握りしめる 疲れ果てて辿り着いた部屋には、くつろぐ王馬の姿があった。彼の部屋なので当たり前の光景ではあるが、最原は大いに憤った。
王馬の第一声が、言うに事欠いて「おっせー! のんびりしすぎ! 今日終わっちゃうじゃん」というものだったせいでもあるし、冷房の利いた部屋で彼が優雅にごろごろしていたせいでもある。
暦の上ではとっくに秋ではあるが、春と秋が異常に短くなってきたこの国において、九月上旬は夏の気候でしかない。一日中歩き回った最原は、暑さと疲労でへとへとだった。
文句の言葉すら出てこない様子を見て、王馬は嬉しそうに笑う。何を笑ってやがるんだと睨むも、悲しいかな、効果は全くといっていい程になかった。
「こんなに時間がかかるなんて、どこで手こずっちゃったわけ? やっぱり真宮寺ちゃんのところ? あそこはホラー要素も加えてみたから、他とは違ったテイストで楽しかったでしょー?」
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