忘れじの行く末 弱いとは無力であるということだ。
ここしばらく方々に頭を下げ通しになってつくづくそう思わされた。
会社の仕事で向かった取引先社長の本家がある山奥の村。
その村が一夜にして炎に包まれ村人は全員死亡。
村を取り仕切っていた一族の遺体は次男の孝三のみが礫死体で発見され、その孝三を撥ねたのだろう入婿の克典も車の中で死んでいたという。
克典社長と呼びかけた覚えはあれど、しかしどうにも記憶が曖昧で、水木は村の火付の下手人ではないかと入院中に何度も警察からの聴取を受け、それが済めば今度は会社で本当に覚えていないのかと何度も社長に呼び出された。
曰く、水木が自分から志願して件の村に向かったらしいのだが、それについてもとんと覚えがない。
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