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    FujiD0

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    FujiD0

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    【※幻覚注意※】
    去年の8月頃に書いた、🌸魔のモブくんとホラーっぽい何かの話 Δは影がチラつく程度
    トンネルを起因とした魔です

    この国には魔が多すぎる。
    魔の研究者や祓魔師の活躍や、神の加護によって魔の恐怖に怯えて暮らすなどという事は無い。
    彼らの活躍の元、我々一般市民は比較的安定した日々を過ごせている。しかし、数が多ければそれに出会ってしまう確立も上がるわけで。人も歩けば魔に当たる、とは言い得て妙である。例え祓魔師や神に守られていようと、魔は怖いものは怖い。だから、魔に出来るだけ関わらない、安定した仕事に就いたと言うのに。

    「なんで俺の担当の時ばっかり、こんな魔がらみの変な案件が回ってくるんだ…やめてくれ…」

    役所に就職し、早数年。
    魔に関わりたくない一心で、都市開発や土木工事を担当する皇都整備課の担当になった所までは良かった。外回りも皇都中心で、特に表立って魔と相対する必要もない。
    しかし、蓋を開けてみれば、なんやかんやとエンカウントするのは、やれ魔が工事の邪魔をするだとか、やれ整備不良で地下道から魔が湧いただとか、そんな案件ばっかりである。
    実際、実際に魔と戦う祓魔師や、現場に赴いて何とかしてくれる実働部隊には頭が上がらない。魔に怯える俺の代わりに前線に行ってくれてありがとう。
    それでも、なお、自分は魔が怖い。正直魔が絡んでる案件が回ってくる度に泣きだしそうになってるし辞表は何回か書いた。提出こそしなかったものの、恐怖のあまり泣きながら書いた辞表はいつでも提出できるようにデスクの中に収納されている。

    閑話休題。そう、文句も言っていられないのが仕事というものである。

    ーーーーー

    ぺらり、とファイルに入っている書類の一枚をめくる。どうやらトンネルで以前起きた事件の調査書のようで、綺麗に整理された情報を上から追っていく。
    そういえば、以前使われていたフォーマットに比べて、新しいやつは大分読みやすくなったよなあ、なんて頭の隅で考えた。古い書類、それこそ前の下水道に居た鼠型の魔の案件とかは本当に読みにくかった。
    あれ、そういえばこのトンネルの調査、前の案件の同じくらいじゃなかったっけ、と微かな違和感が脳裏を掠める。無能前任くん、他の書類はそのままの癖に、この書類だけは新フォーマットに書き換えたりしてくれたんだろうか。まあいいや。


    「調査日時…調査担当者…調査場所…対象者の情報………あれ、」
    ぐ、と目元を擦る。
    まだアラサーと呼ばれるには少し早い年齢ではあるのだが、一部の小さめのフォントで打ち込まれた文字が霞み、思うようにピントが合わない。
    日頃の書類仕事で目が疲れているのだろうか。また後で読もう、と書類を置き、他の類似の書類に手を付けた。


    「ああああ!もう、誰だよこの書類纏めたの……前任か?前任なのか!?あいつ……もう、本当に仕事だけ増やして蒸発しやがって…」

    これだけ情報が取っ散らかっている状態では、元々調査を担当していた人間に聞いたほうが早いかもしれない。経験上、こういうものは調査書に書かれている以上の情報を担当者が持っていたりするものだ。経験上、と言っても経験値は未だ微々たるものではあるが。
    「あ、調査担当者、まだ庁舎に勤務してたら詳しい話聞けたりするかな…名前、さっきの書類に書いてあった気がするし」

    少々散乱してしまった書類の海の中から、先程見つけた調査書を探す。
    例え経験が浅くとも、出来る事からやっていけば良い、と自分を鼓舞する。
    名前だけ確認して、あとで職員名簿と照らし合わせてみよう。見たことある名前だったから、多分今も働いている人のはず。確か調査対象の方の名前も、以前現場監修に行った際に名簿で見かけた名前だった気がするから、その周辺からも情報が得られるのではないだろうか。

    「話聞かなきゃいけない相手が分かってるのは楽、この前みたいにフィールドワークで探すよりは楽…そう、資料がある程度残ってたりするだけマシ……担当が分かってるだけマシ……この前の案件よりは楽なはず…………はぁ。」

    紙の山を捲れど捲れど見つからない書類に段々苛立つのを感じながら、楽観的な言葉だけは口から吐いておく。
    実際問題、この前下水から魔が湧いた案件よりは簡単なのだ。あの案件は改元前のゴタゴタした時期な事もあって、担当者さえさっぱり分からなかったのに対し、今回はさっきの書類に担当の名前がある。
    例え蒸発しやがった前任が書類整理を怠ったせいで今書類整理に手こずっていても。
    例え眼精疲労で妙に細かくプリントされた書類の文字が読みにくくても。
    簡単な、案件で、ある。

    「あ、あったあった」

    苛立ちが思わず爆発しそうになり、片手に持った書類の束にちょっとだけぐしゃっと皺が入った瞬間。
    先程も見かけたフォーマットの紙を、紙束の中から見つける事に成功した。先程と同じ様に、調査内容を目で追う。

    「調査日時…調査担当者…………あれ、」

    その文字列を、知らない。
    文字が、読めない。認識できない。先程は読めたはずの担当者の名前だけでなく、全く問題なかったはずの本文まで。
    まるで頭に霞がかかったように、まるで知らない言語を読まされているように。手に持った書類の内容が、どんどん読めなくなっていく。
    チリチリと目が、頭が痛む。ぐらぐらと歪む視界は、じわじわと色彩を無くしていく。

    心なしか、文字が薄くなっていくようで。

    まずいかもしれない、と思った瞬間にはもう、遅かったのかもしれない。
    耳の奥で、車輪がレールの上を走るような音が唸る。

    がたん、ごとん。

    「まずい、連絡を、誰かに、助けを」

    がたん、ごとん。

    「まずい、だれか、」

    がたん、ごとん。

    とっさに開いた電話帳の端に、以前の案件で顔を合わせた祓魔師の名前が見えた。

    がたん、ごとん。


    あ、あの時担当だった祓魔師、妙に綺麗な髪してたなあ、なんて現実逃避のように考えた。


    がたん、ごとん。




    キキーッ、と脳を叩くような嫌な音を立てて、電車が停車する音が響く。



    おにいさん、どちらまで?


    がたん、ごとん。
    駅からは随分遠いはずの庁舎に、電車の音が響いた。
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    FujiD0

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    去年の8月頃に書いた、🌸魔のモブくんとホラーっぽい何かの話 Δは影がチラつく程度
    トンネルを起因とした魔です
    この国には魔が多すぎる。
    魔の研究者や祓魔師の活躍や、神の加護によって魔の恐怖に怯えて暮らすなどという事は無い。
    彼らの活躍の元、我々一般市民は比較的安定した日々を過ごせている。しかし、数が多ければそれに出会ってしまう確立も上がるわけで。人も歩けば魔に当たる、とは言い得て妙である。例え祓魔師や神に守られていようと、魔は怖いものは怖い。だから、魔に出来るだけ関わらない、安定した仕事に就いたと言うのに。

    「なんで俺の担当の時ばっかり、こんな魔がらみの変な案件が回ってくるんだ…やめてくれ…」

    役所に就職し、早数年。
    魔に関わりたくない一心で、都市開発や土木工事を担当する皇都整備課の担当になった所までは良かった。外回りも皇都中心で、特に表立って魔と相対する必要もない。
    しかし、蓋を開けてみれば、なんやかんやとエンカウントするのは、やれ魔が工事の邪魔をするだとか、やれ整備不良で地下道から魔が湧いただとか、そんな案件ばっかりである。
    実際、実際に魔と戦う祓魔師や、現場に赴いて何とかしてくれる実働部隊には頭が上がらない。魔に怯える俺の代わりに前線に行ってくれてありがとう。
    それでも、なお、自分は 2493

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