腰に巻き付いて離れない小さな生き物――セイバーを見下ろしながら、伊織は溜息を吐いた。
何時ものように長屋にやって来た彼は伊織に抱き着きながらなにやらくふくふと笑い、幸せそうにしながら眠りに就いた。良い顔をするな、と思いながらも、程なく伊織も意識を閉ざし、目を開けると其処に居たのは、一回りも小さくなってしまったセイバーであった。
記憶は無くなっているようで、カルデアどころか伊織も知らない盈月の儀の事も忘れてしまったらしい。けれどどうしてかセイバーは、目を覚まして初めて見た伊織に大層懐いた。医療系サーヴァントによる診察やレオナルド・ダ・ヴィンチ達による解析に一人で向かわせようとすると、無言のまま伊織に抱き着き、離れようとしなかったのだ。多少支障はきたしたものの、一週間ほどで治る霊基以上であると結論付けられた。
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