今宵こそはと、サンタクロースなんて存在するはずがない。
そんなことを口にしたら良識ある大人は怒るのかどうか気になって、気がついた時にはついと口から漏れていた。最も、駅前に置いてある目が痛くなるほどの電灯装飾に彩られたツリーに数分前まで視線を奪われていた自分が口にするには、説得力に欠けるかもしれないけれど。それでもあんなものが子供騙しのまやかしだということを自分はうんと小さい時から、おそらくこの世の誰よりも良く知っている。
「相手の欲しいものが分かるテレパシー。重い荷物を持って空を飛べる念動力。瞬間移動ができるテレポート。その全部の能力を持ってたって、それでも世界中の子供に一夜でプレゼントを届けるなんて出来やしないと思いませんか」
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