六月の除霊 静かなチャペル。雲の薄いところから差す一筋の陽光。夜露に濡れた木々の葉はその匂いを濃くし、間もなく訪れる夏への予兆を感じさせた。
今は六月。ジューンブライドという言葉があるように、このチャペルも本来ならたくさんのカップルの門出を祝う場所となる筈であった。
「結構いますね、悪霊」
茂夫は数を数えることを諦め、それだけ伝えた。悪霊が見えていない霊幻は、それでも話を合わせて「なるほど、やはりな」と意味深に答えた。だが、霊幻のことを世紀の霊能力者だと思っている依頼人は縋るような目で霊幻を見た。
依頼人はこのチャペルを所有するブライダル会社の社長である。一か月ほど前から、式を挙げようとすると様々なポルターガイスト現象が起こるようになったという悩みを霊とか相談所に持ち掛け、あとは『その依頼、この霊幻新隆が引き受けた!』という流れである。
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