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    torimune2_9_

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    torimune2_9_

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    前回と一応時空は同じなんですけど話は繋がってないです。なんか見たいシーンだけ書いてる。そのうちどっちもちゃんと完成させてまとめたい。
    ぼんやり脳内にある設定としては、炎は何代か続くデカいマフィアを継いだボスで、ホは先代に拾われて色んな事やってた子供。なんだかんだあってホのことをめちゃくちゃ気に入ったので囲ってる。成人したホが炎の役に立ちたいというので傍を離れないことを条件に連れ出してる

    裏社会パロそのに裏社会、と一言で言っても皆が皆闇に潜んでいるわけではない。
    表の顔として一般社会に地位を持つものもいれば、利益のために裏の人間と繋がりを持つ権力者も少なくない。表裏一体の世界で普段は交わらない世界が交わる数少ない機会の一つが、今現在エンデヴァーとホークスの参加しているパーティーだった。裏でそれなりに名を挙げた組織の代表者数名と、表で知らぬ人はいない権力者が集まる欲望に塗れた晩餐会。どこぞの有名ホテルの1フロアを貸し切って行われているこの晩餐会では一切の戦闘が禁じられているため、誰もが表向きは和やかに食事と交流を楽しんでいる。和やかと言っても会話の中身は到底表の人間に聞かせられるようなものではないが、そんなことに口を出すのは野暮と言うやつだ。
    「はぁ、みーんな貴方に媚び売ろうとちらちらこっち見てますよ」
    そんな中、ホークスは疲れた顔を隠そうともせず皿に盛った料理を摘まんでいた。
    ビュッフェスタイルで用意された食事は流石金持ちが用意しただけあってどれも最上級の品質であったが、至る所から向けられる不躾な視線が腹の奥に不満を溜め込んでいく。少し前にエンデヴァーに寄ってきた貿易会社の女社長が付けていた香水の匂いがまだ残っているのも気に入らない。舌打ちを堪えながら、苛立ちを誤魔化すように手元の料理を口の中に入れていく。
    「……また鶏肉ばかり食べているのか。野菜も食え」
    「いいじゃないですかぁ。せめて好きなもんでも食べてないとやってらんないですよ」
    「それでもだ」
    「じゃあエンデヴァーさんが選んでくださいよ。そういう目利きお上手でしょう?」
    拗ねた様子を隠さず声に滲ませれば、エンデヴァーは少しばかり驚いたように空色の目を見開いてからそうだな、と並べられた料理たちを見回した。逸れた視線に気付かれぬようため息を吐く。この程度で機嫌を悪くするなんて右腕失格だ。香水の匂いも、不躾な視線も、気にするだけ今更だというのに。腹の奥に溜まった鬱憤が何度目かのため息となって口から漏れ出る。エンデヴァーさんはまだかな、と臙脂色を探せば、料理の盛られた皿を手にしたその人が丁度戻ってきたところだった。
    「ほら。これを食え」
    そう言って空になった皿がエンデヴァーの手の中のそれと入れ替えられる。質のいい白磁器の上には青々とした総菜が数種類とマッシュポテト、キノコのソテー等々肉料理以外が盛られており、ソテーから漂うバターの匂いが食欲をそそった。
    「わっ!え、多くないですか?」
    「それくらい食えるだろう。まだ普段の半分も食っとらんはずだぞ」
    ずっと他の人と話をしていてこちらのことなど見ていないと思っていた。鶏肉の話だって、丁度食べている姿が目に付いたから定型文のように声を掛けただけだと。もしかして何を食べているか最初から把握されていたのだろうか。
    「……なんだ。そんなに俺のこと見てたんです?」
    「当然だろう」
    「…………そーですか」
    冗談交じりの声色で言ってみたのに、想像以上に真剣なトーンで即答されてしまった。心なしか会場の温度が上がったような気がするが、どう考えたって上がっているのは自分の体温だ。意識を逸らすべくもしゃもしゃと色のいい総菜たちを頬張っていると、視界の隅でこちらに向かってくる人影が見えた。
    「……エンデヴァーさん」
    「ああ」
    視線でエンデヴァーの背後を見れば、意図を察した彼は傍にいたボーイにグラスを手渡し振り返る。そこにいたのは過去何度か仕事を受けた企業の大役だった。オーダーメイドだろうスーツに派手過ぎない金のタイピン。ワックスで固められたオールバックの前髪も相まって外見だけなら裏の人間にしか見えない。この場でわざわざエンデヴァーに声をかけに来たということは何か仕事の話だろうか。
    「お久しぶりですね、エンデヴァー殿」
    「そちらも息災なようでなによりだ。表での躍進、こちらの耳にも入っているぞ」
    「あはは、それはありがたい。少し仕事の相談をしたいのですが……問題ありませんか?」
    ちら、と男の視線がホークスに向いた。ボスであるエンデヴァーにだけ話をしたいのだろう。確定していない仕事の話となれば、それ自体はよくあることだ。だが、それにあまりいい顔をしないのがエンデヴァーだった。独占欲というべきか、目の届かぬ場所でホークスが他人の視線に晒されるのを嫌がるのだ。つい先ほどまでホークスが抱いていた有象無象に対する嫉妬心など可愛いもので、エンデヴァーが機嫌を損ねると後が怖い。何がというと夜の話が、だ。けれど右腕としてはここでエンデヴァーを引き留める訳にはいかない。なにせ媚を売ってくるだけの無益な輩ならともかく、今声を掛けてきた男は組織にとっても良き商売相手だ。
    「俺はここにいますから」
    「むぅ……」
    「そんな顔しないでくださいよ。ここは揉め事厳禁ですし、そもそもそのための場所でしょ?」
    ほらと促してエンデヴァーの背を押せば、渋る表情を隠しもせず唇を尖らせる。けれどこの場での談合の重要性は彼が一番よく分かっている。だからこそ、最後には折れるとホークスも分かっていた。
    「ホークス」
    エンデヴァーはホークスの頬を軽く撫で、背を撫でた指先で雨覆羽を一枚摘まむ。ぷつ、と引き抜かれたそれはエンデヴァーの胸ポケットへと納められ、微かな鼓動を感じさせた。これは離れていても自分のことだけ考えていろという命令だ。
    「いい子にしていろよ」
    「はぁい」
    従順に頷けば、一先ず満足はしたらしい。傍から見れば変わらないむすっとした表情も、ホークスにとってはそこに隠された感情を読み取ることなど朝飯前だ。エンデヴァーの背を見送りながら、空になった皿をテーブルに置く。ざわりと空気が変わったことを背の剛翼が敏感に感じ取っていた。
    (はぁ、あの人がいなくなった途端これなんだから)
    主人の傍にいない番犬がそれほど気になるのか、ちらほらとあちこちから視線を感じる。エンデヴァーの気難しさはそれなりに有名だ。それなのに、特定の誰かを傍に置いたりしなかったエンデヴァーが、唯一ホークスだけは隣に立つことを許している。噂には聞いていたとしても、実際に目の当たりにしてさぞかし驚いたことだろう。
    『エンデヴァーは赤い鳥にご熱心だ』
    そんな噂がまことしやかにささやかれ始めたのは、エンデヴァーが先代の後を継ぎ、ホークスが本格的に右腕として共に行動するようになってからだった。その頃から飛躍的に勢力を拡大させていることも、噂に尾ひれがつく要因の一つだろう。幸運を運ぶ青い鳥ならぬ赤い鳥だの、天の使いだの、はたまた悪魔と契約でもしただの、随分と好き勝手言われている。ホークスの諜報能力が役に立つ場面も確かにあったが、ここまで組織が大きくなったのはエンデヴァーの努力の結果だ。それをまるで降って湧いてきた幸運によるもののように思われるのは我慢ならない。
    だというのに、エンデヴァーのことをろくに知らない外野は好き勝手妄想を膨らませ、挙句の果てに、ホークスを懐柔すればあるいは、などと考える。全く以て馬鹿馬鹿しいが、そんな輩が一定数いるのが現状だった。
    「君が一人でいるなんて珍しいね」
    (ほら来た)
    こうしてエンデヴァーの不在を狙って近づいてくるような輩は決まってホークスを庇護される弱い存在だと思い込んでいる。まるで今気付いたかのように肩を跳ねさせれば、案の定相手はその表情に優越感を覗かせた。
    「……貴方は」
    「あはは、驚かせてしまってすまない。君のその赤い羽根……君があのエンデヴァーのお気に入りなんだろう?少し興味があってね」
    予想通り過ぎる言葉と下品な笑みに気分が下がっていく。
    「今日の俺は、ただの護衛ですよ」
    「謙遜は良くない。昔彼がトップに立ってすぐの頃に一度仕事をしたことがあるが、その時は何て末恐ろしい男がこの世界に現れたものかと話題になったものだよ。味方すらも寄せ付けない、それこそ烈火のような男だった。その彼が、唯一君だけを懐に入れて連れ歩いている。気になるのも仕方ないだろう?」
    ため息を吐きかけて何とか堪える。愛想笑いが引き攣っていないか不安になりながらも、早く肩に置いた手を外してくれないかと内心愚痴を零した。そもそも、エンデヴァーが傍に置いているのはホークスだけではない。
    明確に右腕と称されるのはホークスただ一人かもしれないが、エンデヴァーに長年仕えている部下は沢山いるし、ずっと見て来たからこそエンデヴァーが彼らにどれだけの信頼を置いているかも理解している。ホークスなどまだまだひよっこで、寧ろそれを羨んでいるくらいだというのに。
    とまあそんなことをこの男に教えてあげる義理もないわけだが。こうも訳知り風にペラペラと語られると舌打ちの一つでも零したくなる。
    「君はどうして彼のもとにいるんだい?君だって彼に負けず劣らず……いやもしかしたらそれ以上に優秀なんだろう?」
    知ってるぞと言わんばかりの視線が鬱陶しい。なぜ無駄に顔を近づけてくるのか、不快感を抑え込みながらも笑みを崩さないでいるのは、この場が揉め事禁止であることもそうだが下手に問題を起こせば責任を追及されるのはエンデヴァーだからだ。迷惑をかけたくないというホークスの立場を分かっているからこそ、男はべたべたと肩やら腰やらに無遠慮に触れてくる。そして背中の羽根にも。
    (――汚い手で触るな)
    ぞわりと背筋を悪寒が走り、ほんの少し羽根が膨らんだ。そこに触れていいのは主と認めたエンデヴァーだけだ。
    「その才能を腐らせるのは勿体ない。どうかな、うちに来ないか?」
    「――は?」
    喉元までせり上がっていた嫌悪が、ついうっかり、ほんの一欠片溢れ出る。余りに突拍子のない提案に、愛想笑いすら消えてしまった。正気か?と視線で訴えるが男は気付いていないようで高笑いを上げながら距離を縮めてくる。
    「今よりずっといい条件を用意してあげるよ。君のその美しい羽根も頭脳も彼では宝の持ち腐れというやつさ」
    背に回された手が羽根を撫で回すのがひたすらに不快だ。回りの男たちも好奇心半分、今この場にいないエンデヴァーの怒りを買うことへの恐れ半分といった様子だろうか、どこか遠巻きにホークスと男のやりとりを観察しているようだった。どれだけの好待遇を用意されようと金を積まれようとエンデヴァーの元を離れる気はない。そもそも万が一にも離れようとしたところでエンデヴァーがそう簡単に手放してくれるとも思えないが。
    「……どうかな?君にとっても悪い話じゃないと思うんだけど」
    「残念ですけど俺は、」
    流石に鬱陶しいと少し強めに言葉を放とうとして、口を紡ぐ。ホークスよりも余程不機嫌なオーラを纏わせた主人の気配に、あちゃーと内心で舌を出した。

    「おい」

    途端、重力が倍になったような威圧感が会場内を支配した。背後から聞こえた声に、目の前の男がサッと顔色を青くして半歩離れる。見なくても分かる怒りの声に、ようやく男の手が離れたと安堵する暇もない。これは不機嫌どころか確実に怒っていると、違う意味で冷や汗が出る。
    「貴様、こいつに何をしている」
    「――……っ、」
    ホークスを背に隠すように立ったエンデヴァーが冷たい視線を男に向けた。海とも青空ともとれる澄んだ蒼はまさに絶対零度。照明の加減か怒りを通り越して寧ろ凪いでいるようにも見えるが、向けられた男の額には焦りからか玉のような汗が滲んでいた。
    「は、はは……少し談笑していただけだよ、そうだろう?」
    先ほどまでの余裕は見る影もなく、男は縋るようにホークスを見た。男を庇うつもりはないが、この場でこれ以上険悪な雰囲気を悪化させるのも得策ではないだろう。自分のために怒りを露わにするエンデヴァーについ喜びの感情が湧くが、それはそれとして関心が男に向いたままというのもおもしろくない。
    「……エンデヴァーさん」

    「……今回は見逃してやる。だが覚えておけ、こいつは俺のものだ」
    ぢり、とエンデヴァーの目元で炎が散る。青を通り越して白くなった顔で目一杯頷く男を一瞥し、エンデヴァーはふんと鼻を鳴らした。それが合図とばかりに張り詰めていた空気が緩む。尻尾を巻いて立ち去る男に周囲のギャラリーも呆れたように嘲笑して、また各々の会話に戻っていく。和やかさを取り戻した会場には目もくれず、エンデヴァーの大きな手がホークスの手首を掴んだ。
    「わっ、エンデヴァーさんっ!」
    引かれるまま会場を離れ、用意されていた控室へと連れ込まれる。そのまま乱暴にベッドへ投げ飛ばされたかと思えば、抵抗する間も無く押し倒された。ギシッ、とスプリングの軋む音が空虚に響く。
    「俺以外に触らせていたな」
    「エンデヴァー、さ」
    「その身体も、羽根も、全て俺のもののはずだ」
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    torimune2_9_

    DOODLE非常事態の中で共依存じみた関係を築いていた炎ホが全て終わった後すれ違って後悔してまたくっつく話……にしたい。ホ視点だと炎が割と酷いかも。一応この後事件を絡めつつなんやかんや起こる予定。相変わらずホが可哀想な目にあう
    愛の在処「エンデヴァーさーん。入れてくださーい」
    分厚い防弾ガラス越しに、書類を眺めるエンデヴァーに向けて声を掛ける。きっとこれが敵や敵の攻撃だったら、少なくとも数秒前には立ち上がり迎撃姿勢に入るだろう。だが、ホークスに対してはそうではない。呆れたようにこちらを見て、それから仕方ないといった様子で窓を開けてくれるのだ。
    「玄関から来いと何度言ったら分かる」
    「だってこっちの方が速いんですもん。それに、そんなこと言いながらちゃんと開けてくれるじゃないですか」
    「貴様が懲りずに来るからだろう!」
    エンデヴァー事務所の窓から入る人間なんて最初から最後まできっとホークスだけだ。敵はそもそも立ち入る前にエンデヴァーが撃ち落とすだろうし、他の飛行系ヒーローは思いつきもしないだろう。そんなちょっとした、きっとホークス以外にとってはくだらないオンリーワンのために態々空から飛んできていると知ったらエンデヴァーはどんな顔をするだろうか。
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