコリと笑う。そのご尊顔といえば広隆寺の国宝・弥勒菩薩半跏思惟像超えだった訳だが、俺はといえば一体何が起きたのか把握出来ないでいる。
    「モブ、今何かあったのか?」
    「師匠、落ち着いて聞いて下さいね」
    そう前置きをしてから、神妙な顔でモブは言った。
    「今師匠が歩いていた側の壁に、師匠の嫌いなxxxxが止まってました。でもそのことを言ったらきっと師匠固まっちゃうし、でも何もしていないのに超能力で遠くにやるのも可哀想かなあと思って。ここまで来たらもう安心ですからね」
    「……だ……」
    「え?」
    「やだ…」
    一つ言葉が出るともうダメだった。
    「やだやだやだやだ!!あいつがいるのはもう嫌だ!!耐えられん!!モブ!!頼むから俺と一生一緒にいて、お前の力で何とかしてくれ!!そうだもう結婚しよう!!モブずっと俺と一緒にいて下さい!!」
    俺は途中から自分が何を言っているのかわからなかった。ただもう涙と叫びが出るのを抑えられなかった。
    そして、信じられないことにモブはコクリと頷いた。
    「えっと、僕でよければ」
    「お前じゃなきゃダメなんだ!!」
    「じゃあ結婚しましょう」
    そしてもっと信じられないことに、モブは俺を引き寄せ、往来のど真ん中で俺の唇を奪ったのだった。
    俺の頭の中ではクリムトの接吻のイエローがキラキラと回り、そしてそのうちキャパオーバーした意識がブラックアウトした。

    臆病な俺は、こうしてモブと結婚することとなった。
    真実は小説より奇なりというやつである。
    それを取り持ったのがアレだというのが受け入れがたいが、今が幸せならいいとするか。
    俺はシリアルを入れたボウルに牛乳を注いで旦那となったモブが起きるのを待つ。
    うむ、世はなべて事も無し。
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