その夜は、すこし早めに横になった。ごそごそと動くライトにふしぎそうにしていたアキラは、毛布の中で撫で上げた背中にぶるりと体を震わせた。
「っ、ライトさん、まってくれ」
ぐいと肩を掴んで離された。すなおに離れはしたが、手は背中に添えたままだ。まって、と言われて、肩をすくめる。
「…甘やかしてくれるんだろう?」
そう言えば、アキラが目を丸くする。それからくすくす笑った。
「そういう意味じゃ、ないんだけれどな」
「いやか?」
「だめだよ、言っただろう?」
「さわるだけでもだめか」
「…そんな顔しても、」
なんとか、会話ができる。アキラが声を抑えてくれているからかもしれない。小さな声と、不快な音は、重なってもそれほどざわつかない。それにゆっくりと話してくれる。ライトにわかるようにと、このたった数日で身につけたらしい話し方だ。
それがうれしくて、頬を緩めたまま背中を撫でた。
「あんたに、ふれたいだけだ」
「………本当に?」
「あぁ」
「……最後まではぜったいになしだ」
「当然だな」
さすがにアイアンタスクの中で脱ぎ合う気はない。そう言って頷けば、ややしてアキラが表情を変える。しかたないなと、許す顔だ。
「…服は着たままでいい。肌には直接さわらない。それでもだめか?」
もうひと押ししようと、するりとアキラを抱きしめる。最近はずっと逆だったから、細いが骨ばった肩を掴むのも楽しい。
「…ずるいなあ、その顔」
「は、そうか?」
あいにくいまおのれがどんな顔を晒しているかわからない。少し待てば、アキラの手がそっとライトの腕に置かれる。そろりとシャツの上から撫でてきて、ゆるゆると息を吐いた。
「血が、のぼるのは、あまりよくないから、」
「あぁ」
興奮するなと言いたいのか。むずかしいが、そうしろというならそうしよう。キスはいいかと唇に触れれば、ふ、とアキラが笑う。
「…あんまり、きもちよくしないでくれ」
「………………あんたも相当ずるいな」