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    torimune2_9_

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    torimune2_9_

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    タイトルそのまま
    設定として大戦までのところで離婚済、ホとは身体の関係があるし思いも通じあってるけど言葉にしてない。この設定のまま最後まで行けるかは不明!!!!!中盤炎を精神的に虐めるのちょっと楽しいなと思いつつ、前を向いてもらうところまで書けました。

    監禁ネタ炎視点ぴ、ぴ、と規則正しい電子音が耳に届き、ぬるま湯に漂っていた意識が浮上する。聞こえているそれが心電図の音だと気づいたのはしばらくした後で、意識を失う直前自分がどこで何をしていたのかを思い出したのはさらに後だった。
    (……いき、のこったのか)
    今がいつで、意識を失ってからどれほどの時間が経ったのか。戦場に蔓延っていた悪意の渦が霧散したことは覚えている。ろくに動かない身体でも、家族だけは守らねばとその瞬間までは意識を保たせていた。
    (消毒液の匂いがする……病院、か?)
    文字通り全身を包帯が覆っているのだろう。目を開けようにも、包帯が引っ掛かり瞼を持ち上げることができない。それすらも叶わないほどに力が入らない。意識は確かにあるのに、まるで身体と繋がっていないような錯覚を起こす。片腕を奪われ脇腹を抉られ、全身に火傷を覆っているにも関わらず痛みのひとつも感じないということは、余程強力な鎮痛剤が使われているのか。指先を動かすことすらままならない状況に、恐らく運び込まれた時点の己は死の淵に瀕していたのだろうと容易に想像がついた。
    (他の者は、どうなった)
    学生たちは、ヒーローたちは。誰が死んで誰が生き残ったのか、何もわからない。未来ある若者たちを戦場に立たせ、決して少なくない傷を負わせたのは確かだろう。起爆させたのがAFOだとしても、そうなるまでの社会の歪みの一端は、間違いなくこの手が握っていた。
    『俺にも背負わせてくださいよ、ナンバーワン』
    ふと、頭の中でそんな声が過る。そのためのナンバーツーですから、などとさも当然のような顔で言っていたのを思い出す。過去のエンデヴァーはそんなことひとつもしたことがなかったというのに、何の躊躇いもなく伸ばされた手は、確かにこの背を支えていた。
    (そうだ、ホークスは)
    燈矢と対峙するためにあの戦線を離脱した。あの場にはホークス以外にもヒーローはいたが、果たしてどうなったのだろう。焼かれた羽根は万全からは程遠く、そもそも身体の傷すら回復しきっていない状態だったというのに。あれは最早世界規模の戦争で、そしてホークス自身も戦場に立つことを望んだとはいえ、無茶に無茶を重ねていたのは事実だ。
    (……あいつなら、けろっとした顔でそこらを歩き回っていてもおかしくはないが)
    思えば、あの小さな背中に沢山のものを背負わせてしまった。妙に達観していて、強欲だと自らを称していながらどこまでも他者のために動けるあの青年だって、同じく未来を担う若者だというのに。言葉で、行動で、自らの業に潰されそうになっていたエンデヴァーを支えてくれた。
    (おまえにも、たくさん、言葉を返さねば)
    ただの同僚というにはあまにりも近く、恋人と形容するにはホークスのことをあまりにも知らない。けれど身体だけの関係というには、互いの深いところに触れていたように思う。いつの間にか隣にいることを受け入れていて、理解してもらえることに甘えていた。ホークスがこちらに向ける視線に含む感情に薄らと気づいておきながら、向こうが何も言わないことに胡坐をかいて与えられる温もりを享受していた。とっくに傾いていた心から目を背けて、俺なんぞやめておけと口先ばかりのことを言いながら終わらせる勇気も無かった。いつまでも学ばない。愚かしいにも程がある。貰うばかりで、何かを返せていただろうか。
    分からない。
    何も知らなかった。
    一人連合に潜入し、いつ殺されるかもわからないような綱渡りをしていたことも。かつて捕縛したヴィランの子供だったということも。生意気な子供だと思っていた青年が、公安という機構によって作り出された存在だということも。自己を殺し、自分だけが汚れることで世界を守ろうとしていたことも、何も。
    (俺は……)
    家族への償いはしなければならない。その思いは変わらない。世間への贖罪も、この命尽きるまで終わることはないだろう。今更幸せを望む資格も、触れようと手を伸ばす資格もありはしない。
    けれど、そうしたら、誰があの青年に手を差し出すのか。一人で沈む覚悟を決めた人間を誰が引き上げるのか。ここでまた足踏みをしていたら、触れるどころか存在すら掴めなくなるかもしれない。それで本当に後悔はしないのか。
    (……俺は)
    ――コツ、
    (…………?)
    聞こえてきた心電図以外の音に意識が逸れる。ノックにも似た軽い音。コツ、コツと近づいてくるそれはよくよく考えてみれば人の足音のようだった。一人分。革靴だろうか。こんな状態の自分の病室に入ることの出来る人間は限られる。医者か警察か、他のヒーローも家族はまだ難しいかもしれない。思いつく中でわざわざエンデヴァーの見舞いに来るような人間となれば、候補はそう多くない。
    向こうもエンデヴァーの意識が戻っているとは気づいていないのか一言も発さない。そのまますぐ近くまで来たその人物は、ベッドの傍にあったのだろう椅子に腰かけた。ぎしっ、と金属の軋む音が静かな病室ではやけに大きく響く。
    「フ―――ッ…………」
    疲労の滲むため息。声はない。だが、ため息一つにも個性は出る。それは今まで数えきれないほど聞いたことのあるものだった。
    (塚内か?)
    目を開けられないせいで確認はできないが、歩行音に違和感は無かった。酷い怪我を負っているということはなさそうだ。塚内が無事だということは、本部が攻撃されることはなかったのだろう。そのことへの安堵を感じながら、どこか胸がざわついた。ただの見舞いではないのか。目を開けることも、どうしたと聞くこともできないのがもどかしい。痛いくらいの沈黙がその場を支配して、再度重いため息が空気を揺らした。
    「……すまない、エンデヴァー……」
    何故謝るのか。何に対しての謝罪なのか。
    問いが出来なければ回答もない。静寂の中、暫くして塚内のものだろう着信音が鳴った。聴覚に意識を集中させているからか、病室が静かなことも相まって電話の向こうの声が微かに耳に届く。何を言っているかまでは聞き取れなかったが、相手が塚内とよくともにいる刑事だと察しがついた。
    「……それで監視カメラは……そうか。いや、予想はついていたことだ。こんな状況とはいえ、……こんな状況だからこそセントラルの警備体制は十分だった。なのにまさか、」
    言葉を詰まらせた塚内は、ぐしゃぐしゃと頭を掻いて三度目のため息を吐く。病院内でなにか事件が起こったのか。ただの事件にしては様子がおかしい。押し寄せる不安が圧迫感にも似た重苦しさを生む。
    「警備の件はどうにかなりそうだ。プライバシーの関係で随分話は膠着したが……彼が了承してくれて助かったよ。この状況で、ホークスに続いてエンデヴァーにまで何かあったら……」
    (ホークスだと)
    不意に出てきた名前に思考が止まった。聞き間違いではない。塚内の口から出たのは紛れもなくホークスの名前だ。警備を強化しなければならないほどの何か、そして、エンデヴァーに謝罪しなければならないような事態。
    ――嫌な予感がした。
    今すぐにでも飛び起きて話を聞きたいのに、やはり回路が切れてしまったかのように身体は動かない。心の中でどれだけ声を上げようと喉が空気を震わせることはない。そして誰にも気づかれない奮闘も空しく、電話の向こうから慌ただしい声が聞こえた。かと思えば、塚内が息を飲んで立ち上がる。
    「…………ミルコが?……ああ、すぐに向かうよ」
    (まて、塚内!)
    無情にも足音が遠ざかっていく。その音は都合よく戻ってくるなんてこともなく、ついには聞こえてなくなった。規則正しい電子音が、ほんの少しそのリズムを早くする。
    (なにがあった)
    (ホークス、お前に一体何が)
    (何もできないのか、おれは、また)
    (大事なときに、なにもしなかったから。何もしないことを選んだから)
    結局指先すらも動かせなかったのに、まるで時間切れだとでもいうように次第に意識が霞んでいく。このまま眠ってしまえばしばらく起きることはないだろう。直観的にそう感じながらも、成すすべもなく意識が奥底に沈められていく。
    (待ってくれ、ホークス)


    瞼の裏で赤い羽根が霞める。
    暗闇の中ひらひらと漂う赤はしなやかで美しく、時折木の葉が舞うようにくるりと翻る。よかった。見つけた、と。手を伸ばし指先が触れた途端、その縁をなぞるように這った炎が瞬く間に羽根を灰に変えた。
    なぜ、と開いたままの指の隙間を灰が通り抜けて落ちていく。
    そんなつもりじゃなかったのに。落ちたそれをかき集めようと目で追えば、灰はいつの間にかひとのかたちをとっていた。
    黒く焦げたそれ。大人なのか、子供なのか、家族なのか、かれなのか。
    タンパク質の焼ける臭いが鼻につく。
    酷い悪夢だ。
    悪夢のはずだ。
    こんな光景が現実のはずがない。
    『エンデヴァーさん』
    声がした。
    遠くで光が見える。
    手を伸ばす。伸ばそうとした。けれど炎の手ではその光に触れられない。
    待ってくれ。ちゃんと返事をするから。もう見ないふりはしない、だから。
    『お父さん』
    声がした。
    足元のそれから。ひび割れた胸の奥から。
    『お父さん』『エンデヴァーさん』
    あ。
    ああ。
    ああああああああああああああああああ。
    『過去は消えない』
    聞こえたのは、自分の声だった。
    その通りだ。過去は消えない。なにも変わっていない。
    いつまでも愚かなまま不正解ばかりを選んでいる。
    だから、どうしようもなくなってからじゃないと気づかない。


    「――――ッ、は」
    高所から落下するような、内臓のせり上がる感覚で目を覚ます。
    酷い夢を見ていた。夢とは正反対の白一色の天井と蛍光灯の光が眼底を刺して痛む。何度か瞬きをするうちに、霞んだ視界の中で誰かの顔が見えた。
    「エンデヴァー、意識が戻ったのか?」
    病院服だろう淡い色と、包帯の白。そして金髪。視界は不明瞭でもその声と気配は馴染みのあるものだった。
    「……べすと、じーにすと……か」
    乾いた喉が張り付き、名前を呼ぶだけで咳が混ざる。ようやく絞り出せた声も、本当に自分のものかと疑いたくなるほどにしゃがれていた。それに気づいたのだろうベストジーニストが傍に置かれた水差しを取り、エンデヴァーの口元に運ぶ。飲むことが出来たのはほんの数口だったが、張り付くような感覚は随分と和らいだ。相変わらず身体は重いが、今度は指先まで神経が通っている感覚があった。
    「医者を呼ぶ。まだ無理に動かないほうがいい」
    「……まて……ほーくす、は」
    一度意識が浮上した時、病室に塚内がいた。その時聞こえてきた言葉を正直なところはっきりとは覚えていない。ただ、意識を失う寸前までホークスの身を案じていたことだけは覚えている。何を聞いたのか、何に思い至ったのか。熱に魘されて見た悪夢に振り回されているだけならそれでいい。だがそんな期待を裏切るように、ホークスの名を出した途端ベストジーニストの表情に陰りが見えた。なぜそんなことを?とその瞳が告げる。
    「きさまがここにいるのも……ただの見舞い、ではあるまい。あいつに、なにかあったのか」
    確信を持って問いかければ、エンデヴァーとは違う青色が静かに見下ろしてくる。数秒にも数分にも思える沈黙が続き、ベストジーニストは深くため息を吐いて自身のこめかみを押さえた。
    「……ホークスは行方不明だ」
    「な、に?」
    「我々と同じくこの病院に入院していたが、ほんの三日前、忽然と姿を消した」
    潤ったはずの喉がまたカラカラと乾いていくのを感じた。消えた?ホークスが?セントラルは病院としての規模の大きさもさることながら、その充実した設備から多くのヒーローが利用する場所でもある。負傷したヒーローが多く集まるということは、それだけヴィランに狙われる可能性も高い。だからこそ、警備はどこよりも厳重になっているはずだった。
    「……けいび、は」
    「当然警備もいたが、病室の中にはいなかった。監視カメラは唯一内側から出入口を映してはいたが、医者と看護師以外映っていない」
    監視カメラに映っていないのに姿を消すなんてことが可能だろうか。例えば個性で姿を消していたとしても、扉を開ければそれが映る。争うような声がすれば外の警備が気づく。ならばもし、自分の意志で姿を消したのだとしたら。それこそ病室には大きな窓がある。
    「あれは……こうあんに、飼われていたんだろう。じぶんの意志で、去ったのではないか」
    一時は壊滅状態だったとはいえ公安もやわな組織ではない。状況が落ち着けばすぐに体制を立て直すだろうし、その時再びホークスを繋ぎとめようとしくるかもしれない。連合に取り入りスパイをしていたという事実だけを押し付けられ、公安の指示など無かったことにされるかもしれない。その可能性に、あの賢い青年が思い至らないはずがないのだ。
    だから、そうなってもおかしくはないと思った。ベストジーニストだってそう考えているだろうとも。
    「……そうであればよかったんだがな」
    「な、に?」
    なのに返ってきたのはエンデヴァーの言葉に対する同意ではなく、寧ろ否定に近いものだった。そうでないと何故わかるのか。エンデヴァーの困惑を読み取ったのか、ベストジーニストは僅かにその瞳を揺らす。
    「ああ……そうか。貴方はまだ」
    小さな声はエンデヴァーに向けたものというよりは、思わず漏れ出たように聞こえた。
    「……ジーニスト?」
    「あのこの羽根は、AFOに奪われた」
    言われた言葉が一瞬理解出来なかった。
    脳内で反芻しようやくは、と息を飲む。心臓が嫌な音を立てて、額に汗が滲むのが分かった。あの戦場でAFOと対峙した全員にそうなる可能性はあった。分かっていたことなのに、どうしてと思わずにはいられない。背中を焼かれてもなおホークスの心に応えるように再生したあの羽根が、あんな男に奪われてしまったなんて。
    「そうでなくともAFOからの攻撃を生身で正面から受け止めたんだ。麻酔がなくとも到底自力で動けるような傷ではなかった。だからこそ公安もすぐにこの件を誘拐だと判断したし、私は貴方の警護を受け入れた。そしてもう一つ、これはまだ一部の人間にしか共有していない情報だが――……ミルコ曰く、ホークスのいた病室から泥の臭いがしたそうだ」
    ふと、半覚醒状態のあの時、塚内が最後の彼女の名前を呼んでいたことを思い出した。同時に以前福岡でのハイエンド戦の後、ホークスとミルコが泥ワープについて酷い臭いだと話していた光景が脳裏を過る。人より嗅覚の優れた彼女なら、多少時間が経過していても残った残滓を嗅ぎ取ることはできるだろう。だがそれはつまり、今回の誘拐にあの個性が使われたということだ。そう思い至った途端、言いようのない吐き気が喉奥からせり上がってきた。
    「……ッぐ、ぅ…………ハッ、ハッ……!」
    何故だ。何故ホークスがそんな目に合わなければならないのか。傷が癒えていない今無闇に個性を使っていけないことはよく理解しているのに、湧き上がる怒りで火花が散る。あの男か、もしくはそれに連なる誰かか。いくら個性を使うとはいえ少なくないリスクを侵してまでホークスを攫ったのには理由があるはずだ。社会へのダメージ、ヒーローへの嫌がらせ、最後の悪あがき。どんな形になっても、それは十中八九ホークスというヒーローのその心を殺すことになると容易に想像がついた。ホークスの努力の形を、その羽根を奪っておいてまだ傷つけるというのか。
    「エンデヴァー、今は落ち着いてくれ。傷が悪化しかねない」
    ベストジーニストの声は正しく耳に届いている。だが、感情の波が治まらない。自分は悪夢の続きを見ているのだろうか。そうでないとあまりにも救われない。不幸が降り注ぐべきは自分だろうに、なぜ。なぜ。なぜ彼ばかりがこうも。
    「エンデヴァー。いや、轟炎司」
    荒い呼吸音の隙間から、凪いだ声が静かに届く。
    「貴方はこれを聞いてどうしたい」
    どうする、などと。

    ――エンデヴァーさん。俺のヒーロー
    ――貴方の努力が報われてくれれば俺はそれでいいんです

    それでいいはずがない。こんな形で終わっていいはずがない。
    そうだ。
    悩む必要などなかった。
    答えは既に決まっている。一分一秒が惜しい。悪夢に足を取られている場合ではない。状況が分からない今、希望を捨てるには早すぎる。罪悪感も不安も恐怖も踏み越えて立ち上がるのがヒーローだ。間違いばかりを犯してきた一人の愚かな男として、献身に救われたヒーローとして、ホークスに言葉を返さねばならない。四十年近く生きてきて初めて抱いたこの感情。触れれば壊してしまいそうでずっと言葉に出来なかった。

    お前が好きなんだと、ただその一言を。

    「……ジーニスト」
    「ああ」
    「腕のいい技師を探してくれ」
    炎の腕で触れられないなら、別の腕を付けるまで。まだこの身体は動く。ならばここで折れる理由などどこにもない。まっすぐ正面を向いてそう言えば、ふ、とベストジーニストが薄く笑ったのが見えた。
    「ああ。ナンバーワンに相応しいプロフェッショナルを呼び寄せよう」
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    torimune2_9_

    DOODLE非常事態の中で共依存じみた関係を築いていた炎ホが全て終わった後すれ違って後悔してまたくっつく話……にしたい。ホ視点だと炎が割と酷いかも。一応この後事件を絡めつつなんやかんや起こる予定。相変わらずホが可哀想な目にあう
    愛の在処「エンデヴァーさーん。入れてくださーい」
    分厚い防弾ガラス越しに、書類を眺めるエンデヴァーに向けて声を掛ける。きっとこれが敵や敵の攻撃だったら、少なくとも数秒前には立ち上がり迎撃姿勢に入るだろう。だが、ホークスに対してはそうではない。呆れたようにこちらを見て、それから仕方ないといった様子で窓を開けてくれるのだ。
    「玄関から来いと何度言ったら分かる」
    「だってこっちの方が速いんですもん。それに、そんなこと言いながらちゃんと開けてくれるじゃないですか」
    「貴様が懲りずに来るからだろう!」
    エンデヴァー事務所の窓から入る人間なんて最初から最後まできっとホークスだけだ。敵はそもそも立ち入る前にエンデヴァーが撃ち落とすだろうし、他の飛行系ヒーローは思いつきもしないだろう。そんなちょっとした、きっとホークス以外にとってはくだらないオンリーワンのために態々空から飛んできていると知ったらエンデヴァーはどんな顔をするだろうか。
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