10回ゲーム隣で肩を並べて歩く風太が、指折り何かを一生懸命数えている。
ちらりと盗み見てはみたが、尖らせた唇の動きだけではもにょもにょしているだけで聞き取るのは難しそうだ。
「なあなあ絋にい」
「ん、なんだ?」
「お願いばあると」
両手分の指が10本丁度折られたところで1つ頷いたかと思えば、自らの手元へ注いでいた眼差しが俺の方へ向けられる。
純粋無垢なそれはまるで仔犬のようで、わしゃわしゃしてやりたい衝動に駆られるのをぐっと堪えた。毎度の事ながら、これがわざとではなく天然であるから困ったものだ。
「絋兄ちゃん?とがんしたと?」
「あ、いや。なんでもない。それで、お願いって何なんだ?」
「えっと、“好き”って10回言ってほしいんやけど」
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