自分が『そっち側』の人間だと気づいたのは中学生のときだった。
はじめて性欲をしっかり己の実感として自覚した相手が部活の指導に来てくれたOBの大学生だったのだ。
彼は強豪大学でレギュラーを獲得しているくらいだったから、バスケ自体とても上手だった。だから、今思えば憧れも半分ほどあったと思うが、休憩中に彼がTシャツの襟を伸ばして顔の汗を拭ったときに見えた素肌と、薄っすら生えていたおそらく陰毛へとつづいている臍の毛から目が離せなくなったのだ。そして、あけすけに言えばそれを見て勃起をした。
当時は己の異変にひどく狼狽えて、焦って「すみません、お腹が急に痛くなって」とトイレに逃げ込んだのを覚えている。そして、収まるまでじっと、ただひたすらじっと耐えていた。
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