ポカぐだ♀ / FGOフェス2025 / 英霊祝装私のコロッセオにやってきたマスターは、今はアステカの神と話し込んでいる。
満開の花のような明るい笑顔でやってきたというのに、その花は徐々に萎みしゅんとしている。
それも彼の言動が原因だ。
わざわざ「客なら歓迎する」だとか、「運営側で責任者だ」とか、一歩引いた身だと強調しちゃって。
マスターが考えることなんてわかるでしょうに。
「そんなぁ……テスカトリポカと一緒に戦うつもりだったのに」
ほらやっぱり。
彼女がマシュに次いで頼りにしているのは彼だもの。戦闘力でいえば彼女のサーヴァントの中で誰よりも優れていると言える。
優勝を目指すならば、一番に彼を候補に入れることでしょう。
私でなくても予想できることだわ。
だめなの? なんて眉を下げるマスターを見下ろし、彼は「批評はしてやるよ」と微かに笑うだけ。
頼られて内心嬉しいでしょうに、おくびにも出さない。
「……あ。待って待って!」
曇った表情から一転、マスターはパッと瞳を輝かせた。
なにかを閃いたらしい。
「"テスカトリポカ"は、勝利した者には援助を惜しまないのよね?
勝つためにはあなたの力が必要なの。だからお願い! 一緒に来て!」
ズイと迫られて、手を両手で掬われて、必死な顔で希われて。
ようやくその気になったらしい。
彼はやれやれと肩をすくめ、私へと顔を向けた。
「少し外すぜ? 我がマスターにこうまで求められては、戦場に出ないわけにはいかないんでね」
許可を求められても。私は責任者を強制したわけではないし、彼が常に監督していなければ闘技場を維持できないわけではない。
わかっているでしょうに。
「……お好きなように」
彼が想定しているだろう答えを口にする。
マスターはわたしの答えに飛び上がって喜んだ。
私にお礼の言葉を叫び、マスターは彼の手を取り闘技場へと駆けて行く。
小さくなるふたりの背を見つめ独りごちた。
「……最初からその気だったくせに」
私にだってわかります。
だってあからさまだもの。
カッチリと着こなしていても、足元は動きやすいスニーカーなんだもの。
uploaded on 2025/08/04