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    edanikudk

    @edanikudk

    @edanikudk 帝幻とポメイン

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    edanikudk

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    帝幻
    ※違マで猫になる🎲の話
    ※兄、目覚める前

    ギャンブラー、猫になる ヤツはまたふらりとどこかへ行ってしまった。それは仕方のないことで、彼が気高き野良猫であるという事以前に――なぜなら今回は俺がそう頼んだからである。

    *

     乱数のアトリエでミーティングを終えたばかりのことだった。
    テーブルの上のマフィンへ手を伸ばそうとした乱数がふと呟く。
    「……今日のふたりさぁ、距離感やたら遠くない?」
     喧嘩は止めてよね〜と言いながら、彼がこちらをじっと見る。
    「え、いやそんなことは……」
     それを聞くと帝統は小さくため息をつき「……俺、タバコ買ってくるわ」と言って部屋を出ていった。 
     それから1ヶ月経ち、更に半月が経っても帝統は姿を見せず――いったいどこのコンビニまで行ってしまったのやら。

     それは、乱数としばらくチームとしての活動を休止しようかと話し合ったわずか数日後のことだった。
     朝方、玄関の方でガタガタと物音がしている。怪しく思い、そろそろと忍び足で引き戸へ近づく。足元へ小さな影が見え――恐る恐る戸を開けた。
     すると、そこにはなんとちんまりとした黒い毛玉が鎮座しているではないか。
    「え……あの、君はどこのどなたでしょうか」
     ついしゃがみ込んで声をかけると、ヤツはにゃっと小さな声で鳴いた。
     よくよく見ると濃い灰色のような毛で、耳には小さな賽子の飾りが付いている。誰かのいたずらかと可哀想に思ったが、元からそうだったのでは無いかという気がするぐらいなにも不自然なことがなかったし、猫も特段気にしている様子は無いのだった。もしや、あいつの生まれ変わりか? いやそんなバカな。
     とりあえず飼い主は探すとしてだ。なにはともあれ、仕方がない。しばらくこいつを(仮)ダイスと名付けて面倒を見ることにした。要するにこれは小説家のただの気まぐれと好奇心である、と言い訳して。 
    「君、もしかして小生があんなことを言ったからですか?」
     そう呟きながら両手で抱き上げると、猫は欠伸をしながらただうぁーんとだけ言うのだった。

    *

     明け方、久方ぶりに嫌な夢で飛び起きた。額へかいた冷や汗を拭い、隣を見ると布団の上で猫が丸まって寝ていた。そっと手を伸ばし耳の間を撫でると、プスプスという小さな寝息に少し安心する。
     こうなってしまった原因はなんとなく分かっていたのだ。
     でも、申し訳無さと情けないという気持ちとが先に来てしまい彼に本当の事が言えなかった。
     兄の見舞いへ行った日のこと。ベッドの隣へ腰掛けていた時、徹夜明けでついうとうとしてしまいハッとして握った兄の手がいつもより冷たかったこと――本当はなにも心配するようなことはなかったが――ただ怖くなってしまった。そんな折、もしも彼に何かあったとしても自分は結局何もできないし無力だ、という恐れがいつも付き纏う。だから兄も、あの人もいつかは俺の隣からいなくなって、知らない場所で冷たくなってしまうのかもしれない、と。
     こういう負の連鎖のような考え方や思い込みは良くない、そう思う程にどんよりとした澱が頭の中を支配する。早いうちに家へ帰って、暖かくしなくては。
     足を進めようとするのになぜだかうまく歩けず、花壇の縁へ腰掛けると――都会には極端に座るところが少ない――モヤモヤとした何かを掴むように手のひらを握ったり閉じたりする。俺はこの、身体から魂が1センチ程離れているような感覚がとても苦手だ。

     帝統に触れられないと分かった時、それが自分のことだと言うのに驚きを隠せなかった。
     君に触れていたいという気持ちとは裏腹に、そこから順に冷たくなってゆくようで――それと同時に、恐怖と似た寒さが腹の底から湧き上がる。
     どうして、なぜ。
     いくら考えても答えが出せず、ただ喉から声を絞り出すようにしてごめんなさいと謝った。
    「貴方に触れられなくなってしまいました」
    「え?」
    「嘘では……、ありません」
    「幻太郎?」
    「もしくはあなたが猫なら、まあ、大丈夫だったかも」
    「え……」
     真面目な話をしたいはずが、余計なことばかり喋ってしまうのは悪い癖だと思う。
     それでも一緒にいると帝統は言ってくれたけれど、本当に自分勝手だとは知りながらもしばらくはそっとしておいて欲しいと頼み込んで家を出てもらうことにした。
     彼はとても心配そうな顔をしながらも渋々と靴を履き、玄関の引き戸を開ける。おれほしばらくその背中を見送るとまた扉を閉め、鍵をかけた。
     上がり口に腰掛けると、自然にため息が漏れる。
     どうして追い出したりなんてしてしまったのだろう。そんなところで意地を張って何になるというのか。
     冷え切ってしまった足先を手のひらで包み込むようにしながらも立ち上がれずにいると、部屋の中で電話が鳴った。
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