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    RiN_Fu_Fagtoe

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    RiN_Fu_Fagtoe

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    この前考えた剣伊♀前提のワンナイト未遂若伊♀。超冒頭。続きが出るかどうか私のメンタル次第。

    ワンナイト(未遂)事件「俺とセイバーの関係、か? ふむ、何と云えば良いものか……。虚ろとなったこの体、本来は抱いていた願いや熱があったのだろうが、それが削げ落ちている今、どうやら自分自身の感情に向き合わねばならない時が来たようでな。この感情は恐らく、恋、と云うものなのだろう。正直、俺自身まさかそんな感情を抱く事になろうとは思ってもいなかったんだ。……ん? もうセイバーと付き合っているのではないのか? いいや、まさか。確かに、セイバーは俺に対してそれなりに強い感情を向けている様子ではあるが、それはきっと、俺の抱いている思いとは別の物だろうよ。そも、彼には妻がいる。弟橘媛……、きっと他にも娶った者は居るのだろうが、彼が話す彼女の様子を窺うに、俺の様な、男の身形をした女など、そういう感情を向ける由も無いだろう。あぁ、良いんだ。報われる、なんて云い方も傲慢だが、叶う道理は元から無いんだ。諦めもついている。ただ……、この感情はどうにも、暖かな、好ましい熱を帯びている気がして、捨てるにも捨てられん。所謂片思い、という状況なのだろうが、俺としては正直、この感情を捨てる道理も、無いのだ。なら、胸に秘めているだけなら、問題なかろう? だから、俺とセイバーの関係を言葉で指し示すと云うのであれば、そうさな……。友、と呼んでも問題ないのではないだろうか」
     とんでも素っ頓狂おとぼけスカポンタン回答を頂いてしまった、宮本伊織のマスターである少年は、一人食堂で頭を抱えていた。何て事の無い雑談であった。友と呼ぶには距離が近く、恋人呼ぶには離れている、そんな宮本伊織とセイバー――ヤマトタケルの関係性を、唐変木の朴念仁に聞いたのがいけなかった。まさかセイバーが、伊織に近づく男全てに鋭い眼光を浴びせ、牽制している事など一切知らない様子である。
     事実、知る由もないのだろう。なんせ、伊織の背後で睨みを利かせているセイバーは、彼女が振り返ると途端に破顔し、甘い声で彼女の名を呼ぶのだから。
     そんな風だから、てっきり少年は、二人がすでにお付き合いをしているものばかりだと思っていたのだ。それにしては伊織のセイバーに対する態度がどうにもお堅いもので、もしかして、と思って突いたら飛び出してきた地雷であった。
     語ると同時に食事を終えた伊織は、そっかー、と呆然と呟く事しかできない少年を尻目に、セイバーの様子を見てくる、とそそくさとその場を後にしてしまった。そうして、取り残された少年だけが、その場で頭を抱えているのだ。
     伊織の自白は、喜ばしいものではある。どうにも感情が希薄で、剣以外に興味のある事柄などないと思っていたのだ。けれど事実、伊織はセイバーに恋をしている、と宣言した。それを自覚し、穏やかに告白できる精神状態は大変、喜ばしい。
     問題はその後である。諦めると云ったか? あのスカポンタン。セイバーから分かりやす過ぎる程の好意を向けられていながら、それに一切気が付かないとは恐れ入った。実際、少年は最早恐怖さえ覚えた。
     伊織はどうやら、他者から他者へ向ける感情の重さは理解できる様子であるのに、他者から己に矢印が向いた途端、駄目になる。誰がどう見てもセイバーは宮本伊織に好意を寄せている事など一目瞭然であるのに、当の本人が一切気づいていないとは。セイバーだって、気付かせないようにしている訳では無いのだ。それなのに、本人に一切届いていない。さすがの少年も、セイバーに同情の念を送った。
     少年としては、二人の恋は成就して欲しいと思う。確かにセイバーには妻がいたようだし、今でも思う気持ちはあるのだろうが、此処に現界している以上、新たな恋をしてはいけないという決まりはない。なら、決して無限ではないこの時を少しでも、晴れやかに過ごして欲しいのだ。
     セイバーは良い。彼は自分の気持ちをきちんと理解し、アピールだってしている。問題は間違いなく、伊織の方にある。どうにかして彼女にセイバーからの好意があると認めさせなければならない。が、そこで敵となってくるのが、セイバーである。
     セイバーはどうやら、未だ己の者になっていない伊織が他者と会話しているだけで間に割り込んだり、霊体化して傍で聞き耳を立てる癖があるようだった。なんたる悪癖である。セイバーの気配に敏い伊織は時たま聞き耳を立てているセイバーの姿を見えずとも捕らえ、いい加減にしろと頭をごつん、と殴る事もあった。その度霊体化を解いたセイバーは、その場を離れるのではなく会話に参加してくるのだ。
     そうまでされてしまえば、根掘り葉掘り伊織の事を聞く事は出来ない。聞いてしまえば最後、「何故その様な事を聞くのだ?」と冷たい声が飛んでくる。
     だから先程は、滅多にないチャンスであった。セイバーは先のレイシフトでの戦闘不能を受け、霊基修復の真っ最中であったのだ。何を呑気に、と思わなくはないが、戦闘不能直前、戻ったら御御御付だからな! と元気に叫んで云ったので問題ない、と少年は思って食堂にやって来ていたのだ。偶々食堂一人、昼食をとっていた伊織を見つけ、これ幸いと話しかけた次第である。
     伊織も、セイバーの戦闘不能を聞いて驚いた様子であったが、直前の言葉を伝えるとあいつらしい、と和やかに笑って食事に戻った。だから、聞いたのだ。実際、どのような関係であるのか、と。
     それで得られた回答が、冒頭の独白である。これには百戦錬磨のマスターもたじろぎ、現在に至るまで頭を抱えている次第であり、そして、語っている最中であった。
    「ほー、そりゃあ随分と、鈍感な嬢ちゃんじゃねぇか」
     頭を抱える少年に偶々声を掛けたのは、キャスターのクー・フーリンであった。どうやら、伊織とセイバーが出会った盈月の儀なる聖杯戦争と同様の諍いに、ランサーとして召喚されていたらしい彼は、記憶は無いにしろ何処か親近感を覚える様で、時たま二人の様子を窺っていたらしい。
     だから、少年が俯きながら語った流れを、成程、と聞くだけ聞いていた。驚く様子がなかったのは偏に、普段から二人をよく観察していたからだろう。
    「もう俺、二人にはしっかりくっついてほしいって言うかさぁ~! このままじゃタケルが可哀そうだし、本当は両想いなのに諦めてる伊織も可哀そうって言うか……。こんな事言うの、上から目線かもしれないけどさ。俺には、二人に幸せになって欲しいんだ」
     セイバーが時折伊織を見つめる視線に寂しさを抱えている事に、気が付かない程少年は鈍くない。伊織は鈍いようだが。同様に、伊織が何か言いたげにセイバーを見つめ、諦めた様に表情を帰る様子も、見ている。お互いがお互いを確かに思い合っていると云うのに、すれ違いが起きている訳でもなくただ言葉にしていないだけで結ばれないなんて、あんまりだ。
    「でも、勝手に俺がタケルに伊織の気持ちを伝えるのは絶対に違うし、でも伊織に告白してみなよ! って言おうにも大体タケルがセットにいるから言えないし、二人になろうとすると凄い顔で睨まれるからそれも難しいし……」
    「あー、そりゃあ、あれだ。馬に蹴られちまうから、ほっとく方が良いだろ」
    「そうかもしれないけどさぁ……! 折角二人居るんだよ!? 大好きな人と会えない人だって沢山いる中で、折角会えたんだから、そりゃ、幸せになって欲しいよ……」
    「ほーう?」
     クー・フーリンが、半ば涙目になってそう訴える少年の旋毛を見ていると、途端、悪寒にも似た嫌悪感が背筋を駆け上った。掛けられた声に少年は直ぐに顔を上げ、どんどん青ざめていく。
     ルーラーとして召喚されたギルガメッシュ――通称若旦那が、其処に居た。居てしまった。少年は、己と伊織の運の悪さを呪った。確かに、周りには誰も居ない事を確認していなかったとはいえ、先程までは確実にいなかった筈だ。

    「チッ。なんの用だ、金ピカ」
    「黙れ狗風情が」
     一触即発の雰囲気が漂ったあたりで、少年が令呪を構える。口を閉ざしたクー・フーリンとは反対に、若旦那は高らかに笑い、ふんぞり返った。
    「フハハ、焦れったいではないか、宮本伊織とセイバーめ!」
    「お、王様、じゃない、若旦那? お願いだから、余計な事しないであげて? お願いだから……!」
    「奴らの事は気に入っている。よし、我がいやらしい雰囲気にしてやろうではないか!」
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    RiN_Fu_Fagtoe

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    ワンナイト(未遂)事件「俺とセイバーの関係、か? ふむ、何と云えば良いものか……。虚ろとなったこの体、本来は抱いていた願いや熱があったのだろうが、それが削げ落ちている今、どうやら自分自身の感情に向き合わねばならない時が来たようでな。この感情は恐らく、恋、と云うものなのだろう。正直、俺自身まさかそんな感情を抱く事になろうとは思ってもいなかったんだ。……ん? もうセイバーと付き合っているのではないのか? いいや、まさか。確かに、セイバーは俺に対してそれなりに強い感情を向けている様子ではあるが、それはきっと、俺の抱いている思いとは別の物だろうよ。そも、彼には妻がいる。弟橘媛……、きっと他にも娶った者は居るのだろうが、彼が話す彼女の様子を窺うに、俺の様な、男の身形をした女など、そういう感情を向ける由も無いだろう。あぁ、良いんだ。報われる、なんて云い方も傲慢だが、叶う道理は元から無いんだ。諦めもついている。ただ……、この感情はどうにも、暖かな、好ましい熱を帯びている気がして、捨てるにも捨てられん。所謂片思い、という状況なのだろうが、俺としては正直、この感情を捨てる道理も、無いのだ。なら、胸に秘めているだけなら、問題なかろう? だから、俺とセイバーの関係を言葉で指し示すと云うのであれば、そうさな……。友、と呼んでも問題ないのではないだろうか」
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