「しりとり?」
「そうです!みんながやってるの!ルシファーさまもしましょ!」
そんなことを言われたのは、仕事で参っていたある日の夕食の席だった。
「私からお手本しますね!」
俺の了承も得ずに始まったその遊びはしかし、頭を空っぽにするにはよいかもしれない。
「ん〜っとぉ……何にしようかなぁ……」
デザートのシャーベットを食べながら楽しそうに考える彼女を見れただけでもかなり気が紛れる。しばらく、あ!と嬉しそうにこちらを向いた彼女に、つい頬が緩む。
「る し ふ ぁ ー」
「ん?!」
突然呼び捨てにされて驚いたのも束の間。どうやらそれがお題らしく、間抜けな自分を隠すためにコホンと咳払いをした。
「あ、から始まる言葉ですよ、ルシファーさま♡」
「あ、か……。あ、あ、あ……」
改めて言われるとパッと思いつかないのが面白いところだ。何度か舌の上で、あ、あ、と繰り返した後、ああ、と一つのフレーズが口をついて出た。
「あいしてる」
「……へ?」
「あ、だろう?あ い し て る。どうだ?」
「あっ、ああ!な、るほど、それは、はい!大丈夫、ですっ!」
かぁぁっと頬を染めた彼女を見て、はて、何か変なことを言ったろうかと小首を傾げたが、考える暇もなく、彼女がまた「ルシファー!」と言った。グッと前のめりになって俺に上目遣い。ん"っ……と喉が詰まったが、おかまいなしに言葉は続く。
「ルシファーさまっ!すごい!」
「な、なにがだ?」
「る し ふ ぁ、あ い し て る、る し ふ ぁ、あ い し て る……!」
「!?」
「ループしちゃいますね♡」
にこ!とそれはそれはいい笑顔にノックアウト。今日はもう、仕事はやめだ。部屋で愉しむとしよう。そう決めるまで一秒もかからなかった。
同じ部屋にいたものたちがずっこけたのは、俺も彼女も、知るところではない。