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    まりも

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    ##恭ピエ

     肩に少し重みを感じてちらとそちらを見れば、幼い恋人が寄りかかり、微かな寝息を立てていた。今日は、ダンスレッスンの後ピエールに予定を聞かれた。家で新作のゲームをやると言ったら「ボクも、やってるとこ、見たい!」と言われたのだ。最終的に、ピエールはゲームをプレイする俺の隣に座り、時々質問をしながらニコニコしていた。
     本当はピエールがあまりゲームに興味がないことも知ってる。以前スマホでやってるゲームを、「恭二と同じの、やりたい!」というからダウンロードしてやったが、ゲームのお約束みたいなものがわからず混乱していた。その時は落ち込んでいたピエールを慰めたものだった。そんな様子だったから、今日のが俺の家に来る口実だったことだって気づいていた。
     少し流されるような感じでピエールと付き合いだしたのは数週間前。なかなか互いのオフが合わない中、ピエールは隙を見つけては俺と一緒にいたがった。二人でいて何をするわけでもない。たわいもない会話をして、帰る前にハグをする、それだけだ。それだって、ピエールは別に俺以外のやつにも抱きつくことがあるのを知っているし、付き合う前からもしていたことだから、実際には恋人らしいことは何もしてないと言っていい。
     ……本当は、何もしたくないわけじゃない。今日だって、ピエールが肩に触れるくらい近くにいることに緊張して、ゲームでもミスばかりしていた。それでも、俺の中の理性が、自分からピエールに触れることは許さなかった。ピエールへの思いを殺しきれなかったけれど、せめてそれぐらいは守りたかった。
     そんな俺にとって今の状況は生殺し状態のようなものだった。無防備に眠る恋人。普段は見つめることのない、整った顔を眺める。そうしていると、ふわりと甘い香りが鼻を掠めた。以前つけていると言っていた香水の香りだろうか。香水に詳しくないから、なんの香りかはわからない。それでも、なんだか太陽を思い起こさせるようなそれは、ピエールに合っていると思った。そんなことを考えていたら、数週間、いやそれよりもっと前から抑えていた「ピエールに触れたい」という思いが強くなるのを感じた。きっと、肩に手を回すくらいのことはしたっていいのだと思う。でも、ピエールを起こしてしまうかもしれないと思うとそれすらも躊躇われた。結局俺は、ゲームも動くこともできず、ただ恋人の隣で身を固くすることしかできなかった。
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