過去ログ19花が咲き乱れ、名称も定かではない植物の蔦が外壁に伝う。木葉は緑色に染まり、艶々と輝き生命力に溢れているというのに、この場所は生気が一切感じられない。まさしく夢と呼ぶのにふさわしいのだろう。どこか夢見心地で現実味がないこの場所に一体の人形が佇んでいた。
生命力のない硝子の瞳の色は薄く、どこを見据えているか分からないほどに儚げだった。
陶器で作られた球体人形が夢へと戻った狩人に向かい合う。灰色がかったブロンドが何処からか靡く風に揺れた。
狩人より幾分高い位置にあるその顔はあまりにも整い過ぎていた。人間味を削ぎ落としたように美しい顔を見つめていれば恭しく、人形が首を下げた。
「お帰りなさい。狩人様。」
ただの人形ではない。名前を持たない彼女の声は小鳥のように小さく可憐だった。人間のように嗜好を持つこともなく、ただ狩人の世話をするためだけに夢に用意された舞台装置に過ぎない彼女に狩人はどんな感情を抱いたというのだろうか。
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