「シーザー、ブレイズウッドで静かなところってどこだろう」
「おー、プロキシ!もう来てたのか。静かなところなぁ……あるか?」
「あるある、いっちばん静かなのはねえ、アイアンタスクの中だよ!」
「…アイアンタスクの中?」
「停めてる場所がブレイズウッドからすこし離れてるからな〜、いまは急ぎの運びもないし、プロキシに貸してやってもいいぜい」
アイアンタスクの荷台を使えと言うことになったらしい。アキラに教えられたライトは肩を竦めたが、アキラはすなおに戸惑っている。それに気づいたのだろう、見たほうが早いとパイパーがアキラを連れて歩き出す。
ガレージからはブレイズウッドが見えるが、離れているからたしかその喧騒までは届かなかったはずだ。
パイパーがどこかに消えた。その数分後に見せられたのは、ふかふかのマットを敷かれた荷台だった。
端には小さいがぎりぎり二人が座れそうなソファもある。背を倒せばベッドになるタイプらしい。冷蔵庫のかわりのクーラーボックスに、小さなローテーブル。型の古いラジオまである。まるで小さな部屋だ。
「むかし秘密基地を作ろうとしたんだ〜、こうやって荷物を積めば、何も見えないって寸法だ」
「へぇ、すごいな」
「何を感心しているのかしら…。プロキシさん、これじゃあ郊外の夜は寒くて過ごせませんわよ!今すぐライトの部屋から必要なものを運んでしまうべきですわ。ライト、あなたもとっとと動きなさい!」
「え、ええと、」
ぽん、とライトはアキラの肩を叩いた。こうなったら無駄だ。ほぼ聞こえなくともだいたいの流れは察した。ルーシーが向かっているのはライトの部屋があるほうだ。つまり、この荷台に足りないものを運べと言いたいんだろう。たしかにあれでは、ライトはともかくアキラには足りないだろう。毛布と、枕と、水分もいるか。シャワーやトイレはさすがに用意できないから部屋に戻ればいい。あとはまぁ、思いついたものを持っていこうか。
それからはアキラが驚くほどはやく、アイアンタスクの中に仮宿が整えられた。
『…その、こんなつもりじゃなかったんだけれど。ごめんよ、ライトさん』
『間違いなく半分以上があんたのせいじゃない』
『…ふ、あったかいね』
『どこから出てきたんだ…?このもこもこした布』
『バーニスが引っ張ってきてたような。拾い物も役立つね、と言っていたから、…戦利品なのかな』
『そのわりには状態がいいがな』
『たしかに。手触りがいいね』
ソファに敷かれたもこもこの布はブランケットにもなりそうな大きさだった。ソファからはみ出て広がっているのがちょうどいいと尻に敷いているが、それのおかげで地面からの冷えも免れそうだ。
パイパーがよこした古い型のランタンは火ではなく電気でつくもので、それがほどよく中を照らしている。シーザーとルーシーが持ってきた使ってなかったらしいクッションが五つほど放り込まれていて、アキラはそのうちの二つを使って背を預けていた。
まぁ、こうして寛げるのならいいか。