竹取物語(かぐや姫)パロ今は昔、竹取の翁といふ者ありけり。野山にまじりて竹を取りつつ、よろづの事につかひけり。名をば讃岐の造となむ言いける。その竹の中に、もと光る竹なむ一筋ありける。あやしがりて、寄りて見るに、筒の中光りたり。それを見れば、三寸ばかりなる人、いとうつくしうて……
はあ、と人目も気にせず大きなため息を吐くと、角に座っていた翁の眉間に皺が寄った。
人は皆、俺の姿を見て、「かぐや姫の生まれ変わりだ!」「この美しさは、きっと月からいらっしゃった天上人に違いない!」と大いに騒いだ。竹林の中で倒れていた俺を、いま目の前でしかめっ面をしている翁が、竹を取りに行く際に発見したらしい。
何がかぐや姫だ。あんな何百年も前の絵空事を、こいつらは本当に信じているのか。この國に住んでいるものなら大抵の奴はその冒頭部分を諳んじることができるのは、有名な架空の物語だからではないのか。
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