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    723

    @fp72nh

    文字書き。
    FE💍フォガパン ディアアル
    🦄オバ アレオシュ

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    723

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    ディアアル。仄暗いディアアル。リクありがとうございます。

    ブロディア国内の暴動に巻き込まれ、花の毒で一時的に目が見えなくなったアルを王城内でディが囲ってしまいたいと思ってる話。

    もうすぐ完成するので完成したら支部に上げます。
    R-18の予定。
    圧倒的光属性のアルにめちゃくちゃ焦がれてるディの構図が好き過ぎて夜も眠れません。

    #ディアアル

    ローレンティアの誘惑 国から火急の知らせが届いたのは、リュールが仲間を連れて異形兵の掃討へと向かったばかりの昼時だった。
    慌てた様子で兵士から書簡を受け取ったディアマンドは王城から届いたそれに目を通して段々と顔を険しくしていく。
    王城から遠くない街でディアマンドが王位に着く事に反対している貴族を中心に暴動が起きているとの知らせだった。
    中心となっている貴族は何度もディアマンドに書簡を送ってきていた貴族で戦いが終わるまではと曖昧な返答を返していた自分にも非はあるだろうとその街へと足を運んで直接その貴族と話をする事にしたディアマンドは書簡を持ってきた兵にその旨を王城に伝え、騒動となっている街へも早馬を頼んだ。
     急ぎ出て行く兵を見送ると部屋着からいつもの戦いに赴く時の服に着替え剣を手にすると、急いで向かおうと自室の扉を開けた所で丁度ディアマンドの部屋の扉をノックしようとしていたアルフレッドと鉢合わせた。

    「今日はディアマンド王子は休息をと神竜様に言われていたはずだと思ったけど、何処かへ行くのかい?」

    小首を傾げたアルフレッドに問いかけられ、そういえば最近は一緒に戦闘へと赴く事が多かった彼も今日は神竜様に休む様に言われていたな、と思いながらもいつもの様に鍛錬かお茶に誘いに来たのだろうアルフレッドに申し訳なさそうに告げた。

    「ブロディアの街で問題が起こってしまってな、それを収めに行く事にしたんだ、何か誘いに来てくれたのにすまない」

    その言葉にアルフレッドは目を丸くしてディアマンドを見上げ、1人で行くのかと問うてくる。

     今日は臣下の2人も、スタルークもリュールと異形兵の掃討の方へと足を運んでいた。
    正直スタルークがこの場にいたら何がなんでも自分が行くのだと言って聞かなかったと思うからそれは良かったとは思っている。これはディアマンドに対する反乱なのだから自らの口で納得してもらうしかないのだと思っていたからだ
    早馬を飛ばしたから、王城の兵が護衛の為に向かっているだろう、だから1人で行くが大丈夫だと返すとアルフレッドがとんでもない事を言い出した。

    「僕も同行してもいいかい?不戦協定を結んでいるんだ、同盟国であるブロディア国内の抱える問題や街や人々を僕もこの目で見ておきたいんだ。何か将来的に助けになれることがあるかもしれない」

    アルフレッドの申し出は不安定な国内の情勢からとてもじゃないが認められないものだった。
     父が崩御して次の王となるディアマンドに国民の大半が期待と共にこの戦いが終わり次第王の座につくのを待ってくれている。
    しかし間違った情報ではないが、ディアマンドが武力以外で国を導き豊かにして行く方法を模索していると吹聴して回っている者がいるようで、一部の貴族から反発の声が上がっているとの知らせを常に受けていた。
    その大半は戦に携わり利益を得てきた者達ばかりで戦が無くなることは彼等の収入へと直結する事となるのだから相手方もそれは必死で手段を選ばない行動をとる可能性がある事から用心するに越したことは無い。今回の貴族もそうだ。
    だから万が一の事を考えると、この時期にアルフレッドを連れて街へと足を運ぶ事は避けなければいけない

    「この戦いが終われば、お互いに中々足を運ぶ事も出来なくなるだろう?暢気なものだと思うかもしれないが大切な友人である君の治める国をこの目に焼き付けておきたいんだ。勿論、ブロディア国内が不安定なのは知っている」

     その申し出を断ろうと口を開いたディアマンドにその先を言わせない様にアルフレッドは尚も必死に食らいついてくる。
    知っていながら何故同行しようと言うのかと困ったように眉を下げながら溜息を漏らしているディアマンドが折れたと思ったのだろう、アルフレッドはいつもの様に朗らかに笑いながら

    「僕だって君に負けず劣らず強いだろ?だから自分の身は自分で守れる。勝手についていくんだ、だから行ってもいいだろう?」

    アルフレッドの腕は勿論認めている、ちょっとやそっとのことでどうにかなる様な人ではない。
    ここで断ってはその腕を信用していないのではないかと思われてしまうだろうしこの様子では本当に勝手についてきてしまうのだろうと思って、必ず危険を感じたら首を突っ込まずに引く事を条件としてディアマンドはアルフレッドを連れて問題の街へと足を運ぶ事にした。


     フィレネの王族を連れて来たとなれば彼等の感情を逆撫でしかねないとアルフレッドはフードの付いた服を纏いその身を隠してディアマンドの護衛のように振る舞いながらブロディアの街を訪れた。
    突然護衛の兵士に囲まれた王子が訪れた事に街の人々は驚いていたようだったが件の中心となっている貴族は先に訪れていた兵達に威圧されてしまったのか想像よりも随分と大人しかった。意外そうな顔をしたアルフレッドに、あの男は度々対話を望んでいたのだがそれを避けてしまっていた事が良くなかったんだと説明しながら招かれるままに屋敷の中へとディアマンドは兵を連れて入っていった
     さすがにその場に他国の王子であるアルフレッドが入るわけには行かずに入り口で他の兵と共に待ちながら、街の様子を見渡した。
    暴動が‥という話だったが街の人達はほぼほぼあの貴族と考えが同じと言うわけではないようだった。
    こんな騒動を起こして、モリオン様や王子に申し訳ないと話す人々の声が聞こえた事にやはりブロディアの民だってほとんど皆良い人ばかりだとアルフレッドはフードに隠れた顔に笑みを浮かべた。

     スタルークと友好関係を築いているセリーヌが、ディアマンドが王位につく事を反対している貴族の過激派達がディアマンドに何かするのではないかとスタルークが心配していると言う話を聞いていた。
    アルフレッドが聞いた話はディアマンドが言う様な生易しいものではなく、その命を狙う脅迫めいたものが送られてきたりと穏やかではなかった。
    だからこそ1人で向かうのだと言うディアマンドに不安が募って他国の事に口を出すべきではないと分かってはいても純粋に友として心配し、強引に同行してしまった。
    スタルークがセリーヌを信用して零した話をアルフレッドが漏らすわけにはいかない。ついて行く言い訳に無理があったかな、と思いながらもディアマンドがこれから治めていく彼が守る民達がいる場所を見てみたかったのは本音だ。
     もしこの戦いや、これから先‥予想もつかない何かで命を落としてしまえば見てみたかったと後悔する自分がいるのだろうとアルフレッドは分かっていた。
    手に持った槍を思わず強く握り締めた時、不意に視界の端で何かが動いた気がした。
    ――今、隣の家の屋根に何か‥
    目を凝らして確認しようとした時、屋敷の入り口からディアマンドが出て来たようだった。
    自分を呼ぶ声が聞こえて振り返ろうとしたアルフレッドの視線の先に、弓を構えた人物が屋根の上からディアマンドを狙っているのを見て考えるよりも先に動いた身体がディアマンドの方へと駆け出していた。

    「ディアマンド王子‥!!!」

     それと同時にヒュンッと音を立てて矢が放たれて周りの兵達もやっとその状況に気が付いた様だった。
    ディアマンドが剣の鞘に手を掛けていたがそれよりも先に動いたアルフレッドの方が早かった。
    矢の進路に立ち塞がるとその矢を叩き落とす為に槍を振った。
    金属音を立てて槍に当たった矢の先には何か袋のようなものがついていて、アルフレッドがそれに気付いて目を見開いた時にはもう遅く、当たった槍がその袋を裂いて中から溢れた黒い粉がアルフレッドを包む様に舞い上がってしまう。

    「アルフレッド王子!!」

    毒かもしれないとその粉を吸わないように咄嗟に口を覆いながら屋根の上の人物を見遣ると兵達がその人物を取り押さえているようだった。
    それを見届け安堵したその瞬間、視界がぼやけ両目に針で刺されているような激痛が走った。
    その痛みに顔を押さえて膝をついてしまったアルフレッドの肩を駆け寄って来たディアマンドが膝をついて揺さぶりながら俯いてしまった顔を覗き込んだ。

    「アルフレッド王子‥!!大丈夫か‥!?」

    「ぁ‥痛‥、痛い‥、目が‥ッ‥」

     両目を掌で押さえて震えながら激しい痛みを訴えているアルフレッドの尋常ではないその様子にディアマンドは顔を青褪めさせて、傍にいた兵に医者を手配するように頼むと身体を強張らせ震えたままのアルフレッドの身体を抱き上げて貴族の屋敷の中へと駆け込んだ。




     アルフレッドが浴びてしまったのは植物の茎から採取出来る液で作られた毒粉だった。
    毒性が強く、下手をすれば失明の可能性がある危険なもののようだったが処置が早かったのが幸いし、数日は解毒剤を服用しながら様子を見る事となった。
    光が刺激になってしまう恐れがあり、両目に包帯を巻いたアルフレッドを連れてディアマンドは神妙な面持ちでブロディア王城へと帰還した。
     痛みで気を失っていたアルフレッドが貴族の屋敷で意識を取り戻した時、もう既に包帯を巻かれて真っ暗になっていた視界だったのに取り乱す事もせずに第一声からディアマンドの身を案じた事に動揺してしまった。
    探す様に彷徨う手を取って取り敢えずアルフレッドの命が無事だった事に安堵してその手を両手で包んで額に当てると、危険な目に合わせてしまった事への後悔で震えそうになっている手を彼は優しく握り返してくれた。

     王城内のディアマンドの私室へとアルフレッドの手を引いて連れてくると、寝台の上に腰掛けさせる。
    見えていないアルフレッドの前に跪いて、身に付けていた装飾品や身を隠していたものを脱がして楽な格好にしてやりながら

    「連れてくるべきではなかった‥」

     ディアマンドは心底後悔している様な低い声でつぶやいた。
    その声を聞いてディアマンドのいる場所を予想しながら伸ばされた手が、髪に触れて口元に笑みを浮かべながら優しく梳く様に髪を撫でてくる

    「僕は君を守れたのだからついて来て良かったと心から思っているのだけれど」

    「君は‥っ!!もしも失明してしまえば王位につく事も出来なかった‥!最悪私の国の民がした事で大切な友人を、フィレネ王国の大切な君を目の前で失う所だったんだぞ!」

     ディアマンドを助けられた事に満足している様にいつもと変わらない明朗さで言ったアルフレッドを咎める様に思わず声を荒げてしまう。
    痛いと苦しんでいたアルフレッドが気を失った時の恐怖は酷いものだった。
    こんな風にアルフレッドを、大切な人を失うなんて事があっていいものかと震えが止まらなかった。
    今話せているだけでも神に感謝しなければならない程に奇跡な事なのに、彼は自分の命を軽んじてディアマンドを守れた事に満足している。
    それをディアマンドが望んでなどいないというのに

    怒鳴る様に言ったディアマンドに、彼はふむ‥と考える様に首を傾げると

    「全く同じ言葉を返そうか?ディアマンド王子が失明してしまえば君は王位に付けなかっただろう?そしたら第一王子同士として末長くと約束したのに果たせなくなってしまう。君を失いたくなかったから、良かった、あの場所に居れて」

     その言葉に唖然としてしまう。これではこの話は永遠に終わらない。アルフレッドは心から良かったと言ってこんな状況にも関わらず本当に微笑んでいるのが伝わってくる。
    愚直な程の真っ直ぐさが眩しくて、その眩しく輝きながら細められる瞳を見れない事が悔しくて、ディアマンドは寝台に座るアルフレッドを優しく抱き締めた

    「君は‥‥」

     そのまま何も言い返せなくなってしまい黙ってしまったディアマンドの背中に腕を回して、ポンポンと叩きながらアルフレッドは笑う。

    「大丈夫、僕は意外と運はいいんだ。それに花が好きだからね」

    その花が僕から光を奪うなんて有り得ないさ、と何の根拠もない様な事を言い放つ彼を抱き締めたまま、自分の方が慰められてしまっていることに気付き唇を噛んだ。
    黙り込んでしまったディアマンドを慰めるようにその広い背を撫でる優しい手は止まらない。
    そうは言っても、見えない事に不安はあるだろう彼に気を遣わせてしまった事に小さく溜息を漏らすと、ディアマンドは抱きしめていた体を離し、包帯に覆われている瞳を見据えながら口を開いた。

    「すまない‥、ソラネルには早馬を飛ばした。目が見えなければ移動もままならないだろう。せめて見える様になるまでブロディア王城で‥ここでこのまま治療を続けさせてほしい。私が君の目となる。だから‥」

     危険な目に合わせてしまったブロディア国内でアルフレッドを預かる事に、フィレネ王国の人達は良い顔をしないかもしれない。
    ソラネルにいた方が安全だと言うのも理解はしている。
    だけれど、自分を守る為にその身を差し出して傷付いてしまったアルフレッドを他の人の手に委ねる事をしたくなかった。アルフレッドの手を握り懇願する。
    少しだけ黙り込み、考える様な素振りを見せてからアルフレッドは口元に笑みを浮かべてすんなりと頷いた。

    「君が、暫く僕の目となって傍にいてくれるのならこんなに心強い事はないね」

    ディアマンドが抱いてしまっている罪の意識を少しでも軽くしようとしてくれているのだろう。快くその願いを承諾してくれたアルフレッドの手に額を寄せて感謝を伝えると、側近達にその旨を伝えてくる、とディアマンドは立ち上がった。

    「今日はもう日が暮れているのだろう?僕は大丈夫だからディアマンド王子も自室に帰って‥」

     色々な事があったのだから自室でもうゆっくり休んでほしいとそう伝えたのだが、ディアマンドは振り返って首を傾げた。

    「ここが私の自室で、アルフレッド王子が居るのは私の寝台の上だ。君から目を離す訳にはいかないだろう?」

    当たり前のようにさらっと言われた言葉にさっきまで余裕ぶって笑っていたアルフレッドの方が今度は慌ててしまった。
     客間か何かだと思っていた。王城内での自室だなんて、最もプライベートでそして最も落ち着ける場所で、もしかしたら重要機密があるかもしれないような場所に他国の王子を容易く招き入れるなど思ってもいなかったからだ。

    (目が、見えないからだろうけど‥)

    そう思って何も見えないから許されたのだろうと理解した。目が見えていれば決して立ち入ることは許されない場所なのだから
    ホッとしたような、少し苦しい様なよくわからない感情にアルフレッドは気付かれないように小さく手を握りしめた。

    「すぐに戻るつもりだが、先に休んでいてくれ。何かあれば外に兵がいるから遠慮なく声をかけて大丈夫だ」

     気配が遠ざかる、恐らく部屋の入り口から話しているだろうディアマンドに礼を言い頷くと、扉が開いて閉まる音がする。
    そうして、足音が遠ざかっていきディアマンドがいなくなり静まりかえった部屋の中で小さく息を吐き出した。
    人の気配がなくなった途端に目の前の暗闇が唐突に不安になってしまったからだ。
    さっきはあんな風に言ったものの、本当はこの目が本当に回復するのか不安な気持ちがある事は拭えない
    ディアマンドを守る事が出来て良かったと心から思いながらも、これが原因でこの地の平和を守っていくその未来で彼の隣に立つその権利すら無くなってしまうことだけは嫌だった。
    みんなの笑顔を見ることも、花や木々が風に揺れる美しい風景を眺めることも出来なくなってしまう。
    どうにか、見える様になってくれと包帯の上からその目に震える手で触れて心の中で祈った
     そのまま、起きていても不安に苛まれるだけだから寝てしまおうとディアマンドの寝台に横になり、掛け布を手探りで手繰り寄せ自らの体を包み込んだ。
    手触りの良い上等な絹の掛け布に顔を埋めると、見えない事で他の感覚が鋭くなっているのかさっき抱き締められた時と同じ香りに体を包まれる。
    その香りに安心感を覚えると無意識に力が入っていたようで身体から力が抜けていく感覚がした。
     体が疲弊していたようで、アルフレッドはあっと言う間に眠りに落ちてしまった。
    うつらうつらと夢現の中、不安で冷たくなっている指先を温かなもので包まれる。その優しい温もりにホッとしたように息を吐き出しながら、目の前にも同じ温もりを感じてそっとその温もりへと擦り寄った。
    とても安心する温もりと香りがアルフレッドを抱き締めるように優しく包み込むのを感じ意識が覚醒していく。
    その腕の逞しさに覚えがあった。

    (ディアマンド王子‥戻ったのか‥)

    彼の寝台なのだから一緒に寝る事になるのはわかってはいたが、きっと広い寝台だろうにこんな風に寄り添っているのは何故だろう、とぼんやりと考え声を掛けてみようかと思ったが、アルフレッドが起きていると分かれば折角休める時間が訪れたディアマンドが気を使ってしまうのではないかと思ってしまう。
    それなら、寝たふりをしているのが一番だと結論付けた。
     暫くアルフレッドを抱き締めたまま、もぞもぞと寝るのに落ち着ける体勢を模索していたようだったがそれから動かなくなった事から取り敢えず落ち着いたのだろう。
    むしろくっついているから寝づらいのでは‥と思った時、突然優しい手で前髪を撫でる様に持ち上げられ顕になった額に柔らかな感触がした。

    (‥‥え‥)

    動揺に漏れそうになる声を堪え腕の中で寝たふりをしていると、ディアマンドも疲れていたのか直ぐに寝息が聞こえてきて、思わずホッと小さく息を吐き出した。

    今、額に口付けされた‥のだろうか‥

     寝息だけが聞こえている中で、なんでディアマンドはそんなことを‥?と考えてみる。
    親愛や友愛を表現するにしても口付けはする事はほとんどない。
    手の甲になら信頼や忠誠の意味でする場合もあるだろうが‥額なんて、そんなのまるで‥
    そう考えた所でアルフレッドは、まさかね、と一瞬過った考えを否定した。
    疲れていただけだ。平和な未来の為に、同じ立場から世界を見る事の出来る立場を持っている大切な友人だ。
    その友人が命の危機に晒されて気持ちも少し滅入っていた事だろう。明日以降の動きによっては、フィレネ王城へも訪れなければならなくなるかもしれない。
    アルフレッドが個人で大丈夫だと言って済む問題ではなくなるかもしれない。
     勝手についてきたのにこんな事になって申し訳ない気持ちと、一緒にこなかったらディアマンドがその毒を浴びていたかもしれない恐ろしさに一緒に来たことは間違いではなかったと思う気持ちと半々だ。
    疲れて、なんとなく人肌に縋ることだってあるさ。
    そう思いながら、目の前で眠っているディアマンドのその寝顔を見る事が出来ないのがなんだか残念で、アルフレッドももう眠ろうとその腕の中、ディアマンドの心音を聞きながら再び意識を暗転させた。

     元から、眠りは深い方ではない。
    寝台で眠っていると幼い頃に病弱で寝台から出れなかった辛く苦しい日々を思い出したり、夢にみたりする事が多々あったから。
    この戦いに参加する様になって、自分ではまだまだ戦えると思っているのに時折痛む胸と呼吸をうまく出来なくなる時があった。自分の思いとは裏腹に体が悲鳴を上げているのだとそれを受け入れたくなかった。
    そうすると、眠って夢を見て苦しい思いをするのならば少しでも役に立てる様に‥と早朝から鍛錬をするようになってソラネルに来てからはそんな生活のせいで何処でも眠れるようになった。一瞬の浅い眠りしかしないのだから。
    それなのに、アルフレッドはディアマンドが寝台から出たのにも気付かない程に久々にぐっすりと辛い夢を見ることもなく眠っていた。その腕の中で。
     朝の気配を感じて目が覚めると、隣にはもう誰もいなくて、手探りで触れた敷布が冷たくなっていることから寝台を出てかなりの時間が経過している事に気がついた。
    外から聞こえるのはいつものように日が昇り始めた頃の鳥の声ではなく、太陽が昇りきってから鳴く鳥の声が聞こえてどれほど深く眠っていたのかと動揺した。
    動揺して、喉がカラカラなのに気づいて、寝台から降りようと起き上がって手探りで寝台から落ちない様にモゾモゾと動いた時、その音に気付いて誰かが部屋に入ってきた。

    「おはようございます、アルフレッド王子。目覚めましたら身支度を手伝う様に仰せつかっておりますのでお手伝い失礼致します」

     ディアマンドの側近だと名乗った男が明るく声を掛けて世話を焼いてくれた。
    グラスに注いだ水を手渡してくれて、身支度を手伝ってくれる。身支度が整うと、その後に医者が診にくることになっているらしく、部屋を移動する事になった。
    差し出してくれた手を握り、ゆっくりと歩いてくれる側近に案内されるままに別部屋へと移動すると、両手をとって椅子に座らせてくれた。
    こうして誰かの手を借りないと移動すら出来ない事を申し訳なく感じながら、ディアマンドは何処へ‥?と問いかける。

    「ソラネルから、神竜様とフィレネ王国のセリーヌ様がスタルーク様と一緒にいらっしゃってまして、今此度の件の詳しい話をしておられます」

    「――!それは、僕も参加しなければいけない話だろう?!」

     自分からも話をしなければディアマンドの事だ、アルフレッドが強引についてきたなんて事は言わないだろう。
    全てディアマンドが悪い事になってしまう
    勢いよく椅子から立ち上がったアルフレッドを側近が慌てて引き止め再度ゆっくりと椅子に座らせた

    「それは、今から医者に診てもらい王子の目が必ず回復するという確証を得てからです。貴方様の感情よりも事実が優先されるお立場なのですから」

     確かに、アルフレッドが何を言ってもブロディア国内の暴動に巻き込まれたアルフレッドが万が一にもこのまま視力を失い、王位に着くことが叶わなくなってしまえばその事実に国民感情は決して穏やかなものでは済まないだろう。
    下手をすれば敵対する可能性すら否めなくてゾッとしながらアルフレッドは側近の言う通りだと、俯いて早く医者が到着する事を願った。

     ブロディア王城内の謁見の間にディアマンド達はいた。
    テーブルにはディアマンドとスタルークが並んで座り、その向かいにはリュールとセリーヌが難しい顔をして座っていた。
    大凡の状況をディアマンドから聞き終え、アルフレッドの身内であるセリーヌは少しだけ俯いて黙ったままだった。その様子は取り乱したりなどせずに落ち着いているように見えるが、話終わり黙ってしまったディアマンドとセリーヌを見てスタルークはオロオロした様に2人を交互に見遣っている。

    「‥それで、アルフレッドは今はどうしているのでしょうか‥?」

    その沈黙を破ったのはリュールだった。
     心底心配したように、まるで自分が傷付いてしまったかのように顔を歪ませて訊ねてくるその様子に、リュールが目覚めてから初めて友人と呼べる存在となっただけあって、2人は特別仲が良かったな‥とディアマンドは思いながら、リュールにこんな顔をさせてしまった事も不甲斐なく感じ眉を寄せた。

    「今王城お抱えの医者に診てもらっている所だ」

    ディアマンドがそう答えると同時に、失礼しますと部屋の外から声がかけられて兵士が入ってくる。
    真っ直ぐにディアマンドの所へ向かうと耳打ちをして、それを聞いてディアマンドは立ち上がった。

    「ありがとう。皆すまないが少し待っていてくれ」

    ディアマンドは兵と一緒にその部屋を後にしてしまい、3人だけになった瞬間、スタルークは小さく頭を下げた。

    「すみませんでした。我が国のいざこざにアルフレッド王子を巻き込んでしまい‥、こんな、大変な事に‥」

    その言葉にセリーヌが顔を上げ困った様に微笑みながら首を横に振ってみせる。

    「いいえ、ディアマンド王子は全て自分が悪いのだと仰られていたけれど、お兄様が無理矢理ついていったのだろう事は分かっているの」

    私が、ディアマンド王子の命を狙う脅迫文が届いていると知らせてしまったから‥
    そう言って、セリーヌは再び少し俯いてしまう。
     アルフレッドが、ディアマンドを好ましく思っていた事はずっと一緒に育ってきたセリーヌには良く分かっていた。
    最近のアルフレッドの口からは本人は気付いていなかったかもしれないがディアマンド王子のことばかりだったから。
    それが、セリーヌにはとても喜ばしく感じられた。
     アルフレッドが患っていた病を再発させていたのを知ったのはソラネルに来てからの事だ。いつから再発していたのか、何処か生き急ぐ様に前よりも鍛錬に力を入れ、フィレネの為にと戦闘でも先陣切って突っ込んでいく様な姿を度々見ては不安や心配ばかりの日々を過ごしていた。
    そんなアルフレッドの切羽詰まった様子に、すぐいなくなってしまうかもしれないと恐くて堪らなかった。
    そんな様子を見せていたアルフレッドが、ある日突然柔らかい表情をするように変わったのはディアマンドと鍛錬をする様になり親し気に過ごす事が増えてからだ。
    今まで同じ様な立場で切磋琢磨し合える存在などおらず、世界の命運を賭けた戦いの最中とは言え、同じ平和を目指し戦う隣国の第一王子と共に過ごせる事が嬉しかったのだろう。
    とても勇敢で王になるには優しすぎる方なのだと言う事は、アルフレッドの話や、仲良くしているスタルークの話でも充分に解っていた。
    きっと、アルフレッドが傷付いてしまった事を全て自分が背負おうとしてしまっているのだろう。
    アルフレッドの視力が戻るまで、ブロディア王城でディアマンドに任せて欲しいとの申し出もセリーヌ個人としては断るつもりはない。
    けれど万が一にも、もう視力は戻らないとなってしまえば国に報告しなければならない。








    中略(ここは本編で)








    「誰だ‥!?離せ‥!」

     右足首を強い力で掴まれて、もう片方の足で蹴り飛ばそうとするがその足も寝台に押し付けられてしまう。
    慌てて体を起こそうとするが掴まれた右足を持ち上げられ、見えない事でバランスが上手く取ることも出来ずに柔らかい寝台へと再び仰向けに沈んでしまう。
    その間も足首は強く握られたまま逃げる事は叶わずに、ここでこの侵入者が武器でも持っていれば‥とゾッとしながら何かその拘束を逃れる手立てが無いか寝台の上を必死に手で擦って投げられる物がないか探したが広い寝台では何も見当たらない。
    見えなければ、こんなにも簡単に押さえ込まれ、抵抗する術すらなくなってしまうのか
    そんな風に絶望していると、持ち上げられた足の剥き出しになっている指を生暖かく柔らかい物が這う感触がした。

    「――っ!!?」

     ピチャっと濡れた音が響き、鋭くなっている自らの感覚で足の指を舐められているのが分かりアルフレッドは一気に肌を粟立たせた。親指を口に含まれ、舌で優しくなぞる様に愛撫されながら足首を掴んでいる手の指でくすぐる様に足の裏を刺激される。
    そんな事をされるなんて思わなかった。驚きに声が出せずに、口をはくっと動かしただけのアルフレッドはその性感を引き出していく様な動きに自分が今から何をされようとしているのかを察した。
    その間も別の指を口に含み、指を広げられ指の股をしゃぶられる。
    そのくすぐったさに足がピクリと震えてしまうのは相手にも伝わっているのだろう。
     声を出せば部屋の近くにいるだろう兵が助けにきてくれるだろうにさっき叫んだ時も誰も来なかった。
    そも、王城の奥にあるだろう王となるべき人物の私室に入り込める様な人物なのだから相当な手練れだ。
    ディアマンドの命を狙う脅迫文の話を思い出す。考えたくもないしそんな簡単に守りの堅い要塞のようなブロディア王城が‥とも考えにくい
    けれど、もしかしたら兵や、城にいる筈のディアマンドも襲われたのかもしれない。
    そんな最悪な状況を想像してしまい、アルフレッドは血の気が引いた。
    助けに来てくれるだろう、じゃない、もしもそんなことになっているのならディアマンドを助けにいかなければいけないのに‥!
     足から唇が離されて、大人しくなったアルフレッドが諦めたと思ったのか足を押さえ込んでいる手の力が緩まり、寝台がギシッと音を立てた。
    アルフレッドに覆い被さろうと寝台へと乗り上げたのだろう。
    そうして、足から手が離れた瞬間をアルフレッドは見逃さなかった。
    油断していたのだろう、突然の事に相手が驚く程にいきなり我武者羅に暴れた。
    呼吸音で大体の顔の位置もわかり、振り上げた手でその人物の横っ面を思い切り叩き、怯んだ隙に体を蹴り飛ばして寝台から落ちそうになっているだろう相手の下から這い出した。
    転がるように出入り口に近い方から寝台を降りると直ぐに立ち上がって入り口があるだろう方へと手を伸ばしながら前へと進む。
    扉を開けた時に、血の匂いがしない事を祈りながら進み、やっと扉のノブに手が触れた時に後ろから侵入者の腕に囚われて寝台の方へと引きずり戻されてしまう

    「やめろ‥!離してくれ‥!ディアマンド王子達に何かしていたら僕が許さない‥!!離せ‥!」

    半狂乱になって叫ぶ。

     君が好きだ、そう優しく言ってくれたその顔を見たかった。
    もう一度ちゃんと、きっと優しく笑っているだろう顔を見ながらその言葉を聞いて、ちゃんと見える様になった瞳で真っ直ぐにその瞳を見つめ、胸を張って隣に立てる状況で、僕もだよ、と言って笑い返したかった。

    「ディアマンド王子‥っ!!ディアマンド王子!!!」

    何度もその名前を呼んだ。助けに来て欲しいなんて考えている訳じゃなく、ただディアマンドに無事でいてほしいその一心で。
    必死に扉の方へと伸ばした腕を後ろから掴まれて、そうしてその手を優しく包み込まれたと思った瞬間、アルフレッドを引きずり戻そうとしていた相手がもう片方の手を腰に回して抱き寄せてきた。

    「え‥」

     驚いて冷静になると、その腕には覚えがあった。
    取り乱していたし、近付いていなかったから分からなかったがこの人物が纏う香りも知っている。
    手の温かさも、腕の逞しさも、香りも、いつも眠る時に感じている物だった。

    「ディアマンド‥王子‥?」

    落ち着きを取り戻して、信じられないと言う様に問いかけると肩に額を乗せてきて頬に当たる髪の感触がディアマンドそのものだった。

    「すまない‥アルフレッド王子‥」

    そうして耳元で聞こえた声にどうして、と思うよりも先に一気に安堵感に襲われる。足が震え出して力が抜けそうになってしまった。
    そんな様子に慌てたように体を離したディアマンドに向き直ると、冷たくなった手で髪に、頬に触れその存在をもう一度確認してからアルフレッドは正面からディアマンドの首に腕を回して抱きついた

    「良かった、無事で‥本当に良かった‥っ」

    ディアマンドが無体を強いた事を責めることもせずに震える声でただ無事を喜び噛み締めるようにそう言われて、ディアマンドは自分がしたことへの罪深さに打ちのめされながらも震えるアルフレッドの体をそのまま横抱きに抱き上げてすぐそこの寝台へと運んだ。




     目が見えなくなってしまっても、彼はどこまでも真っ直ぐで眩しかった。
    こんなにも誰かを尊く愛しく思った事などなかった。
    彼が隣で一緒に平和に導こうと言ってくれれば、何処までも一緒に歩いていけると思っていた。
    けれど、こうしてアルフレッドの目が見えなくなってしまい、国内で起こってしまった事への責任感も勿論あったが、そんな状態の彼を誰かに任せたくないと思ってしまった。
     一歩間違えれば死んでいたかもしれない。戦場に立つと言う事は、こういうことなのだ。
    一瞬の油断で大切なものをあっという間に理不尽に奪われてしまうものなのだ。父の時の様に
    大切な彼まで失くしてしまったら、自分は、それでも剣を振るわなければならない自分は耐えられるのだろうかと突然、怖くなった。
    自分は皆が思う様な立派な王子ではないと思っている。周りは弟王子であるスタルークの方を臆病だと言うが、異形兵となった父と戦う時にディアマンドに背負わせないと自ら前に立った弟の方が強い気持ちを持っている。
     自分はいつまでも、弱い。強くあろうと仮面を被りながら、失う事が怖くて堪らない。
    だから自分の部屋で自分の帰りを待ち、その手を取らなければ真っ直ぐに歩くことすら儘ならなくなってしまった彼に何処かほっとしていた。
    このまま目が見えなければ、アルフレッドをこれ以上危険な目に遭わせる事なくこの城で、この腕の中に閉じ込めて囲っておく事が出来るのではないかと思ってしまった。
    その笑顔を、温かな言葉だけを自分だけに向けて、誰にも奪われない様に、その命を脅かされないように。
    ローレンティアの花の毒の誘惑に惑わされて、花を愛でる様に優しく優しく大切に慈しんでいたかった。

    霞んでいるが形が認識できる様になって喜んでいたアルフレッドを見て胸が痛んだ。
    早くみんなの元へ帰りたい、戦わなければ、と言うアルフレッドにいかないでほしい、ずっと一緒にいてほしいと思った。
    そして思わず、秘めた想いを告げていた。
    目を包帯に包まれている彼の目は見えていた時はいつも雄弁にその感情を語ってくれていた。その目が見えなくて、彼が何を思ったのか分からないまま、ありがとう、と返されたその曖昧な答え

    (あぁ‥アルフレッド王子はもう、この囲いから出ていくつもりなのだな‥)

    私の気持ちを置き去りにして‥

    ドロリと、胸から溢れてくる。それなら、無理矢理自分を刻みつけてしまおうとドロリ、ドロリと暗い感情が溢れて止まらなかった。























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    PROGRESSディアアル。仄暗いディアアル。リクありがとうございます。

    ブロディア国内の暴動に巻き込まれ、花の毒で一時的に目が見えなくなったアルを王城内でディが囲ってしまいたいと思ってる話。

    もうすぐ完成するので完成したら支部に上げます。
    R-18の予定。
    圧倒的光属性のアルにめちゃくちゃ焦がれてるディの構図が好き過ぎて夜も眠れません。
    ローレンティアの誘惑 国から火急の知らせが届いたのは、リュールが仲間を連れて異形兵の掃討へと向かったばかりの昼時だった。
    慌てた様子で兵士から書簡を受け取ったディアマンドは王城から届いたそれに目を通して段々と顔を険しくしていく。
    王城から遠くない街でディアマンドが王位に着く事に反対している貴族を中心に暴動が起きているとの知らせだった。
    中心となっている貴族は何度もディアマンドに書簡を送ってきていた貴族で戦いが終わるまではと曖昧な返答を返していた自分にも非はあるだろうとその街へと足を運んで直接その貴族と話をする事にしたディアマンドは書簡を持ってきた兵にその旨を王城に伝え、騒動となっている街へも早馬を頼んだ。
     急ぎ出て行く兵を見送ると部屋着からいつもの戦いに赴く時の服に着替え剣を手にすると、急いで向かおうと自室の扉を開けた所で丁度ディアマンドの部屋の扉をノックしようとしていたアルフレッドと鉢合わせた。
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