添い寝本続きのお話「ふぁ~あ……。ねっむ……」
二月。大学の期末試験も終わり、いよいよあとは卒業を残すのみとなった。
千冬と付き合うようになってから四ヶ月。大きな喧嘩もなく順調な交際が続いている。が、一週間千冬と会っていない。なんてことはない、オレと千冬の大学の試験期間がズレているだけの話。
ゼミの単位と卒論だけのオレとは違い、千冬は試験が終わるまでオレの家に来ず、勉強に集中しなくてはならない。その間オレは千冬の作る飯を食えず、添い寝もしてもらえず、もちろん会えていないのでセックスもしていないので、人間の三大欲求すべてを満たせていない状態なのだ。
千冬の作った飯しか食いたくないのが正直なところだけど、何も食わないと千冬に叱られるので、せめて飯の時間を合わせてビデオ通話をしながらコンビニ弁当を食っていた。たったそれだけでただのコンビニ弁当もうまくなるのだから、千冬の存在はオレにとっての命綱だ。もちろん千冬の飯には敵わないけど。
千冬のおかげで夜も一人で眠れるようになったけど、千冬と寝る時より眠りは浅いし、朝起きたときに千冬が腕の中にいないのも、眠そうにむにゅむにゅしてる小さな唇にキスできないのも辛い。空虚すら感じる。
セックスは言わずもがな。
「はぁ……。千冬のほっぺ食みたい……」
オレは深刻な千冬不足に陥っていた。
しかしそれも今日まで。千冬の試験は今日の午前中に終わる。駅で待ち合わせて一緒に夕飯の買い物に行って千冬の作った飯を一緒に食って、一緒に風呂に入ってセックスして寝る。そうすればオレの千冬不足なんて一遍に吹き飛ぶのだ。
そして何より、今日オレは男を見せる。
場地に相談したらまだ早いんじゃないかと言われたけど、むしろ今がベストだと判断した。今日はそのために必要なアイテムを引き取りに行って来たというわけだ。
「あのぉ~。隣いいですかぁ?」
なんて本日の予定を練っていると、突然知らない女に声を掛けられた。
「やだ」
オレは千冬が絶賛するほどのイケメンなので、他にも席は空いているのにわざわざオレに声をかけてきたこの女の下心はありありとわかる。千冬曰く、オレと付き合える女は相当自分に自信があるタイプだそうだ。確かにこの女も顔は整っているし、胸もデカくて脚もきれいだ。普通の男なら喜んでナンパに応じるだろう。だけどオレにはこの女が霞むほどに可愛い可愛い千冬という恋人がいる。