悲劇の末裔人魚を拾った。
ロードワーク中に、まるで惹かれるように浜辺に降り立った。砂浜でのランニングもたまにはいいかもしれないと思い、少しずつスピードを上げていく。朝の少し冷たい空気と波のさざめきが心地いい。ザッザッと砂を蹴り上げながら、走り続ける。ふと、岩場の向こうに綺麗な金が見えた。朝日を浴びて、キラキラ輝くそれは、人工物というにはあまりにも美しすぎて、それよりも早朝の海に似つかわしくないものだった。
さらにペースを上げて、その金に近づく。少し上がった息、波のさざめき、そして自分以外の息遣い。岩場に打ち上げられたそれは、綺麗な金髪に青いグラデーションの髪をした人魚だった。
「本物はじめて見た……」
人魚は打ち上げられたショックか、どこか怪我でもしているのか意識を失っていた。とりあえず上着のウィンドブレーカーを脱いで、人魚に被せる。ネットで、魚の粘膜は人間の体温でも火傷をすることがあると聞いた。それが本当のことなのかは分からなかったけれど、なるべく肌に触れないようにウィンドブレーカーで巻いてみる。
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