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    iduha_dkz

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    iduha_dkz

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    高三の夏の綾と桃の抽選会の日の会話妄想
    幼い頃の衝突は、将来の理解の糧になるはず
    可視光線とゴーストライトまぜまぜ世界線

    4/27 12話を受けて少し改稿しました

    甲子園の組み合わせを見て、綾瀬川は何度目かのため息をついた。大和と当たるのは準決以降。早く戦いたいのに、綾瀬川に運はなかったらしい。
    「何度見とんねん。結果は変わらへんやろ」
    ため息が気に触ったのか、桃吾が綾瀬川に静かにしろと言いたげに声をかけてくる。
    「この勝負のために俺は野球続けてたの! てか桃吾はさ、円と当たるのこんな後でいいの?」
    「最初に当たって初戦敗退になるのもドラフトに関わるやろ。後の方が戦績ようなるし、当たるの決勝がええわ」
    「あー……」

    円には見てわかるハンデがある。本人の実力がどうであれ、ドラフト前にわかりやすい結果がある方がいいのは間違いない。それに、もし綾瀬川が打たれて負けるとしても、桃吾にとってだって甲子園の結果は高ければ高いほどいいのだ。勝って野球を辞めるつもりの綾瀬川とは見ているものが違う。

    「そんな早くやりたかったんけ?」
    「俺は三年に一回しか戦えるチャンスないの! 織姫よりも待ってる時間長いの!」
    「なら甲子園の期間くらい誤差やろ」
    誤差でも近づくと一日が長く感じると言おうとして、綾瀬川はやめた。対戦タイミングがいつになるかは、綾瀬川でなく今後も続ける予定の桃吾と円に味方している。それを否定するのは、どこか気がのらなかったのだ。

    「……てかさ、俺は戦うけど、いいんだよね」
    怖い打者が一人だけなら、敬遠して点をとらせないのも野球のセオリーの一つだ。堅実に勝利を狙うなら敬遠は選択肢になるのに、そういえば桃吾からは一度も大和の敬遠を提案されたことがないなと綾瀬川は思う。

    「ダメ言うても絶対敬遠せぇへんやんけ……。織姫に彦星と会うな言われへんわ。協力したるから思いっきり投げることだけ考えたらええねん。あとな、」
    桃吾の目が一度綾瀬川から離れて遠くを見た。誰のことを想ったのかわかりやすく表情が和らいで、その顔のまま綾瀬川にまた視線が戻る。
    「打たれても、俺が点取り返したる」
    柔らかな表情のまま発せられた言葉が意味することを、綾瀬川は噛み締めた。
    「……円から、打つつもりなんだ」
    「アホか。真剣勝負やぞ。当然や。円かて、俺に打たれてもええ思て投げるとかあれへん」
    ふと何かを思い出したのか、桃吾は一度口を閉じる。遠く彼方にいる投手を想う顔から、いつも綾瀬川が見ている顔に戻った。

    「打たせてあげようよ、とか円は絶対考えへんからな」
    「……懐かしいね」
    それは昔、綾瀬川がまだ色々なことを知らなかった時に言わずにはいられなかった言葉だ。
    あの日、桃吾が何を思って「バカにすんな…」と言ったのか、今の綾瀬川には理解できる。なぜなら。
    「棒立ちの園大和から三振とれても、嬉しゅうないやろ。そういうことや」
    綾瀬川に手を抜かれて勝ててもまったく喜べない相手ができたからだ。

    とはいえ、生意気な後輩を抑えるためだけに野球を続けていて、それ以外の勝利を道筋としか思えないのも、カスに当たるんじゃと綾瀬川は思っている。思っているが、それを桃吾には言わない分別は、この歳になったらついていた。

    円のために、綾瀬川の正捕手の地位を三年間一度も譲らなかった男だ。
    綾瀬川の球を捕りたいと熱望していたキャッチャー全員を一顧だにせず蹴散らすのと、トーナメントを大和と勝負するまでの通過点として見なすのは、同じ種類の残酷さである。
    そんな、一般的な動機とは少々外れたものでも、人を負かす覚悟には間違いなく、今の綾瀬川にはそれがあるとこの三年で桃吾にも伝わったからこそ、今まぁまぁのバッテリーとしてやっていけているのだろう。

    「さ、トーナメント表見とらんで練習行くど。格上相手や。できること全部やらんとな」
    「ちょっと! 俺は大和三タコして野球辞めるつもりなんだけど」
    大和は綾瀬川より強いと、聞き捨てならないことを言って練習に向かう桃吾を追いかけ、綾瀬川も練習に向かう。こう言えば、綾瀬川がトーナメント表を見るのを止めるとわかった上で選ばれた言葉だ。それができるくらいには、桃吾は綾瀬川の動かし方をもう把握している。

    あの夏の日に乞われた円の前から消えるどころか、なぜか綾瀬川と桃吾とバッテリーを組んで最後の甲子園で円と投げ合う。そんな甲子園開始まで後少し。
    待ち望んだ戦いは、決勝まで延びてももう今月だ。
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    iduha_dkz

    DONE綾と桃吾の高校での卒業式の話です。
    前半は1年時、後半は3年時。
    3年一緒に過ごすうちに色々理解して仲良くなり情も湧いたけど、それでも桃吾の一番は円なので綾の一番にはなれないことを最後に突きつける、一番のために他の大事なもの切る痛みを伴う別れが100通り見たくて書きました。
    最後の日を迎えて卒業式で久しぶりに会った二つ上の先輩は、綾瀬川と桃吾が二人で花束を持ってきたのを見て、はじめは落第点しか取れていなかった学生が百点満点を取った時の教師のような顔で微笑んだ。
    「二人一緒に来るとは思ってなかった」
    「元主将を心配させるなって、二年の先輩たちが二人で行けゆうてくれはったんです」
    「桃吾、それ言っちゃったら不安にさせるやつじゃない?」
    「大丈夫だよ綾瀬川。雛がどうしても俺に渡したかったって言えない照れ隠しなのはわかってるから」
    「主将ぉ!」
    「あ、ならよかったです」
    抗議の声を出した桃吾を綾瀬川はまったく気遣わず「ほら渡すんでしょ」と花束を差し出すように促す。長持ちすることを考慮してドライフラワーで作られた花束を二人から受け取り、鮮やかな花束に一度視線を落とした後、彼は自分より身長の高い後輩二人を見上げた。
    6957

    iduha_dkz

    MAIKINGぜんぜんまったく書いてる途中だけれどもこの会話出すなら今じゃない?となったのでワンシーンだけ抜き出したもの
    大学から一緒の学校になった花瀬花の、4年クリスマスの日に瀬田ちゃんが花房に告白してOKもらえたその少し後のワンシーンです

    こちらのその後的なものになります
    https://poipiku.com/7684227/9696680.html
    「花房さ、オレのせいでカノジョと別れたって前言ってたじゃん。確か一年のバレンタインデー前」
    「……よく覚えてるね」
    「その後からオレに付き合っちゃわないって言うようになったら、そら覚えてるだろ」
    「そっか」
    「やっぱオレのこと好きになったからってのが、カノジョと別れた理由なん?」
    「……そう。カノジョより瀬田ちゃんと一緒にいたいって思っちゃったのに、隠して付き合えるわけないじゃん。俺から別れ切り出した」
    「え、態度に出て振られたとかじゃなく?」
    「別の人の方が大事になっときながら、振られるくらい態度に出すなんてサイアクじゃん」
    「あーまぁ、確かに?」
    「ほんとにいい子だったんだよ……俺が野球最優先でもそれが晴くんだからって受け入れてくれててさ……でもだから、カノジョより優先したい人ができたのに、前と変わらずバレンタインのチョコもらうなんてできないじゃん」
    485

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    iduha_dkz

    MOURNING話が進んで解釈変わる度に書き直される円桃。
    枚方シニア戦が終わったら完成します。たぶん。

    5/13追記
    13話で解釈が変わったので、この流れのままで書き換えるのはここで終了です
    今後はこちらで→https://poipiku.com/7684227/8748586.html
    枚方シニア戦の夜の円桃構えたところでピタリと静止し、そこに吸い込まれるかのように、豪速球が投げ込まれる。ミットにボールが納まる音だけが繰り返されて、U12と枚方ベアーズの試合は終了した。
    格上相手を当然のことのように抑えたエースピッチャーに対し、ある人は球威の凄さに圧倒され、ある人は球種の豊富さに目を奪われ、またある人はそのコントロールの正確さに魅了されていた。
    とにかく鮮烈だったのだ。綾瀬川次郎という才能は。
    だから、綾瀬川の活躍の裏で当然のことのように行われていた異常なことに気づいたのは一握りのよく見ていた人だけで、円が気づいたのも桃吾と常日頃から組んでいて、彼のことをよく知っていたからだ。
    枚方ベアーズ戦の桃吾のリードは、これまで円に対して行われたものより、ずっと厳しい要求がなされていた。ストライクギリギリの下半分に集められる投球は、打者にも打ちづらいが投手にだって投げにくい厳しいリードだ。
    1982