Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    なるぎれ

    お試し使用中。
    ジョジョハマって3年生になった!

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 91

    なるぎれ

    ☆quiet follow

    もういっちょ。
    これも大人になったユリオくん視点。

    #YOI

    5.この夜の帳



    ヴィクトル・ニキフォロフは死んだ。

     
    そう言って奴の背を蹴っ飛ばしたのは、何年前のことだったろうか。
    確かに死んだのだ。当時のオレはそう思っていた。それなのに、直後あっさりと生き返りやがってカツドンと二人で間抜けヅラでニコニコ笑っていやがった。

    それから今まで、奴は何度か死を迎えた。死が訪れるときはたいてい、カツドンとすったもんだしていて、あんまりにも酷いときには、いい大人が二人して泣き喚く…ことも、あったらしい(なにせおれ自身はカツドンと喧嘩してジジイが泣いているところを今までの人生で一度も見たことがない)(他の泣き顔はリンクサイドで嫌というほど見たが)それでも、何が起こっても、二人の仲が崩壊することはなく、毎回見事に生き返ってきたのだった。

    あまりにも毎回毎回ひょっこり生き返ってくるもんだから、図太い不死鳥だと言ったら「フェニックスかぁ…格好いいね…」なんてカツドンがうっとりした顔をしやがるので、無性にムカついた覚えがある。あまりにムカついたのでアイツの向こう脛を蹴っ飛ばしたのは、まあいつものことだ。
    ヴィクトルがそれをどこで聞いていやがったのか、それからしばらくして何かの折、オレの発言に対して、「目印があるからね、戻ってこれるんだよ」と、こともなげにホザいていた。その「目印」が何か、なんてのは、口に出すのももう面倒くせぇ。

    奴が、一番最後にそして一番派手に死んだのは、今から4年前のことだ。葬式はそりゃあお祭り騒ぎで、エキシビジョンじゃああの伝説の「離れずにそばにいて」を滑り(勿論カツドンも一緒だ)拍手喝采を浴び、なんでか知らねえがオレまで巻き込まれて三人でも滑り、各国の新旧様々なスケーターが押し寄せ、そりゃもうエラい騒ぎだった。滑ってる最中から泣いてたカツドンは、奴の最後のスピーチ時には目も当てられないほど号泣していて、それを見たヴィクトルが号泣し、衆人環視の中二人でぎゅうぎゅうに抱き合いながらさらに号泣し、そしてなんでかオレもまた巻き込まれて、三人でオシクラマンジューのように抱き合った。

    あれから4年間、ヴィクトル・ニキフォロフはひとまずは穏やかに生きている。だがまあ、アイツの命綱はあのカツドンなので、たまにカツドンに殺されそうになりつつ、(何回かにいっぺんはオレも巻き込まれる)それでも自身が現役のときよりはだいぶ落ち着いた生を謳歌している。

    ヴィクトルの死と共に、カツドンも何回か死んだ筈なのだが、あいつの死はイマイチ分かりにくい。と、いうよりかは、あいつは自分が死んだ自覚がないのかもしれない。(そしてこのことを考えるたびに、無性にゾンビを撃ち殺したくなって、カツドンの家にバイ●ハザードをやりに行ってしまう)

    自覚がないながらも、それでもひとつ、逃れられない大きな死はカツドンを待ち受けていて、それはもう目の前だった。

    自分の葬式の準備をしている心境というのは、どんなものなのだろう。
    カツドンの表情は相変わらず読めない。ジジイはどこか浮かれた様子にも見える。とりあえず思ったのは、葬式の準備はえらく大変で、面倒くさそうだな、ということだった。

    二人の死を見送ったあとは、オレの番がくるのだ、と、漠然と思う。反面、実感がなさすぎて、本当にオレは死ぬのだろうか、とも思う。死ぬ気がしない、というほうが近いかもしれない。
    一応オレだって、それなりの死は迎えてきた。(成長期なんて死ななきゃやってられなかった)だが、それらの死とは、別物であろうことは、なんとなく察していた。

    それが、恐怖なのか、歓喜なのか、はたまた全く違う何かなのか、まだ、オレには分からない。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works