はじめまして我が友よ「さあ、この部屋の中に彼がいる。ご挨拶しなさい、ジョジョ。」
お前の兄になる人だ。
父はそう言ってジョナサンに微笑むと、使用人を下げさせ自ら扉に手を掛けた。
部屋は光に包まれて暖かな白と黄色でいっぱいだった。
すう、と柔らかい風が、何処か冷たい空気を伴ってカーテンを揺らす。窓際に、青年が立っている。
彼の人が振り向いたとき、ジョナサンは例えようのない気持ちだった。
背に太陽を背負って、彼は真っ直ぐに立っていた。眩いばかりの黄金色をした頭髪が、秋の麦穂のように光を受けて輝いている。真っ白なシャツの下には若木のような伸びやかな肢体のあることがはっきりとわかった。逆光で表情の読めぬ顔は、しかし上向きに歪められた口角が妙に印象に残っている。今振り返ってみると、あれは笑みだったのであろう。
「君はジョナサン・ジョースターだね?」
彼の人の声は、これまでジョナサンが出会ってきたどの人とも違うものだった。変声期をとうに過ぎたそれは、低く、滑らかで、どこか冷たく、それでいて甘美な響きを持っている……。
「そういう君は、ディオ・ブランドー……」
知っている。僕はこの男を、ずっと前から知っている……。
ジョナサンは不思議な気持ちだった。アポロンもかくやという光輝に身を包み、しかし頽廃の色を帯びた、こんなにも美しい人と出会ったのは初めてだというのに、彼と自分が酷く強固な因縁に結ばれているような感じがした。初対面だとは思えぬ、何か運命的なものを感じたのだ。
ロマンチストの気があるジョナサンを知る者なら、またジョジョの空想癖が始まった、なんて笑うのだろうが、これはそんな甘い情動ではなかった。
ぶわ、と窓から風が吹いてきて、大きくカーテンを膨らます。
「これからよろしく頼むよ、ジョジョ」