眩しすぎるのは太陽じゃなくて 今日の朝ごはんは私が作った父さん直伝のドードーオムレツと、ルカくんが作ったパースニップサラダにウォルナットブレッド。ウォルナットブレッドは私が食べやすいようにちょっと小さく丸い。しかもほんのり甘い。私の大好きなパン。
二人でキッチンに立って準備をした朝食は簡単なものばかりだけれど美味しい。何より二人で作って、同じものを食べる日々が楽しい。
「ねえメルさん海に行かない?」
オレンジジュースを口に含んだところで突然のお誘い。ちょっと驚いた。
「この前新しい水着、買ってたよね?」
確かに買った。去年貰った水着も嫌いではないけれど、先日タタルさんから譲ってもらった無人島で交易を頑張って頑張って頑張ってやっと勝った水着は上に半袖のシャツを羽織れるようにとセットになっていたから重宝しそうだなあと思ったのは確かだ。普通の水着と違って、そのシャツに合わせたショートパンツもあったから、海に入らないにしても暑い時にはいいかもしれないと思って。買ってすぐにルカくんに見せたのも事実なんだけれど。
私、タンガを買った話はしていない。これまでも一応一般的な水着は買っている。でも私はララフェルだから。他の種族の人みたいな感じにはならないし。それは仕方ないことだし、ルカくんがその辺こだわっていないのはわかっているけれど。でもやっぱりあまり脚とかお腹とかを出したくなくて、見られたくなくて。そういう服はルカくんの前では着ないようにしている。
一緒にお風呂にだって入っているし、夜だって、その。ね。色々あるし、もう私のまぁるいお腹もパースニップみたいな足も散々見られて触れられているから今更だと思うけれど。それとこれは別というか。明るいところで見られるのと薄暗い部屋で見られるのはやっぱり違うし。海なんて行ったらルカくん以外の人が私がルカくんと一緒にいるのを見ることになるわけで。こんな、かっこいいルカくんと、ちんちくりんな私が一緒にいるのを見たらなんて思うかとか考えるとちょっと戸惑ってしまうというか。
あと今までそういう服を着ることがほとんどなかったから純粋に恥ずかしい。
「コルタ・デルソルにする? ミスド・ヴィレッジにカンパニーハウスがあればなあ。あ、シロガネにも少し離れているけれど浜辺があったよね」
私の戸惑いに気付いているのか気付いていて無視しているのか、ルカくんは楽しそうにどこに行くか候補を上げていく。
「それなら、ルカくんの島に行きたいな」
私の島はまだまだ開拓途中だけれどルカくんは私よりも早くタタルさんから無人島を譲ってもらったらしく、色々な施設で充実している。シェルダレー諸島ならのんびりと綺麗な海を楽しめるし、誰の邪魔も入らない。
「島でもいいけれど……いつでもいっているのに?」
確かに動物たちや畑のお世話で毎日島には行っているけれど。遊びに行くのとお世話のために行くのではやっぱり違う。そもそものんびりするためにとタタルさんはあの島を私達冒険者に譲ってくれているのだから、その通りのんびり過ごすことも大事だと思うのだ。
そういったことをルカくんに話せば一応納得してくれた。まあそんなのは建前なのもきっとわかっているのだろうけれど。
「確かに島なら寝る場所もちゃんとあるから、その方がゆっくり出来るか」
「うんうんっ!」
そうだ、コルタ・デルソルだと夜を過ごす場所に少々困るし、他の場所だと「じゃあ帰ろうか」なんてなるし。そこまでゆっくり出来ない。島ならば拠点にベッドがあるし、畑から収穫した食料があるから食事の心配だっていらない。そうじゃなくても私はルカくんに呆れられつつも色々な食材をチョコボ鞄に保管してあるからある程度のごはんなら問題なく作れる。
こんな素敵な場所を提供してくれるタタルさんはやっぱり凄い。
「それじゃあ、片付けたら準備をして行こう」
どの水着を持っていこうか、メルさんなんでも似合うから迷うなあ。なんて言いながら、ルカくんは鼻歌交じりでテーブルを立った。私にはどうやら選択肢はないみたいだけれど、ルカくんがとっても楽しそうだからまあいいかと思うことにして、私も自分が使っていた食器をキッチンの流しへと運んだ。
何故か沢山御着替えを用意して向かったシェルダレー諸島は、本当に天気が良くて。海は勿論綺麗で。敢えていつも行く採集場所には近寄らずに、ただただ青い空と海を楽しんだのだ。海に濡れても温泉があるからさっぱりするね、なんて話していたけれど海辺にいるから結局潮風でべたべたになってしまったから笑ってしまった。
途中案の定雨に降られたりもしたけれど。それでもキャンドルの明かりがあって、ルカくんがすぐ隣にいれば何も問題はなかったし、一晩経てばまたお日様がさんさんと照り付けるいいお天気だったし。
海を堪能をして、ラベンダーベッドにある家に帰る道すがら、タタルさん本当に素敵な島をありがとうと、リンクパールを通じてオールドシャーレアンにいるであろう彼女に何度目かわからない感謝の言葉を伝えたのだった。