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    iduha_dkz

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    iduha_dkz

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    45話・46話を受けて。
    イガとどうなるのか足立フェニックスはどうなるのか、毎号息をのんで見守っています。

    好きなことと関わる重みパソコンと本を使ってどんな配球だと打者をアウトにしやすいのか、綾瀬川は一人図書館で調べていた。
    タブレットが壊れる前の大和との最後のメールはどんな配球だと打ちづらいかについてで、タブレットが直った時にしっかり返事が返せるよう色々と調べておきたかったのだ。
    その結果、配球とは単に慣れないように適当に高めを挟めばいいというものではないことが改めてわかる。目を慣らさないようにというもの大事だし、打者の意表をついて予想外のボールを投げるのも大事で奥が深い。
    桃吾も試合中色々考えていたのかなと綾瀬川は思い、そして次の瞬間初登板の試合で投げつけられた言葉を思い出してしまう。
    「人敗かす覚悟もないねやったら今すぐ円に一番渡してマウンド降りろ」
    それはU12の決勝戦が終わり、アメリカのピッチャーが敗け方で怒られていないか気になってしまった時から、忘れられなくなっていた言葉だった。いや、正確には野球から離れていた時期は忘れられていたかもしれない。けれども、足立フェニックスに入団して以降、この言葉はふとした瞬間に綾瀬川の思考に浮上してくる。ベンチ入りの話が出た時だったり、親達に推薦の枠の話をされたりした時に、当たり前のように記憶から湧き上がってきてマウンドに登ってはならないと綾瀬川に思わせるのだ。
    今は周りを騙し続けるという最悪なことをしているが、マウンドに登ればどうしたって他の人の邪魔になってしまう。このチームのみんなの邪魔にも対戦相手のチームの邪魔にもなりたくない。その気持ちを叶える確実な方法は綾瀬川が野球をやらないことだと、あの日に言われて綾瀬川はわかっている。
    今日みたいに配球について学んで本気でやる瞬間を考えるのは楽しい。けれど、敗ける人のことがどうしても気になってしまうのもまた綾瀬川の本音だ。この相反する本音を抱えたまま既存のチームに混ざっても、異端なのは綾瀬川の方で。だから綾瀬川が綾瀬川の望むように行動しても誰かに迷惑をかけないためには、それに対応した理念の新しいチームが必要なのだ。
    けれど新チームの話をしたかったイガは今真夜と自主練をしている一方、綾瀬川は一人きりだ。それで本当に綾瀬川の理想のチームを作れるのか、真夜と勝ったイガは野球は勝てなくても楽しいのが一番だと考えてくれるのかわからなくなって。
    思わず閉じてしまった配球論の本から、パタンと大きな音がして綾瀬川は驚く。一度集中が途切れたら何か食べたいと空きっ腹が主張をはじめてしまった。今はもう集中するのが無理そうで、綾瀬川は集めていた本を本棚に戻しに行くことにする。
    配球のことを調べている間はあんなに楽しかったのに、なんで今はこんなに苦しいんだろう。一年前は野球のすべてが楽しかったのに。そんなことを考えながら、綾瀬川は図書館を後にする。
    帰り道ではもっと読み込みたくて一冊だけ借りた配球論の本が、確かな重みでここにあるのだと主張をし続けていた。

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    iduha_dkz

    MOURNING話が進んで解釈変わる度に書き直される円桃。
    枚方シニア戦が終わったら完成します。たぶん。

    5/13追記
    13話で解釈が変わったので、この流れのままで書き換えるのはここで終了です
    今後はこちらで→https://poipiku.com/7684227/8748586.html
    枚方シニア戦の夜の円桃構えたところでピタリと静止し、そこに吸い込まれるかのように、豪速球が投げ込まれる。ミットにボールが納まる音だけが繰り返されて、U12と枚方ベアーズの試合は終了した。
    格上相手を当然のことのように抑えたエースピッチャーに対し、ある人は球威の凄さに圧倒され、ある人は球種の豊富さに目を奪われ、またある人はそのコントロールの正確さに魅了されていた。
    とにかく鮮烈だったのだ。綾瀬川次郎という才能は。
    だから、綾瀬川の活躍の裏で当然のことのように行われていた異常なことに気づいたのは一握りのよく見ていた人だけで、円が気づいたのも桃吾と常日頃から組んでいて、彼のことをよく知っていたからだ。
    枚方ベアーズ戦の桃吾のリードは、これまで円に対して行われたものより、ずっと厳しい要求がなされていた。ストライクギリギリの下半分に集められる投球は、打者にも打ちづらいが投手にだって投げにくい厳しいリードだ。
    1982