Recent Search
    Sign in to register your favorite tags
    Sign Up, Sign In

    run

    @runranrun_ka

    @runranrun_ka

    らくがきなどなど。
    てきとうに。
    のんびりと。

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 61

    run

    ☆quiet follow

    バサミレこばなし。
    ≪おとに、なる。≫
    ツイート流れたらどっか行くなーと、思ったのでメモがてら。

    #バサミレ
    baiser

    おとに、なる。耳をすませば聞ける音。
    そばだてなくても届くこえ。
    ふと目が合って驚いた。
    ギターの弦に落ちていた、その目は何かに気づいたように持ち上がったから。
    きょとり瞬いた。その瞳は不思議そうに眺めて。
    「なに?」
    不機嫌にも似た声が飛んできた。
    「なにも…」
    声にも出してないじゃないか、と。
    口にしかけて首を傾げた。
    「そっちこそ」
    何よ?
    こちらの方こそ不思議であると態度で示せば、ほんの少しだけ彼は逡巡したようである。
    「なにが?」
    「声」
    「なに?」
    「…しなかったけど」
    「はぁ?」
    「顔、あげたじゃない」
    「…呼…んでねぇけど」
    「誰が?」
    「…誰でもいいだろ」
    「何よー」
    むぅ。と、頬を膨らませれば肩の上で相棒が「キィ」と鳴いてくれた。
    彼の目がグババを撫でて、ぼりぼりと少し乱暴に彼の手が後頭部の辺りをかいている。
    「気のせいだろ?」
    「気のせいだけど…」
    「なに?」
    「何でもないわよ!」
    またぷぅと、己の頬が膨らんだような気がするし、肩の上のグババは、また「キィ」と鳴いている。
    「グババが」
    「なに?」
    「呼んだの?」
    「なんで俺に聞くんだよ」
    「だって」
    あたしは呼べてない。
    言葉にならずむぅと口を曲げると、彼は少しだけ視線を手元に落として。
    グババが「キィ」と、肩の上で鳴いている。
    「お前だろ?」
    「なにがよ」
    「呼んだの」
    「呼んでないわよ!!」
    声になどなりようもないのだから。
    言い掛かりへの反応にも似た声は宙返りするようにまろびでて。
    言葉をうまく繋ぐこともままならない。
    「…呼べてないもん」
    「なにが?」
    「何でもない」
    「…何でもないって顔じゃねぇだろ」
    それ。
    彼が顎で示すと同時、肩の上でグババが「キィ」と鳴いて。
    二対一の比率が変わったことに気が付いた。
    「グババ」
    「キ」
    「もう!」
    触れていたベースケースの魚を見下ろして、ほんの数瞬言葉を探した。
    突き詰めれば簡単で言葉にするのは難しい。
    どうでも良いことではあるし、どうでも良いわけでもない。
    叶うならと願う言葉はきっと音にもなれず渦巻いて。
    「練習」
    「…」
    「練習するんでしょ?」
    「…お前が遅れるからだろ?」
    「あんたが速いんじゃない」
    いつもをなぞるだけで精一杯だ。
    画面越し、彼の顔を眺める。
    「…何?」
    「なんでもない」
    「そーかよ」
    「…そーよ!」
    触れることもままならない。そんな距離さえ。
    彼には然程の障害にもならない。
    「ねぇ、バサラ」
    「んー?」
    ギターに視線を落とした、彼の睫毛を眺めように目をふせた。
    「呼んでたかもしれない」
    「なにが?」
    「なにか」
    「─なに?」
    「歌になる前の音」
    「─ふぅん」
    届くかどうかもわからない、そんなおとを。
    「なら、歌えよ」
    ジャラリ。音は弾かれて。
    「うん」
    届くまで。
    紡げるまで。
    響くように。
    その、おとを。
    「いくぜ」
    「うん」
    すぅと吸い込んだ空気は喉を通って。
    吐き出す音にするりと溶け込んだようだった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works

    かほる(輝海)

    DONEシティーハンター
    冴羽獠×槇村香
    原作以上の関係

    獠と香ちゃんが好きなかほるさんには「ほら、目を閉じて」で始まり、「ここが私の帰る場所」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば3ツイート(420字)以内でお願いします。
    #書き出しと終わり #shindanmaker
    https://shindanmaker.com/801664

    だって、好きなんだもん(*´艸`*)
    しょうがないよね😂😂
    「ほら、目ぇ閉じろよ」
     いくらキスをするときは目を閉じるのが礼儀でも、それはできない。真っ昼間の明るい獠の部屋で、なぜか獠に押し倒されているあたしは、獠を睨みつけていた。今、この状況で目を閉じてしまったら、それは同意として取られてしまうに違いない。それだけは嫌だ。まだ、昼から伝言板を見に行かなきゃいけないし、ビラ配りもしたい。あんたとここでもっこりが始まっちゃったら、それが全部できなくなる。
    「つまんねぇ意地張ってると、襲っちまうぞ?」
    「最初からそのつもりのくせに!」
     両手で押し退けたって、獠の身体はびくともしない。首筋にキスをされたら、力が入らなくなる。
     どうしてこの男は、いつもこうなんだろう。そんなに心配しなくても、あたしはもう、他に行く場所なんてないのに。あたしが愛しているのは、獠だけ。毎夜毎夜、そう言ってるじゃない。あたしはずっと、獠のそばにいる。夜になれば、あたしは必ずここへ帰ってくるわ。だって、ここがあたしの帰る場所だもん。

       了 434