今日は何だか駄目だそう思って自室に閉じこもったのは良いが、さて、ここからどうしようか。起きた時から違和感は感じていたのだが角を仕舞えない上四肢もいつもより二回りも太く絵に描いたような鬼の姿になってしまった。人の姿に戻ろうにも頭がぼんやりとして元の形が思い出せない。時間が経てば経つほどその症状は悪化していき、暫くすると自分の名前すらぼやけてきた。そのままぼーっと天井を見つめていると扉を叩く音が響いた。
「ヴォックスー?起きないの?」
…シュウの声だ。ああ、そろそろ不味い恋人の名前なのにすぐに思い出せない。彼の問いかけに応えようと声を上げようとした。その時に鬼としての力を抑え込めていない自分の状態を思い出し、どうにかのそのそとベットを降りメモに『体調が悪いから今日は寝ていることにするよ。移るといけないから部屋には入らないでくれ』とペンを握りつぶさないように注意しつつ書いた。ドアの隙間からメモ紙を出せば向こうからそれが引き抜かれた。
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