一体何が起きているのか。
朝から伸びた髪を整えてやるだの、調べ物はないかだの、菓子を焼いただの。
普段懐かれている訳でもない少女たち、それも皆揃ってフェリーンだ。何だかんだと理由を付けては代わるがわる自分に何か与えたり成果物を見せに来たりする。
煩わしい程でも無いが身に覚えの無いのも気味が悪い。
「君に褒められたいのではないか」
古株のフェリーンが言う事には益々覚えがない。指の先まで格好付けた手が胸元に伸びたと思えば、それはシャツに着いた白い毛を一本摘んだ。
「君の小さな友人たちの中に、彼女たちの友人かまたその友人あたりが居るのだろう」
足元に黒猫が擦り寄る。
二又の尻尾が絡み付くように脚を撫でた。
「そうだな、大方。君の“なでなで”は極上だとか。そんな噂でもちきりなのさ」
耳の付け根を掻いてやる。
ぐるぐると喉が鳴る。
それを見遣る古株のフェリーンが目を細めた。
「猫にはネットワークがあると言うからね」
(おわり)