晴れたらいいネ!!「......なるほどね、そういうこと」
茶髪のショートボブ姿の女性が三井を睨みつける。水戸は三井の方の方を見ようともしない。
「えっと、」
ちょっとお手洗いに向かっただけなのに帰ってきたら三井が座っていた席には女性が座り水戸と何か話をしていたみたいだったが三井が近づくと和やかな雰囲気が一変した。なんと言っていいのかわからず思わず口籠る。
「この人は関係ないですよ」
水戸の声はどこかよそよそしい。
「あっそ、もういくわ。またね」
ガタンと椅子を鳴らし席を立つ女性に水戸はハッキリと告げる。
「または、無いと思います」
思わずギョッとした。それは女性の方も同じだったのだろう。顔をカッと赤くして、テーブルの上にあった水の入ったグラスを手に取り、勢いよく中身を水戸にかけたのだった。パシャンと水音が鳴り水戸の後ろに立っていた三井にも少しかかる。女性がこちらをまた睨んで吐き捨てるようにいう。
「......こいつ、雑よねセックス。って知ってるか、それじゃあ」
女性のヒールの音が聞こえなくなるまで水戸は濡れた体を拭こうともせず真っ直ぐに前を見つめていた。三井は元の席に座るとポケットからハンカチをだす。
「......おい、大丈夫かよ」
と言いながら差し出すと水戸はそれを受け取ってやっと顔を拭いた。まだ季節は春先で少し風も冷たい。黙ってる水戸に三井は気になったことを聞く。
「......セックスしてたんだな、あの人と」
水戸がうなづいた。
付き合い始めたのは高校生だったが二人は幾度か別れていた。その度にお互い傷つけ合いながらも結局は一緒にいたいと手を取ってきた。
「三井さんと別れてた時の、まあ、適当な人」
水戸は気まずそうに告げる。
「そうか」
三井は真剣な顔でテーブルにあったグラスを手に取って中身を水戸にかけた。今度はアイスコーヒーだった。バシャン、と先ほどより勢いのいい音がなった。
「俺、お前と別れてる時も一人でどーにかしてたんだぞ!!それをお前はー!!!!」
一日に水とアイスコーヒーを立て続けに被ったやつはいるのだろうか。カンカンに怒った三井の機嫌はどうしたら取れるのか、いや今日一日はこの調子だろうか。怒りを爆発させた三井をぼんやりと眺めながら水戸は自分の行動の軽率さを呪った。