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    MiyuRero_myk

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    全てが終わったハッピーエンド世界線の一部

    ##みゆりろ家

    付き合って暫く経っているかもしれない美優と夕日 はぁ、と溜め息を溢す。夕日にデートを誘われたのはいいが所謂“デート服”というのがない。そもそも、デートという物を分かっていない。明華がよく見せてくる恋愛漫画のような展開には期待もできない。

    「それで私たち呼んだんですか?」

     お世話になっているケーキ屋を貸し切って呼んだのは明華と璃奈だ。アイドルになった明華の為を思って貸し切ったが本人にも周りにも何故か冷たい目を食らってしまった。そういうところですよ、なんて言われて。

    「明華的にはどう思う?そのへん詳しいでしょう?」
    「え〜……私は別に恋愛ストーリーよく見てるだけだしぃ……?」
    「そんなこと言って最近どうなんです、桐生さんとは」
    「な、な、な、今はそういう話じゃないでしょぉ!」

     頬を赤らめる明華を見て、やはり恋愛というのはこういうことなのだろうと他人事に思ってしまう。私は夕日の想いに応えられているのだろうか。とてもじゃないが応えられている気がしない。

    「まあ、美優さんはそのままの方がいいと思いますけどね。夕日さんだって伊達に長年想っていたんですよ、大きな変化は求めていないでしょう。それに……」
    「……そ、それに?」

     明華が自分の事のように緊張する。楽しそうなのはいい事だがこれは私の問題というのを忘れないでほしい。勿体ぶる璃奈を視線で急かすと苦笑で返される。

    「私達から下手にアドバイスを受けるよりもそのままの方が美優さんとしても楽でしょう」
    「それはそうだけど……」
    「美優さん、らしくないですねぇ。今まではこちらが困るほど自己完結していたと言うに。恋だの愛だのはこんなにも人を変えてしまうのか。は〜あ、やれやれ。夕日さんはどうしてこんな人を長年好きでいられたんでしょうね。美優さんを困らせてしまうくらいなら自決を選ぶような彼を困らせて酷い目に合わせたいのならお勧めですが」
    「ちょっと!ししょ〜、流石に言い過ぎ……だと、思うし。笑えないよ、そういうの」

     真実を知ってしまったが故に起こるブラックジョークとソレへの反応を本気に受け止めてしまう二人。そうか、つい少し前まで私達はループをしてみんなを殺し、殺されていたんだ、とこれもまた他人事のように思ってしまう。元凶は自分だと言うのに。それほど生きるのが下手になってしまった証だろう。

    「ま、それはそうだ。俺もこういうのは似合わないと思っていたし。参考になったよ、ありがとう。貸し切ってしまったものは仕方ないし好きなのを食べとけ」
    「美優ちゃん、前と比べて元気になったのはいいけどウチもそう簡単に貸しきれないからねぇ……?黒秋くん達と明華ちゃんのおかげで忙しいんだから」

     優しく微笑みながら紅茶とケーキを持ってきたしょこらは文字通り忙しいのだろう。目の下にクマがある。

    「う。だぁって桐生…さん、がSNS映えするからって言うからぁ。私も止めたよ?一回だけ……」
    「おかげでバズってしょこらさんのお仕事が増えるなんて何という皮肉です?というか、止めた割には写真ノリノリの三人でしたがねぇ」
    「はぁ、嬉しい忙しさが暫く続きそうだわ。
    あぁ、そうだ、美優ちゃん。黒秋くん達の分も出してしまったから持ち帰ってくれない?あの子達が好きな味よ」
    「……ありがと、なのかな。夕日が甘味なのバレてからみんな甘やかし過ぎだと思うけど」
    (今まで夕日さんにはブラックコーヒーと言いながらミルクコーヒー入れていた方が何を仰っている……?)
    - - -

     デート日。特に今までと変わりはなく過ごす。それでも彼氏と彼女だから何かするべきか悩む間にも夕日から“彼氏”を出される。ちょっとしたことだし付き合う前からされていたことでも、彼女になってからは気づくようになる。いつの間にか車道側にいることも、荷物を持つようになったのも。

    「美優?」

     綺麗な蒼色が混ざった瞳が視界に映る。何回か話しかけてくれていたのに返事をしなかったのだろう。前まではそう簡単には崩さなかった表情を崩して、「眠い?」なんて聞く。

    「ううん。ちょっと考え事してただけ」
    「そっか。眠いなら無理するなよ?」
    「……スパダリ、ってやつ?」
    「え?」

     ふと、その単語が浮かんだ。明華が以前「なんか夕日サン、スパダリ気質だよねぇ。ファンの子みんな言ってるよ、完全復帰してからスパダリ感が出てるって」なんて言っていた。変化はあるもののその言葉にピンと来なかったが、自分に向ける視線や仕草がそれに感じたのだから仕方ないだろう。

    「美優、変なこと考えてない?また誰かに影響とかされたのか?」
    「あぁ、うん。多分大丈夫だから。顔、近い。羞恥とかないの……?」
    「バレた。人いないからキスするチャンスだと思ったのに」
    「……そーいうところなんだって」

     少し悪い顔をした夕日はごめんなんて言いながら遠掛かることはない。あぁ、こうなったらどちらが折れるかの勝負だ。
     確かに。格好だの気にする前にまずは私への愛情を隠すつもりがない彼のことで考えたほうが良さそうだ。
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