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    edanikudk

    @edanikudk

    @edanikudk 帝幻とポメイン

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    edanikudk

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    窓コル(途中)です。告白して振られた窓くん。なのになぜかゆめのさんからデートに誘われて…?

    君とパンダと屋上と屋上
    🎲Sid

     昼休みに、屋上で夢野さんと会う約束をしていた。幸いなことに、天気は晴れ。なんなら昨日から会えるのを楽しみにしていたはずなのに。
     本当に言ってしまっても良いんだろうか。
     自分のしようとしている事で、もしかするとせっかく仲良くなったのに友達でも無くなってしまうかもしれない。
     気弱になってしまうなんて俺らしくないって、そう思ったけど。それだけ夢野さんのことが大事なんだって。 
     だからそれでも良い。もし嫌だと言われたならその時はその時だ。

     無意識に速くなる足で、一段とばしに階段を登りその場所目指した。屋上の扉を開けると、彼の姿はまだそこに無かった。少し、焦り過ぎてしまったかもしれない。
     そう思いスマートフォンの画面をチラリと見ると、約束の時間ぴったりだった。
     落ち着いてよくよく探してみれば――隅の方に置かれたペンキの剥げたベンチに彼の背を見つけ、声を掛ける。
    「夢野さん!」
    「あぁ、おつかれさま」
    「夢野さん。今日のご飯、なんですか?」
    「……お恥ずかしいのですが今日は寝坊してしまって、これだけ」
     そう言いながらガサゴソとアルミホイルの包みを開けると、そこには少し歪なおにぎりが2つ入っていた。
    「朝作ってくるだけでも偉いと思いますけど……」
    「ふふ、ありがとうございます」
     夢野さんはいつものように、俺よりもずっと小さい口でのんびりとおにぎりを頬張っている。
     その様子を見ている間は、少しだけ落ち着いた気分だった。
     俺も横へ並ぶと、タッパーへ適当に詰め込んだ白飯と野菜炒め――これはどちらも昨日の夕飯の残り――を取り出し、食べ始めた。
     けれど、ひとくち食べ進めるに連れて、緊張が戻ってきたみたいでどんどん味がしなくなってきて。

     お互いに食べ終わると俺はポケットから煙草の箱を取り出して、お守りのように握りしめ――立ち上がってフェンスを背に夢野さんの方へと向き直った。
    「どうされたんですか? やけに静かですけど明日は槍でも降るのかな」
     意を決して俺は「あの」と話を切り出す。

    「夢野さん。もし、俺と……。付き合ってくださいって言ったらどうします……?」
    「えーっと……。それは恋人として交際したいというか、そういう意味ですか?」
    「はい」

     少し間があって「それは、できません」と静かに夢野さんが言った。
    「俺は、真剣に……。前に付き合ってた人とはもうほとんど連絡も取ってないし縁も切れてるようなもんだし」
     そう。俺には、付き合ってくれと言われてそのような関係になった人が居た。でも、あるとき突然連絡をくれなくなって――もう数年が経つ。それ以来一度も会っていない――なのに。 
    「駄目です。僕はあなたのお相手をそんなに存じ上げないですが、あなたがまだ少しでもその方を大事に思っているなら。あと、そういうなあなあな気持ちで人と関係を持っても後々良いことないと思いますよ」と言いながら、吸わないうちに半分灰になった俺のタバコをスッと取り上げた。
     夢野さんはそれをひと口吸い、煙をふーと吐くと「動物園にね、行きたいんです」と言う。
    「……夏に動物園すか? なんか暑そうですね」
     そう答えると、夢野さんは「有栖川君、今週末暇ですか? お友達としてならお願いしたいのですが」と少し寂しそうに微笑むのだった。
    「パンダ、見に行きましょう?」
     彼はそう言いながら――半分以上灰になってしまった煙草をコンクリートに押し付け、火を消した。


    動物園デート後
    📚️Sid

    「うぅ……」

     有栖川くんと動物園へ行った次の日――まだ少しアルコールが残る頭で目を覚まし、ベッドサイドに置かれたスマートフォンを見ると昼の12時過ぎ。幸い今日は遅出なので仕事には間に合う。
     再度スマホを確認すると『鍵はポストに入れました』と有栖川くんからのメッセージ通知が入っていた。
    「う……」
     頭と……、あと腰が、痛い。これは、あのアレか。やらかしたのか? 焦って記憶を手繰り寄せながら周りを見回すも、所謂色事的な痕跡はなにも見当たらない。

    *

     よろよろと出社し、共用フロアの自動販売機コーナーへ行くと見知った顔があった。
    「あ、夢野さん。おはよーございマス」
    「おはようございます……」
     一瞬視線がぶつかって、気まずい空気が流れる。
     どう考えても、なにかしらはやらかしているはずだった。まずは聞き出して謝らなくては。
    「あの……昨日……」
    「昨日ですか? あー……」
     夢野さんでもあんな酔い方することあるんですねと言われ「本当に……すみませんでした」と、うなだれながら俺はパックのコーヒー牛乳を啜った。
    「あの後大丈夫でしたか? 痣とかなってません?」
    「えっ……あ……とくには?」
     ちょっと腰は痛むがそこまでではない。不思議に思っていると、なんかすごい転び方してたから、と有栖川くんは心配そうに眉尻を下げた。
    「えっ……。なんだ……、良かった」
     うっかりほっとした声が出てしまい「え?」と不思議そうな顔をされる。
    「あ、いや。その……、最後の方ほとんど覚えてなくて。僕、なんか変なこととか言ってませんでした?」
     そう尋ねてみると彼は「んー。いや、とくには」と曖昧な笑みを返したのだった。

    △ 

    動物園デート後
    🎲Sid

    「今日はありがとうございます、暑い中付き合ってくれて」
     久々に楽しかったなぁ、と夢野さんはジョッキ片手にニコニコしている。すでに何杯かジョッキを開けており、それなりに酔ってはいるようだった。
    「俺も楽しかったです。まじで暑かったすけど……」
     俺は適当に枝豆なんかをつまみながらそう答える。
     むしろまた一緒に行きたいな、なんて思っていて――俺は完全に浮かれていたのかもしれない。
    「あ、何か頼みますか?」
    「ビールおかわり」
    「わかりました。そしたら後は……」
     メニューを見ていると「あのですね……」と、きゅうりの浅漬を箸でつまみながら夢野さんが言った。
    「はい」
    「僕、あなたにひとつ黙ってたことがあるんですよ」
     彼は、きゅうりを自分の取皿に戻すと皿の淵に箸を置いた。
    「何人かに、言ってたんです。一緒に動物園行きたいって」
    「え」
    「あなただけでしたけどね、本当に来てくれたの」

     はぁ? なんだそれ? 俺じゃなくても良かったわけ?
     なんなら週末を結構楽しみにしていた自分がバカみたいに思えた。ていうかそれ、本当だとしても今俺に言わなくてよくない?それとも俺は誰かの代わりってこと?
     一瞬にして、そんな言葉たちが頭を埋め尽くす。
     もしかしたら顔に出てしまっていたのかもしれない。
     彼がハッとして「あ……なーんて、嘘です」と言い繕った。
    「あっ、店員さん! おかわりください!」
     そして気まずくなった雰囲気を誤魔化すように、夢野さんはビールを注文する。それを見るに、もしかして本当の話なのかもしれないと思うとなんだかほろ苦い気持ちが込み上げてきて。
     俺は「ちょっとトイレ行きます」と断りを入れると、急に座り心地の悪くなった椅子から立ち上がる。
     はーい、と答えながら夢野さんは新しく来たジョッキに口をつけていた。

    *

    「夢野さん、飲みすぎですよ」
    「んー…。だいじょうぶ……」
     席へ戻ると、空になったジョッキを手にぼーっとした表情の夢野さんが居て――そろそろ頃合いか、と声を掛ける。
     店員を呼んで伝票をもらい、「ちょっと」と言い残してひとりで会計を済ませた。
     席へ戻り「ヤバかったらタクシー乗り場まで送りますから、そろそろ帰りましょう」とテーブルで寝かけている夢野さんの腕を引く。
     そして乗り場まで肩を貸しながら歩き、タクシーを捕まえて後部座席へ押し込むと、××町までですよね? と夢野さんへ確認し運転手へそのように伝えた。
    「じゃあまた明日、おやすみなさい」
     そう言いながら見送り、ドアから離れようとしたその時だった。
    「有栖川くん……、一緒に乗ってくれないんですか?」
     夢野さんにTシャツの裾を引かれ「いや、俺は方向が……」と断ろうとするが、酒のせいで少し潤んた緑色の瞳にこちらをじっと見られて心はぐっと傾いてしまう。
    「お金は私が全部払いますから、ね」
    「……わかりました、じゃあ」
     (なんだよそれ、断れないだろ……)
     観念して隣へ乗り込むと、彼は「ありがとう」と微笑み、安心したようにうとうとし始めたかと思うと自然に肩へもたれ掛かってきた。
    「狡い人だな……」
     車窓の奥にぼやけて流れる景色を見ながら、俺はため息をつきぼそりと呟いた。

    *
     「お客さん、着きましたよ」という運転手の声でハッとして目を覚ます。いつの間にか俺も眠っていたらしい。
     夢野さんを揺り起こすと、寝ぼけまなこで財布を差し出してくるので料金はそこから支払った。
     行きますよと声をかけ肩を貸しながら外へ出る。

    (略)

     地図アプリを見ると、最寄りの駅はそこまで遠くなかった。早歩きすればまだ電車も間に合いそうだ。俺は玄関へ鍵をかけ、外からポストの中へとそれを滑り込ませた。

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