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    @fp72nh

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    FE💍フォガパン ディアアル
    🦄オバ アレオシュ

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    フォガスタのほんのりシリアスな話。
    SS練習リクエストでリク頂いたフォガ×スタです。対等な立場で弱い所を晒し合って支えあえる優しい2人の関係性が尊いなぁって思いながら書きました。
    初めて書くCPなのと、スタかっこいー!!!って思ってる書き手が書いている為思っているものと違っていたらすみません
    別の畑の者ですがフォガスタ楽しかったです!
    リクエストありがとうございました!

    #フォガスタ

    それはまるで嵐のような井戸の中の異世界から帰還して数週間がたった。

    こちら側に帰還したばかりの頃は向こうの世界のあまりの惨状に精神的にも辛い思いをした仲間も多く、中々異世界での話を口に出す事も出来ない状態ではあった。
    それでも時が過ぎていくと各々自分達の中でその時の辛く苦い気持ちを消化していき、忘れてはいけない大切な事は胸に抱えながらもいつもの様な日々を取り戻しつつあった。

    そんな中、久しぶりにフォガート達ソルム王国の面々が宴を開くとのことでスタルークもフォガートが折角声をかけてくれた事もあり宴に参加する事にした。
    宴はフォガートとパンドロが計画を立てる事が多く、ソルム王国内の集落で行われることが多かったのだが今回はきっと異世界での事があったからだろう、ソラネルの広場で仲間や兵達を招いた内輪だけの宴で少しでも話をして張り詰めていたものを解す事が出来たなら…という彼らの優しい気遣いが見えるようだった。
    だからだろう、その意図を察して沢山の人が今回の宴には集まっていた。
    静かに話をしてる人もいれば酒を飲んでいつもの様に盛り上がってる人もいて、各々が日常に戻ってきたのだと実感しながら楽しんでいるのを感じられる光景だった。

    スタルークもまだ少しだけ心を沈み込ませてしまっている何かを引き摺ったままで、今夜は騒いでいる輪の中に飛び込む気にはいまいちなれず
    端の方の椅子代わりの長い丸太に腰掛けて賑やかな宴の様子を遠巻きに眺めながらチビチビと手に持った飲み物の入ったグラスを口に運んでいた。
    そんな宴の賑やかさに思わず溢れ出してしまったため息を漏らしたその時

    「どうしたの?今日はあんまり楽しそうじゃないみたいだね」

    唐突に横から声を掛けられて、スタルークはゆっくりとその声の主を仰ぎ見る。
    スタルークをこの宴に誘ったフォガートが大きな皿を片手に笑顔でスタルークに声をかけると了承も取らずにその隣へと遠慮なく腰掛けた。

    「ひぇ‥!フォ、フォガート王子…今日は誘ってくださってありがとうございます」

    突然詰められた距離に動揺しながらも律儀に誘ってくれたことへの礼を告げるとフォガートは嬉しそうに笑ってスタルークの目の前に小さな取り皿と沢山のフルーツがのっている大きな皿を差し出してくる。
    差し出されるままに取り皿を受け取るとフォガートは小さなトングで挟んだフルーツを山のようにスタルークの持つ取り皿に乗せてくるものだから慌てて片手で持っていたグラスを傍らに置いて両手で落とさないように取り皿を掴んだ

    「わぁぁ!盛り過ぎ!盛りすぎですよ!もういいですよフォガート王子!!」

    思わず大きな声を出して制止する
    そんな慌てた様子を見てフォガートは更に嬉しそうに顔を綻ばせて

    「あー良かった、やっと少し元気なスタルーク王子に戻った」

    その人好きする笑顔を見て、スタルークは異世界のフォガートの壊れた様な残虐な笑顔を思い出して思わず小さく身震いしてしまう。
    そんな様子に目敏く気付いたフォガートは目の前を通った兵士に声を掛けて大皿を持って行ってくれるように頼み、その兵士が宴の中心へと去っていくと先程までの朗らかな雰囲気を一変させて静かな声色でフォガートは呟いた。

    「俺もさ‥正直まだ少し、あの世界での事を引き摺っていたんだ。誰にも言ってないから内緒にしといて」

    宴の喧騒を遠くに聞きながらまるで2人だけになってしまったような静かな空間にポツリと突然落とされた言葉。
    何処と無く暗い影を背負いながら、いつも眩しい位の明るさを放つフォガートの元気なく笑う姿を見たのは初めての事だった。
    そんな姿に、彼も自分と同じように抱えきれないどうしようもない何かを抱えているのだと察して小さく頷いた。

    「‥パンドロ達にも、言えないですよね。僕も誰にも言えなくて、今とても苦しい‥。だからなんとなくわかります、その気持ち」

    臣下にも言えない。こんな風に胸にひっかかっているものは。
    ひっかかっているものが自分でもなんなのかもよく分からなくて苦しい。

    フォガートはパンドロとボネと臣下と言うよりは親友として接していて臣下を語るにはあまりに距離の近すぎる人達だった。だからこそ戻ってきた時のフォガートの臣下2人の落ち込み方が凄まじかったのを思い出す。
    スタルークも臣下を守ると決めていた。臣下を守る為に強い人間でいなくては‥と思っている、だからこそ言えない。自分の様な人間の臣下になると決めてくれた大切な臣下2人を失望させない様にしたいと、その気持ちが彼女達の前で弱さを曝け出す事を良しとしない。

    「俺にも‥もしかしたらあんな一面があるのかな、大好きなみんなを失うような事があれば、俺もああなってしまうのかなって‥」

    怖くて‥と恐れを小さく呟いたフォガートがあまりにも弱っていた事に気付きスタルークは驚愕する。
    あまりに弱々しいその姿に、この人にも怖い事があったのかと思った。
    ーー違う、王子だから弱い所を見せたく無かったのだ。
    だから同じ立場のスタルークならその気持ちが分かるだろうとわざわざ足を運んでそうして目の前にして思わず溢れ出してしまったのだと思うと大人びて見えていたフォガートが年相応に弱い心も持っている、自分と変わらない子供だったのだと衝撃を受けてしまった。
    沢山盛られたフルーツの皿を膝の上に乗せて、スタルークは思わず2人の間に置かれたフォガートの手にそっと自分の手を重ねた。

    「そうはなりません。僕がみんなを守りますから」

    いつも自信が無いスタルークから放たれた強い言葉にフォガートが驚いたように目を丸くしてから、何処かホッとした幼子のように安心した様な笑顔を見せ、その笑顔が見れた事がなんだか少し嬉しかった。そして、縋るようにスタルークの重ねた手に指を絡めて握り返して来た。

    「ありがとう、優しいね。いつまでもグダグダ悩んでても仕方がないって分かってはいるんだけどねー‥向こうの世界の俺の苦しみをついつい考えたりなんかもしちゃってさ」

    「あっちのフォガート王子、怖かったけどそうなるには辛い思いを沢山して来てしまったわけですもんね‥」

    戦いの最中に躊躇いながら弓を向けた時に、スタルークの事が解らないかの様に、もうほとんど記憶が無いのだと笑いながら向こうのフォガートもスタルークへ何の躊躇いも無く弓を向けた。
    顔が笑っているのに目がまったく笑っていない、戦いに悦楽を感じているフォガートを見た時、思わず違うと叫びだしそうになった。

    ――フォガートはあんな目で自分を見ない

    いつも慈しむ様に優しい瞳を向けてくれる。
    眩しい程の笑顔を向けて、陰に隠れてばかりのスタルークを明るい陽の元へと引っ張りあげて、卑屈な事ばかり言うスタルークに真っ直ぐに好きだと告げてくれる。

    スタルークがずっと胸に引っかかってたのは何よりもフォガートの事だったことにその時気付き、胸の中の翳りが祓われ始めた気がした。
    兄や自国の事は、自分が守り抜くと決意を持って戦場に立っている。
    兄も優しい人ではあるが勇敢すぎる程に勇敢な方だ。あっちの兄弟の関係性とは違うとはっきりと言い切れるからこそ何の心配もしていなかった。

    ただ、スタルークを好きだと言ってくれる大好きなフォガートの事が心配で仕方がなかった。
    優しい彼が、殺戮者として暗躍していたその姿を見て傷ついてしまっただろうその優しい心を、眩しさを守りたくて仕方がなかったのだ。

    ストンと落ちてしまった。
    思わずその感情に気付いて呆然としてから頬が熱を持った気がした。
    こんな感情をこんな風に常に自信も持てないような自分に持たれても相手は困るだけだろうと思わずその感情に怖気つく。
    こればかりは向こうの自分が少し羨ましいと思ってしまい、抱いてしまった感情を誤魔化すかのようにスタルークは口を開いた

    「僕は‥、向こうの僕の兄上に対しての態度は許されたものではありませんが‥向こうの僕は自信に満ち溢れてて、僕でもあんな風になれるんだって‥格好良かったなぁって思ってしまいました‥」

    スタルークが僕とは大違いです、と眉を下げて笑いながらいつもの様に自虐的な事を言うとフォガートはその輝く瞳で真っ直ぐにスタルークを射抜いたまま否定する様に首を横に振る

    「俺はそうは思わないけど」

    「――え‥」

    「俺にとってのスタルーク王子は君だけだから、俺が知ってる俺の好きなスタルーク王子は自信が足りなくて、でも誰よりもお兄さんを、臣下を国を大切に想って守るって言う強い意志を持ったとても勇敢で優しい人だ」

    星空の様にキラキラと輝く瞳に真っ直ぐに見つめられたまま、何の迷いも無く告げてスタルークのその少しの翳りを一瞬にして祓っていく。
    そのあまりにも強い光の心地よさに一瞬で掬い上げられてしまう。

    「スタルーク王子は今のスタルーク王子で良いんだよ。卑屈すぎるのはあれだけど、幼い頃から周りにそれだけ比べられながら育ったのに、人に対する性格が捻じ曲がる事もなく真っ直ぐに優しさと意志の強さを持ったまま成長してきた君の方が俺には何よりも格好いいと思える」

    そんな君が大好きなんだよ

    フォガートも翳りの取れた、スタルークの好きな眩しい笑顔と優しい声でそう告げた。
    隠しようが無いほどに顔が熱を持っていくのがわかる。
    きっと今スタルークの顔は真っ赤になっているだろう。暗くて良かったとこんなに感謝した事はない。

    フォガートは自分とは違い友人として、対等な立場として好いているのだと告げてくれているのだからと必死に自分に言い聞かせながら、赤くなってしまった顔を見られないように膝に乗せた取皿のフルーツを食べようとそっちへと自然に思われるように顔を向けた。

    「あ、ありがとうございます‥フォガート王子にそう言って貰えたら少し自信が持てる気がします‥ぁ‥えーと‥喉が乾いたのでフルーツ、いただきますね!」

    そしてフルーツを食べようと動かそうとした手がフォガートと手を隙間無く繋いだままなのに気付き思わずスタルークは叫びながら手を離した

    「わぁぁぁぁ!!!すみません、すみません‥!」

    「え、今更?面白すぎでしょ、スタルーク王子」

    なんて大胆な行動をしてしまったんだ!
    そんな風に思いながらもうどうしようも無いほどに顔が熱を持っていくのを止められなくなってしまう。
    楽しそうにフォガートは声を上げて一通り笑うと、スタルークの隣から立ち上がり晴々とした表情で大きく伸びをするように両手を空に向かって伸ばした。

    「ありがとうスタルーク王子、なんだか‥凄く空が輝いて見えるようになった」

    輝いて見えるようになってしまったのは僕の方だと、そう思いながら見上げたフォガートの目が後ろに輝く星々に負けない程に輝いて見えてしまう。

    対等な立場で弱味を晒してくれた彼が好きだ。
    僕を卑屈にさせるものから掬い上げてくれる優しい彼が好きだ。

    溢れそうになる言葉を懸命に堪えながらカラカラに乾いた喉を潤す為にフルーツに齧り付いた。
    そんな姿を目を細めた優しい表情でずっとフォガートが見ているから何だか段々と居た堪れない気持ちになったその時、宴の中心で音楽が鳴り響いてみんながその中心で踊り出した。

    「あ、フォガート王子、パンドロ達も踊り始めましたよ!」

    これ幸いとばかりに指を差して教えると、その光景にフォガートは楽しそうな笑顔を浮かべ

    「えぇ!?ずるいよー!俺も参加してくる!‥と、その前に俺も喉が乾いたから‥」

    そう言って振り返ったのでフルーツの乗った皿を差し出そうとしたスタルークに影が覆い被さって、え‥?と思った瞬間には唇に柔らかな感触が押し当てられていた。
    その瞬間がまるでスローモーションの様にスタルークには見えていた。
    端正なフォガートの顔が差し出したフルーツには目もくれずに近づいて、視線を交わらせたまま唇を合わせてきたのだ。
    驚きに目を溢れそうな程に見開いたスタルークの真っ赤な瞳を見つめながらフォガートは目を細めて笑う。
    スタルークの唇についた果汁が熱い舌で舐めとられて、すぐに合わせた唇は離れていった。
    満足そうに自分の唇も舌で舐めとったフォガートの大人びた笑顔に、キスをされたのだと気付いてスタルークは呆然と固まってしまう
    こんな場所でそんな事をされて、誰かが見ていたらどうするのかと慌てて周りを見遣るがみんな踊り楽しんでいるその光景に夢中になっていてこんな端の方で行われたことになんて誰も気付いてなんかいなかった。
    敢えてこのタイミングを狙ったのだとフォガートの笑顔を見て察すると一瞬にして顔が真っ赤に染まった。

    「俺、スタルーク王子が本当に好きだよ、また優しくしてよ」

    そんなスタルークの様子にまるで本当に愛を告げるかの様にうっとりとした表情を浮かべて離れると、またね、と固まったままのスタルークの右手を持ち上げてその手の甲に口付けを落とし、そのまま宴の輪の中へと走り去ってしまった。

    弱々しい子供のような姿を見せたと思ったら、いつもの眩しい姿を見せられて、そうして格好良すぎる男の顔と嵐の様にくるくると変わる姿に翻弄されてしまった。

    そうして、唇に押し当てられた柔らかな熱を思い出し





    「わあああぁぁぁぁぁ!?!?!!!!!?」





    混乱して思わず口から出てしまったスタルークの叫び声は宴の喧騒を上回るものだったらしい。




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    それでも時が過ぎていくと各々自分達の中でその時の辛く苦い気持ちを消化していき、忘れてはいけない大切な事は胸に抱えながらもいつもの様な日々を取り戻しつつあった。

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