奴隷タル蛍 豪華な屋敷の地下にあるその空間は最低限の清潔感こそ保たれているものの、じとりと湿気を帯びて澱んだ空気に満ちていた。こんな場所に似つかわしくないであろう若い娘、蛍への訝しげな視線が左右の壁の中から注がれていて、なんとも居心地が悪い。
「お嬢さんの望むような奴隷っていったら……ここから先の男共くらいかね」
この屋敷の主、恰幅のいい中年男性が今まで通った牢には脇目も振らず、スタスタと歩いていく。この先と言われた牢の中に視線を向けてみれば、確かに今通ってきた中にいた痩せこけた男たちと打って変わって、そこらの冒険者と変わらない屈強な体躯を持つ男たちが数人、各々の独房の中に見える。
「ここの男共は維持費はかかるがいい仕事をしてね、お嬢さんの軍資金なら充分買えますよ。もちろんレンタルでもこちらとしては構わない」
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