龍神の縁者 叔母上、あなたが日の本のために身を投じてから十二支が一周するほどの月日が経ちました。
昨年の戦の折、真田殿を無事お迎えできたご様子にこの秀信も安堵致しております。高野山からも変わらぬその神聖な御姿を拝見しておりました。あなたの慈雨はあたたかく、その御心は戦に関わる関わらないを問わず、すべからく人へと伝わったことでしょう。
思えばあの時、僕のこの生における役割も終わりを告げられたのでしょうね。「後のことは、僕に任せて」とあなた方を見上げる体は、どこも痛みを持ちえなかったのに。
高野山ではお祖父様のこともあり、ずいぶんな扱いを受けましたが覚悟の上でした。僕がこの世に生を受ける前の出来事ですから何も申し上げる気はございませんが、お祖父様の気性の荒さが蒔いた受難の種が、僕の代で芽吹くとは。正直に言うと、あれほど入山を待たされるとは思いませんでしたよ。
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